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悪役令嬢の異世界グルメ革命~ハンバーガー? なにそれ美味しいの? とか言ってた人たちが、今では行列を作って土下座してきます~  作者: 緋村ルナ


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第3章:行列のできる露店

 レオン団長の支援は、驚くほど手厚かった。彼が用意してくれたのは、王都の中央広場に面した一等地の露店スペース。鉄板や調理器具はもちろん、初期の食材費まで、全て彼が「未来への投資だ」と言って用立ててくれたのだ。

「レオン様、ここまでしていただいて、何とお礼を言ったら……」

「礼なら、君のハンバーガーを毎日食べさせてくれるだけでいい。私はビジネスの素人だが、美味いものを見抜く嗅覚だけは誰にも負けん」

 そう言って爽やかに笑うレオンに、私は少しだけ胸が高鳴るのを感じた。

 開店初日。私は少し緊張しながらも、前世の記憶を頼りに手際よく準備を進めた。パティを焼き、パンズを温め、野菜をカットする。鉄板から立ち上る香ばしい匂いが、広場を行き交う人々の足を止めた。

『さあ、いらっしゃいませ! 新感覚の美食、ハンバーガーはいかがですか!』

 私の威勢のいい声に、人々は遠巻きに様子を窺うばかり。やはり、手で持って食べるスタイルへの抵抗は根強いようだ。

「誰も、買ってくれない……」

 弱気になりかけた、その時だった。

「私が最初の客だ。ハンバーガーを一つ頼む」

 鎧を脱ぎ、私服姿で現れたのはレオンだった。彼はわざと大きな声で注文すると、受け取ったハンバーガーを実に美味そうに頬張ってみせた。

「うむ、絶品だ! こんなに美味いものが、銅貨数枚で食べられるとは!」

 騎士団長のその一言は、絶大な宣伝効果を持っていた。

「あの美食家のハーウッド団長が絶賛してるぞ?」

「一体どんな味なんだ?」

 恐る恐るハンバーガーを買い求める客が一人、また一人と現れる。最初は戸惑っていた彼らも、一口食べると、レオンと同じように目を丸くした。

「う、うまい!」

「なんだこれ! 歩きながら食べられるなんて、便利じゃないか!」

 特に、忙しい商人や職人、そして食いしん坊の子供たちの間で、ハンバーガーは瞬く間に大人気となった。たった数日で、私の露店には昼時になると長い行列ができるようになったのだ。

 私は利益を再投資し、新しいメニュー開発にも着手した。パティを二枚にした「ダブルバーガー」、卵を乗せた「エッグバーガー」。客の要望に応える形でメニューを増やしていくと、常連客たちはさらに喜んでくれた。

「エリザベート! 俺、ダブルバーガー中毒になっちまったよ!」

「ありがとう、ジョンさん! また明日も来てくださいね!」

 客とのそんなやり取りが、何よりも嬉しかった。スラムで孤独だった日々が嘘のようだ。

 順調な経営に、私は新たな夢を抱き始めていた。

「レオン様。私、このハンバーガー店を、もっと大きくしたいんです。この国中の人が、いつでもどこでもハンバーガーを食べられるように……そう、『フランチャイズ化』という仕組みで、店を増やしていきたいんです!」

 ある日の夜、店じまいを手伝ってくれていたレオンに、私は熱っぽく語った。前世のビジネスモデルを説明すると、彼は興味深そうに聞いてくれた。

「フランチャイズ……面白い考えだ。君が本店となり、各地の店に経営のノウハウと食材を提供し、その対価を得る。合理的で、拡大のスピードも速いだろう。協力するぞ、エリザベート」

「本当ですか!?」

「ああ。君の夢は、私の夢でもある」

 レオンとがっちり握手を交わし、私たちは本格的なビジネスパートナーとなった。しかし、私たちの成功を快く思わない者たちもいた。

「見なさい、あれを。元クロフォード家の娘が、下賤な民に混じって、手づかみの餌のようなものを売っているわ」

「まあ、およしなさい。ああいうものを『食べ物』と呼ぶこと自体、私たちの舌が汚れてしまうわ」

 通りすがりの貴族の婦人たちが、扇で口元を隠しながら、あからさまな軽蔑の言葉を投げつけてくる。彼らにとって、私たちのハンバーガーは「庶民の食べ物」であり、嘲笑の対象でしかなかった。

 悔しさで唇を噛む私に、レオンが静かに言った。

「気にするな。時代を変える者は、いつだって最初は笑われるものだ」

 彼の言葉は心強かった。でも、この貴族たちの分厚い壁を打ち破らなければ、フランチャイズ化なんて夢のまた夢だ。どうすれば、彼らに認めさせることができるのだろうか。

 そんな悩みを抱える私の前に、最強の敵が姿を現すのは、もう少し先のことだった。

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