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悪役令嬢の異世界グルメ革命~ハンバーガー? なにそれ美味しいの? とか言ってた人たちが、今では行列を作って土下座してきます~  作者: 緋村ルナ


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第9章:見えない敵の黒い罠

 海外進出も成功し、「バーガーパレス」の名声は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。国内の店舗数も50を超え、私は名実ともに「ハンバーガー女王」への階段を順調に駆け上がっていた。

 そんな、絶頂の最中に、悪夢は訪れた。

「速報です! 北部の都市、シルクウィンドの『バーガーパレス』で、食事をした客十数名が、激しい腹痛や嘔吐を訴え、病院に搬送されました!」

 王都の本社に飛び込んできたその一報に、私は血の気が引くのを感じた。

 食中毒――飲食店にとって、それは最も恐ろしい悪魔だ。

 すぐさま私とレオンは、衛生管理の専門チームを率いて現地へと飛んだ。店は営業停止となり、衛兵によって固く封鎖されていた。病院に駆けつけると、苦しむ人々の中には、幼い子供の姿もあった。

「申し訳、ございません……」

 私は、被害者の家族に、ただただ頭を下げることしかできなかった。

「あなたのハンバーガーを信じていたのに!」

「人殺し!」

 罵声が、私の胸に突き刺さる。涙が溢れそうになるのを、必死で堪えた。

「エリザベート、今は耐えるんだ。我々の仕事は、原因を究明し、二度とこんな悲劇を起こさないことだ」

 レオンの言葉に、私はハッと我に返った。そうだ、泣いている場合じゃない。

 私は全店舗の即時営業停止を決定した。会社の損失は計り知れないが、お客様の安全が最優先だ。そして、原因となったシルクウィンド店の厨房を、徹底的に調査した。

 しかし、奇妙なことに、衛生管理に大きな問題は見つからなかった。マニュアルは遵守され、食材も新鮮だった。なぜ、食中毒が起きたのか? 謎は深まるばかりだった。

 世間の風当たりは、日に日に強くなった。「バーガーパレスは危険な食べ物だ」という噂が国中に広まり、会社の評判は地に落ちた。フランチャイズのオーナーたちからも、不安と抗議の声が殺到した。

「このままでは、全てが終わってしまう……」

 本社で連日対策会議を続けるも、光明は見えない。疲労と心労で倒れそうになった私を、レオンが支えてくれた。

「諦めるな、エリザベート。必ず、何か見落としがあるはずだ」

 その時、調査チームの一人が、ある報告を持ってきた。

「奇妙な点があります。被害者の症状を詳しく調べたところ、通常の食中毒菌では見られない、特殊な毒素反応が検出されました。そして、この毒素は……人為的に、特定の食材に混入させない限り、発生し得ないものだということが判明しました」

「……なんですって?」

 つまり、これは事故ではなく、事件。誰かが意図的に、私たちの店に毒を盛ったということ……?

「一体、誰がそんなことを……」

 私の脳裏に、一つの可能性が浮かんだ。バーガーパレスの急成長を妬み、その成功を快く思っていない存在。

「まさか……」

 レオンも同じ結論に至ったようだ。彼はすぐさま衛兵隊の友人に連絡を取り、極秘裏に調査を開始した。

 数日後、レオンが掴んできた情報は、衝撃的なものだった。

 事件の数日前、シルクウィンド店の近くで、不審な男が目撃されていた。そして、その男は、私たちのライバル企業である、大手食品会社「ゴールデン・フード」の社員だということが判明したのだ。

 ゴールデン・フード社は、伝統的な保存食や高級缶詰を扱う老舗企業だ。彼らは、私たちのハンバーガーのような新しいファーストフードの台頭を、ビジネス上の脅威と見なしていた。

「許せない……!」

 私は怒りに体を震わせた。自分たちの利益のために、罪のない人々を苦しめるなんて。

 レオンが集めた証拠は、ゴールデン・フード社の関与を明確に示していた。私たちはすぐさま、全ての証拠を国王陛下に提出した。

 真相が明らかになると、世論は一変した。私たちに向けられていた非難は、全てゴールデン・フード社へと向けられた。会社の代表は逮捕され、バーガーパレスの潔白は証明された。

 私は記者会見を開き、被害者の方々への謝罪と補償、そして、今後の衛生管理体制をさらに強化することを、改めて国民に約束した。具体的には、全ての食材に生産者の情報を記録し、流通経路を追跡できる「トレーサビリティ・システム」の導入を宣言した。

 この事件で、私たちは大きな痛手を負った。しかし、同時に、食を提供する者としての責任の重さを、改めて骨身に染みて学んだ。

 雨降って地固まる。この危機を乗り越えたことで、バーガーパレスのブランドは、より強固な信頼の上に再建されることになった。見えない敵との戦いは終わったが、私たちの本当の戦いは、まだこれからだった。

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