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第7話 出発

 翌朝、《コンコン》と扉を叩く音がした。

「ムーチー君、おひてる~?」

『ん?ルルさん、寝ぼけてる?』

 ムーチーはいつも通り日課での習慣で早起きしていたので身支度をしていた。


「はい!」

 返事をして扉を開けた。

『……。』

 ムーチーは思わず無言になった。

「おはよぉ、早起きだねぇ。」


 目を擦り、寝ぼけながらルルさんは答えた。

『いや、寝ぐせ全快!パジャマのままじゃん。』

 心の中でツッコミと笑うのを必死に堪えるため、視線を反らした。

『パジャマもはだけてるって言った方がいいのかな?』


 ムーチーの反応に寝ぼけて頭の回っていないルルは、特に気にせず。

「じゃ、いってらっしゃい。気を付けてね?」

『無防備でその笑顔は反則だ……。』

 ムーチーは頬を赤らめて、頷くことしかできなかった。


「食堂にギィシャさんがいると思う!じゃ、起こしたから。おやすみ~。」

 どうやら本当に起こしに来ただけみたいだ。

「ありがとうございます!」

 ルルの後ろ姿にお礼を言い、身支度をさっと済ませた。


 兎を抱きかかえ、食堂に向かった。

『あ、ほんとだ。ギィシャさん、もういる。』

 食堂に着くとギィシャの後ろ姿が見えた。

「ギィシャさん、おはようございます!」


 《ビクッ!》ギィシャは飛び跳ねた。

『挨拶をしただけなのにな……。』

 ギィシャは何事もなかったかのように振り返り右手を挙げた。口にはパンを咥えたままだった。


「こっちおいで!」

 食堂のおばちゃんが声を掛けてくれた。

 そのまま向かうと朝ご飯と兎用の野菜と水も用意してくれた。

「ルルちゃんから聞いてるよ、兎の坊や!」

「ありがとうございます。いただきます。」


『兎の坊や……。』

 ムーチーは言葉を心に押しとどめ、ご飯を受け取ってギィシャの前に座った。

 兎は下に下ろし、ご飯と水を置くと夢中で食べだした。

 顔を上げるとギィシャはパンを咥えたまま寝ていた。


「くすっ、いただきます。」

 ムーチーはさっとご飯を食べだした。

『ギィシャさんも朝が弱いんだな……。』

 気を使い、なるべく見ないようにしながら食べた。


 ◆◇

 

 食べ終わると、ギィシャを見ると眠りながらも口をモグモグと動かしていた。

『寝ぼけながらもちゃんと食べてる……。疲れているのかな?』

 ニヤつきながら兎を見下ろすと、あと少しで食べ終わりそうだ。

『先に食器片付けよう。』

 と立ち上がろうとした。《ゴンッ》!


