蝦夷と日本 11
あ、この話に転生者出してなかった・・・
たぶん、転生者はスターリンだよ。だって、上手い事北海道と東北を手に入れているんだもの。きっとそうに違いない。
なぜロシアの攻撃がうまくいかなかったのか?
ある意味当然だった。
ソ連崩壊後もロシアは蝦夷を便利な兵器廠としてこき使う事を考えていた。その為、資源輸出価格は値上げしたが兵器購入額の据え置きを言い渡し、さらにはウクライナ企業と天秤にかけて発注したものを必ずしも導入しなかったり支払いを滞らせたりしていた。ソ連時代であれば開発資金を渡していたのでそれでも何とかなったが、経済が停滞しているロシアがそれをやったらどうなるかは明白だった。
その様な態度のロシアに対し、蝦夷は「値段なりの性能」の兵器しか提案せず、納入もしなかった。そして、高圧的に求められた半導体製造設備も「値段なり」の製品しか渡していない。
さらに、21世紀を迎えて欧州諸国がロシアへと進出していく姿を、蝦夷は冷淡な目で見ていた。ソ連時代からの付き合いである蝦夷は、今のロシアで欧州企業が成功できるなどとは思っていなかったし、結果はその通りになっている。ロシアは高句麗にも近づいて経済協定を結ぶことで蝦夷を揺さぶろうともしたが、落ち目の高句麗に興味のなかった蝦夷は、それにすら反応を示していなかったほどだ。
そんな蝦夷の態度を見たロシアは、残念なことに蝦夷の技術力を勘違いした。渡された兵器や設備が蝦夷の限界だと認識し、過去の経緯から、それ以上のものがあるとは考えようとすらしなかった。もちろん、北樺太侵攻においても、「回収」でしかなかった事から余裕の態度で蝦夷軍が引き上げていくのを見送っている。もし、1両の戦車、1基のミサイルでも調査していたならば、本当の蝦夷を知ることが出来たのだろうが・・・・・・
そんな慢心と怠慢の上で策定された侵攻計画がうまくいくはずがない。
蝦夷側に監視されている事を承知で攻撃を開始してみると、ジャミングはほとんど無効化され、逆にロシア側のミサイルはジャミングやジャマ―による誘導妨害を受け、攻撃成功率は僅かに一割程度という惨憺たる結果に終わり、攻撃に飛び立った航空機のうち半数近くが撃墜されるという大損害を被ることになってしまった。
さらに樺太における地上戦はそれに輪をかけて悲惨な結果が待っていた。俗に三日間戦争などと称する事もある様に、開戦三日目には北樺太は蝦夷が奪還し、戦闘が終了してしまっている。
もとは日本統一の為に作られたT92は改良を重ね、ロシア軍のミサイルや戦車砲弾ごときに破壊されるほどヤワではなくなっていた。
ファミリー化された重歩兵戦闘車もミサイルや砲弾に耐え、防御陣地を尽く蹂躙する。まさに。蝦夷が日本侵攻の為に描いた作戦が見事に成就したと言えるだろう。相手が昔の友軍だという点を除いては。
千島攻撃も惨憺たるもので、上陸部隊は出撃を中止してしまった。それも仕方がない。航空攻撃の後に千島へと接近した艦隊は多機能すぎるHs-27による対艦攻撃で見るも無残な状態となり、多くが航行不能となり漂流、上陸部隊が出撃できる状態ではなくなっていたのだから。
その後も断続的に蝦夷に対する巡航ミサイルや弾道ミサイルによる攻撃が続くことになったが、水上部隊も航空部隊もマトモに運用できない状況では戦争として成立していない。ロシアは蝦夷にたった三日で完封され、メンツも何もかも丸つぶれにされてしまった。
二週間後に航空部隊を増強して攻撃を再開したのだが、今度は日本側を誤爆してしまった事から米国まで出てきてしまい、トランク政権の失態を挽回しようとする米政府の強硬姿勢に核恫喝を引っ込めるしかなくなってしまう。
それでもミサイル攻撃は続けていたが、報復として沿海州やカムチャツカの軍事基地がなすすべなくHs-27によって攻撃される失態を演じては、もはや手詰まりだった。それでもあきらめずにミサイル攻撃を続けるロシアに対し、弱味に漬け込んだ金正男政権が古地奪還と宣言して沿海州へと侵攻し、今ではロシア側も安全地帯確保を公言して広範囲に満州地域で軍事行動を行っている状況となっており、もはや極東大乱の一当事者と化している。
蚊帳の外に置かれた形の蝦夷ではあるが、ロシアが停戦や和平に応じず、隙を突いた攻撃への対応は今も続いている。その体制を維持するために今では日本空軍の飛行隊が丸々義勇軍の形で蝦夷で公然と活動するような状況と化している。
そして、この戦争を機にとうとう蝦夷において社会主義や共和制を維持しようという勢力が自然淘汰され、2023年4月をもって国号を蝦夷国へ変更し、天皇の下へ帰参し日本との連邦制へと移行する事が宣言されるに至った。10年に渡る激論はロシアという外圧によって解決がなされたのだから皮肉である。これでもはやロシアと蝦夷の関係は終焉を迎えたと言って良いだろう。
さて、そんな極東情勢に対して欧州がどう反応したかというと、二分されてしまっているのが現状だ。
日本はこの20年で半導体の最大の生産国となり、蝦夷侵攻に伴い蝦夷への供給を最優先にする措置によって世界的な供給遅延が発生し、英国やフランスなどは蝦夷侵攻を非難し、対ロ制裁を行う立場にある。それに呼応してポーランドやフィンランド、バルト三国も対ロ批判を繰り返しているが、ドイツはバルト海ガスパイプラインの受け入れ国であることもあって慎重姿勢を崩していない。さらにドイツは上海民主国を支援する立場にもある事から、その敵である高句麗国を攻撃してくれるロシアへの消極的支援すら行い、欧州で多くの反感を買っている。
さらにウクライナが欧州による対ロ制裁を批判し、ガス供給を削減、価格を吊り上げている事で更なる摩擦が起こり、ポーランドやハンガリーなどと関係悪化が著しい。そこに輪をかけてロシアは極東に留まらず、バルト三国やフィンランドを対象にした恫喝とも取れる発言を閣僚が行う事で緊張が高まっているが、これから欧州情勢がどう動くのかは予測する事が出来ない。
ドイツの対ロ姿勢に反発するように、ノルウェーやフィンランドは蝦夷製戦車の導入を発表し、ポーランドも追随する姿勢を示している。
欧州での台風の目となっているドイツの動き次第では、欧州においても武力衝突が起きても不思議ではなくなってきているが、日本から見ればそれどころではない。
いつまでたっても戦争が終らない半島、大陸情勢こそ早く収束することを願ってやまない。
まさかここまで長くなるとは思わなかった。初めは5話くらいで行き詰ってもしかしたら没かとも考えたが、どうにも話が膨らみ過ぎてコレである。
しかも現在進行形のままに終幕という終わらせ方である。
この世界、ウクライナは親ロシアとなり、蝦夷がウクライナの立場に置かれたが、とは言っても陸続きじゃないのでロシアが攻めてくる力を持ち得ていない。その上米国にとっても要地に近いとあって、速攻で大勢が決するというのも、まあ、仕方ないんじゃない?
大陸動乱?
知らん、そんなの。




