ゲームを始めよう 4
いよいよ、木曜日。準備という準備はまだまだだけど、とりあえず、盟主戦に参加してみることにした。
学校から帰宅して、夕飯を食べた後、ゲームにインすると、領地画面のメニューのメッセージの欄が点滅していたので、覗いてみると、
《菅原道真領のトキノが3,10地点に拠点を築きました》
というメッセージが出ていた。
気づかなかったわけではないが、今日は最終決戦、ひとつ前の準備日だ。なるほど、こうやって、敵の領地の傍に、拠点を築いてそこを拠点に攻めていくということか。
そんな画面を見ていて、ふと思う。自分は、月曜日から始めたばかりの完全な初心者だ。いま、攻撃されれば、防衛どころか、完膚なきまでに叩きのめされるだろう。
(うーん、今のタイミングで攻められたら、完全に白旗なんだよね。攻められないように交渉してみようかな?)
私はふとそんなことを思い、トキノさんにメッセージしてみた。
すると、
『大丈夫。攻撃はしないよ。というか、ヘルプを読んでみて。同盟戦以外の盟主戦は初心者は初心者以外からは攻撃できないようになってるから。それで、盟主戦でのポイントが三万点を超えると初心者卒業になるので、そうならない限りは狙われる心配はほと
んどないよ。だから、今のあいだに内政や英雄の育成をがんばって!』
という暖かいメッセージをいただいた。
こうして翌日から開幕した盟主戦だったが、私は、まだ参加するには準備が足りないので、トキノさん言われたように、改めて、ヘルプを熟読すると、盟主戦は、必ずしも領主同士で戦わなければいけないというわけではなく『次元の歪み』という、いわゆるNPC戦もあり、そちらでもポイントが獲れるようになっていて、ともかくポイントが三万点を超えない限りは、盟主戦のたびにそこにトライできるので、しばらくは、そこで遊んでみることにする。それから、準備日も含めて三日間行われる盟主戦は準備日も含めた三日間のトータルで、100ポイント獲得すれば、盟主戦に参加したという扱いになり、参加賞である盟主経験値200とチケットクジ1枚がもらえ、あとは獲得ポイントに応じた報酬がもらえるようなっているようだ。
(でも、この100ポイントって、狩猟でも稼げるのかな?)
私はそんなことを思いながら、始めに狩猟に行かせたメンバーに、昨日、怪我をした周瑜や徳川家康を混ぜて同じ場所に狩猟に行かせた。三分後、盟主戦での報告を見てみると10ポイント獲得していた。これを十回繰り返せば、100ポイントに届くので、セコイやり方だがこれで英雄のレベルアップも兼ねて狩猟に繰り返し行かせることにしよう。
(そういえば、狩猟は陣形の相性は無関係って出てたよね。それなら、二部隊作って、そぞれで行動させれば、五回で済むなぁ)
と思いつき、部隊を二つ作り、それぞれで狩猟に行かせれば良いことに気づいた私は、ヘラたちの部隊にもうひとつ、近藤勇、那須与一、典韋を組ませて森へと送り込んだ。
それから三分後、それぞれの舞台の様子を見てみると、ヘラたちの部隊は、それぞれ英雄のレベルも上がり、拾得物も木材180、鉱石20獣の皮30、食料130と初めて狩猟を行った時とそれ程の差はなかったが、近藤勇をリーダーにして組んだ部隊は、木材50、鉱石5、獣の皮8、食料55と極端に少なかった上、英雄のレベルも上がっていない。
(狩猟は、陣形の相性は無関係とはなってたけど、やっぱり、関係ありそうだなぁ・・・。
でも、ポイントは獲れてるから、そっちは関係ないのかな?)