 机に盛大に左手をぶつけた。

「いってぇー!」

 手を押さえながら顔を上げると、ギィシャは目を真ん丸にしていた。

『あ、起こしちゃった。』


「あの……。大丈夫?」

 ムーチーは耳まで真っ赤にしながら頷き、食器を片付けに行った。

 ギィシャは心配しながら下を見ると、ご飯はもうなくなっていた。

『あれ?いつの間に食べたんだろう?』


 ギィシャは寝ぼけながら食べたので記憶もなく、食器を片付けに行った。

 ムーチーは食器を置いて兎の分を取りに戻ろうと振り返るとギィシャが歩いてくるのを見て驚いた。

『食べ終わったんだ!』

 兎も食べ終わり、待機していた。

 迎えに行き抱きかかえ、食器を持ち片付けた。


「出る準備……と手、大丈夫?」

 不意打ちで聞いて来た。

「出る準備は出来てます。部屋へ取りに行くだけです。あと、手は良くぶつけるので気にしないで下さい……。」

 ギィシャは目を細めた。たぶんニヤッとしているのだろう。


「じゃあ部屋寄ってから行こうか。」

 荷物を取りに行き、ギルドの出口へ向かった。


 ◆◇◆◇


 朝早いこともあり、ギルドの受付は誰一人いなかった。

『昨日、ここでこけたこと誰にも突っ込まれなくてよかった……。』

 ムーチーは昨日の恥ずかしいことを思い出しながらギィシャの後ろを付いて行った。


 ギルドの外に出ると騎士団、11名が既に待機していた。

「団長、おはようございます。」

 朝一でもきっちり服装をしたイケメンが真っ先に挨拶した。


「おはよう、今日から数日捜索メンバーだから軽く紹介、ね?」

 ギィシャはムーチーを見た。 ギィシャは騎士団の前に出るとシャキッと目を覚ましていた。

「調査するシルク村出身のムーチーです。よろしくお願いします。」

 ギィシャは頷くと先程のイケメンはが説明した。

「副団長のジャッケだ、念話が使えるので驚かないでください。」


 『念話ってなんだ?』

 ムーチーは不思議そうに首を傾げた。

「――こんな感じです――。」

 急に頭の中に話しかけられびっくしりた。イケメンの副団長はニヤッと悪い顔をした。

「続けますね、。3チームに別れ、ムーチー君は団長とタイロ(探索系魔法)キリザス(風魔法)の4人組。」

 タイロとキリザスはムーチーの横に来た。

「私のチームはライマーリ(剣士)とエドック(支援魔法)」

 最後のチームはリーダーのボッシュ(双剣)とユウラ(死霊術師)、オーウェド(氷魔法)

 

「以上3チームで等間隔の距離を保ちつつ、シルク村を目指す。」

 ムーチーは頷いた。

「隊長、行きましょう。」


 ◆◇◆◇◆◇


 ムーチーのいるチームが真ん中の通りやすい道を進み、隊長同士が定期的に念話で話をしていた。

 途中小さな動物こそ入れど、モンスターには出くわさなかった。

 日もすっかり昇り、お昼になった。


「休憩しよう。」

 ギィシャの一言で休憩となった。

 キリザスがバックから昼食を出した。


 サンドイッチと乾燥肉だ。

 「隊長、モンスターもいないので一旦探知魔法解除します。」

 ギィシャは頷き、誰も話すことなく食べた……。


「今日中に村まで行けそうだな。」

 ギィシャがぼそりと呟いた。どうやら念話で言っているみたいだ。

 「”探知”」タイロが頷き探索魔法を再び唱えた。


 再び沈黙と共に進みだした。

 冒険者が魔物狩りをしていたのか、キョクタ村までの道中同様、異常事態なのか謎のまま村の近くまで進んだ。

「隊長、真っすぐ、村の手前にモンスター1匹います。」

 タイロの探知にモンスターが引っ掛かった。

 

「モンスター1匹村近くに反応あり、各自挟み撃ち、捕獲目的。」

 ギィシャは淡々と他のチームへ支持を出した。

「ムーチー君、私と一緒に隊長の後ろへ。」

 キリザスがムーチーを横へ呼び、安全を確保した。


「隊長、まもなくです。こちらには気づいていないです。」

 ギィシャは頷き、目の前の草むらへ身を隠しながら、モンスターを覗いた。

「ゴブリン……。」


 ギィシャはムーチーを見た。

「報告のあったゴブリンか確認してほしい。」

 ムーチーは恐る恐るギィシャの横に行き、草むらの間から覗き込んだ。


 ムーチーはゴブリンの姿を見て固まった。

「例のゴブリン……?」

 キリザスが聞くとムーチーは頷いた。

「ギィシャさん、あのゴブリンおかしいです。」


 夕陽に照らされたゴブリンを見たムーチーは目を疑った。

 騎士団の3人は固まったムーチーを見、答えを待った。

 

「髪の色が銀髪、後ろで結んでいるところが村長にそっくりなんです……。服も宴会の時のまま。」

 3人は予想外の展開に固まった。

「人がモンスターになる事なんて聞いたありますか?」


 ムーチーの質問で騎士団全員が固まった。

 副団長が念話を全員にしていたのだ……。

「そんなこと聞いたことない……。」

 ギィシャの返事にムーチーは打ちひしがれたのだった……。

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