そんなことを思いながら、近藤勇の部隊を解き、リゾートホテルで休ませる。
今度は、ヘラと同じ陣形を持つエカテリーナ二世をリーダーにした部隊を組み今回は、人数も、ヘラの部隊と同じように、スブタイや松井康之、柴田勝家、玉麒麟盧俊義の五人で森へと送り込んだ。そして、三分後、帰還した後に、戦況報告を見てみれば、思ったとおり、木材210、鉱石30、獣の皮30、食料110とヘラたちの部隊と遜色のない量を持ち帰ってきてくれた上に、英雄たちのレベルも上がっていた。
(やっぱり関係あるじゃん)
そんなことを思いながら、ここまでの盟主戦での獲得ポイントを見てみると、90ポイントと参加扱いまでもう10ポイントだ。森ばかりで狩猟をしていても、同じ資材しか集まらないので、盟主館から、ひとマス離れた場所にある、鉱山へと出向いてみる。
今度のリーダーは、ゲームを始める時にもらった、現時点でただ一人のクラスS英雄、アマテラスをリーダーにして、先程の部隊を解いて休ませた近藤勇らと部隊を組み鉱山へと狩猟に出した。時間は、片道二分、往復で四分。少しだけ待ち長い。
(そういえば、ムカリと松井康之ってだれだろう・・・?)
待っている間に、もう一つプラウザを立ち上げ、先日、情報を得るために読んだこのゲームのまとめサイトにアクセスし、始めに手にした英雄で何人か、いつ頃の人なのかわからない人物がいたので英雄一覧という項目を読んで調べている。松井康之は戦国武将で細川藤孝に仕えた武将で、ムカリは、チンギスハンを遊牧民を束ねる王として推戴される前のテムジンと呼ばれていたの頃から仕えていたチンギスハンの股肱の家臣ということを知った。
手元に来た人物を改めて良く見ると、ほとんどが、戦場が似合いそうな人たちで、こういったゲームの初期に大切な内政要員が引けていないことが少し気になるが、ゲームを進めていくうちに手にすればいいだろう。
まずクラスEの藤原定家、近藤勇、加藤清正を見てみると、まず藤原定家は新古今和歌集の選者ということもあり、学識が高く内政要員にもってこいの人物なので、逆に戦闘には向かない。近藤勇や加藤清正は言わずと知れた武士なのでバリバリの戦闘向けなのだが、加藤清正は、築城の名手という史実があるからなのだろう。学識の数値が近藤勇よりも高く育て方によっては内政要員にもできそう。
そして、メデューサ。ギリシャ神話のペルセウスの物語に登場するモンスターで、目を合わせた者は石になってしまうというモンスターだ。だが、彼女はもともとは髪の毛がとても美しい女性だったそうで、それを見初めた神様と仲良くなり、子供を作ってしまい、それが別の神様の怒り触れて怪物に変えられてしまった不幸な女性なのである。始めから持っている固有スキルの【石化の瞳】が強力で、相手の英雄一人と率いる兵士たちを石にして、戦えなくするというもので、いまのところ、これを防御できるスキルは登場していなさそうなので、そういったものが登場するまではメインメンバーと考えていいだろう。
次に、クラスDの狩野永徳、猪八戒、ヘラ。狩野永徳は、言わずと知れた戦国時代の絵師集団の棟梁ということで、学識が高かった。猪八戒は、西遊記の三蔵法師の取教の旅で二番目に仲間になる豚の化け物で、天界にいた時は、天蓬元帥という水門の管理者でもあり、西遊記のお話の中でも、単独で活躍するシーンもあるので、やや戦闘向けの設定になっている。
最後にヘラ。ギリシャ神話の嫉妬の女神で、ゼウスの姉にして妻でもある女神で、神話の中でも、ゼウスの浮気相手を懲らしめるエピソードのためか、まるで戦闘狂のような武勇に極振りの英雄になっている。
クラスC英雄の、エカテリーナ二世と松井康之、ムカリ。エカテリーナ二世は、帝政時代のロシアのピョートル三世の皇后で夫との考え方の違いでクーデターを起こし、ロシアの領土をポーランドやウクライナまで拡げたこともあり、武勇と学識がほぼ同じ数値で、戦闘向けにも内政向けとどちらにでも育成できるようだ。松井康之については始めに話したように、細川藤孝の家老で、細川家が戦いに挑む時はほとんど従軍したようで、戦闘向けの数値になっている。ムカリも同じく、チンギスハンの股肱の家臣ということで戦闘向けの数値。
最後にクラスBの徳川家康。言わずと知れた徳川幕府初代将軍で、戦国時代を終わらせた人物。いずれのステータスも、かなり高く、いまの私の手元にある英雄では盟主英雄であるアマテラスを除き、トップスリーの一つだ。
(エカテリーナと清正は育てればどちらでもいけそう・・・)
(ヘラは完全に戦闘要員で考えていいかな。家康と組んで訓練で育てれば、対人戦で勝ち抜くのも夢じゃないかもしれない)
と画面を見ながら、この先のゲームの展開に胸をときめかせる。
パソコンの画面を見つめながら、
(領地の場所柄、あまり狙われないのはありがたいけど、防衛ポイントが獲れないのが少し、悔しい)
と考える。
ゲームのプラウザに戻すと、狩猟先の鉱山から、アマテラスたちが帰ってきた。
戦況報告を見ると、石材500を持ち帰ってきた。やはり、餅は餅屋と言おうか、鉱山には当たり前だが、多量の鉱石を持ち帰ってくれて、アマテラス自身のレベルもプラス5で、もうレベル6でもう少しで二ケタになる。
(これで、100ポイント。参加賞は確定・・・)
マップ画面から、盟主館の画面に切り替えると、いつの間にか、倉庫が満杯になっていた。これはマズイと思った私は、さっそく、始めに建てた倉庫のレベル上げを行った。それと同時に、倉庫は複数個建てることができるのを思い出したので、二つ目の倉庫を建てることにした。レベルの上がった倉庫と二つ目の倉庫。これでしばらくは、事足りるだろう。
(そういえば・・・)
こういう感じで、二日間の盟主戦を抜けたが菅原道真領との戦いは相手方の勝利で終わり、残念ながら、初めての盟主戦を勝利で飾ることはできなかった。
(まぁ、私も始めたばかりで、準備不足だし勝てなくても文句を言うのは筋違い)
そんなことを考えながら私は、盟主戦の参加賞やポイント順位でもらったゲーム内通貨のバーシルを利用して、二度目のバーシルクジを引いた。一回だと、100バーシル。十回連続だと、1,000バーシルで、登場する英雄のは十一名なので、一回分お得なようだ。
当然、十回連続を引いてみた。抽選機の演出の後、すると画面上に十一個の球が現れ、そのうち三個が金色、一個が緑色に光っている。残りの球は白い。
出てきた珠の色で、クラスがわかるようになっているので、多分、金や緑は高ランク確定だ。十一個中、四個が高ランクとはなかなか引きが良い。
登場した英雄は、那須与一、ジャンヌ・ダルク、柴田勝家、典韋、玉麒麟盧俊義、イェスイ、ジェベ、アフロディーテ、平賀源内、スブタイ、源義仲。
一瞬でも、引きが良いと思ったのだが、今回も武闘派ばかり引いてしまった。けれども、柴田勝家、典韋、平賀源内の三名が、クラスCでちょうど真ん中のランク。そして、緑珠で表示されたクラスAの英雄は、スブタイ。持っている陣形をチェックすると、九人の鉤行の陣。アマテラスより一人少ないが強めの陣形持ちが手に入ったので、ある程度、戦い抜けるかもしれない。
さっそく、内政官になりそうな平賀源内は武具製作所へ玉麒麟盧俊義を市場へと配置してみた。すると、
『平賀源内を任命したことによりボーナス8パーセントが付加されます』
『玉麒麟盧俊義を任命したことによりボーナス8パーセントが付加されます』
というメッセージが表示された。
(少しでも、いい方向に行けばそれでいい)
私はそんなこと穂考えながら、今日のゲームを終えた。




