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第6話 ルルさん

 ギルマス達三人の内緒話が済み、ムーチーの方を一斉に見た。

 『チャンスはここしか無い?』

「あの、この兎なんですけど……首に蝶ネクタイしているから誰かの従魔だと思って連れてきたのですが分かりますか?」

 ムーチーは恐る恐る聞いてみた。

「ルル、至急受付で調べてくれるか?」


 ギルマスがルルに確認し、ルルは頷いた後に医務室を後にした。

「少年、泊まる場所はあるか?」

 ギルマスは少し間が開いた後に訪ねて来た。

「……これから探します。急いできたので。」


「分かった、今日は職員の空き部屋を貸そう。その代わりと言ってはなんだが……、明日彼女の騎士団と共にシンク村の調査に同行してくれるか?」

「もちろんですっ!」

「少年、よろしく頼む。」

 無口なギィシャは少し戸惑った様子で答えた。


《バタンッ!》話が終わるのを待っていましたとばかりに、勢いよく扉が開いた。

「ギルマスー、うさちゃんの従魔登録はされてないです。」

 ムーチーは兎に目線を落とした。

『じゃあこの蝶ネクタイは何なんだ?』


「ただのペットですかね?」

 ルルが不思議そうに聞いた。

「少年、兎は懐いているみたいだから預かって貰えるか?ギルドでは捜索の張り紙を作る。」

 ギルマスはそう言うと腰から小さな杖を出すと、どこからともなく紙とペンが出てきた。

 インクの付いていないペンが、静まり返った医務室で《カリカリ》と、紙に何かを書く音だけが響いた。


「よし、これでいいだろう。ルル、少年に職員の開いている部屋へ案内してくれ!そして時間になったら晩御飯を渡して欲しい。」

「はい、これは複製して明日、掲示板といくつかの店に掲示して情報提供待ちですね!」

 と書き終わった紙を受け取り丸めた。


「じゃあ行こっか。」

 再び腕を引っ張られて今度は受付とは反対へ向かい、階段で1つ下の階へ連れて行かれた。

『紙に何を書いたんだろう?』

 目の前にいるルルが持っているため、ずっと書かれた内容が気になった。


 ◆◇

 

 部屋に着くと、鍵を使って開けた。

「はい、今日はこの部屋使ってもらっていいよ。」

「あの、ありがとうございます。ルルさん。」

 ルルは目をキョトンとさせた。


「何に対してのお礼かは分からないけど、困ったときはお互い様だよ?あと……君の名前は?」

「ムーチーです。」


「おけっ!ムーチー君だね!じゃあまた後でご飯持ってくるから。」

「あの、ギルマスの書いた紙って何が書いてあるんですか?」

 立ち去ろうとしたルルに我慢できず、その手に持っていた丸められた紙のことを聞いた。


「あぁ~、どうせ明日分かるしいっか。」

 と言い、丸めた紙を広げた。

「えっ?」

 ムーチーの反応を見てルルは爆笑した。


「はぁ、ごめん。笑いすぎた。反応が新鮮で!」

 それもそのはず、紙の上をペンがインクも付けずに走っていたのは僅か30秒足らず。

 なのに紙にはムーチーが抱えている兎がしっかりと毛並みが分かるほど、黄色の瞳まで色鮮やかで綺麗に再現されていたのだ!


「まぁ、ギルマスの特技でね。掲示板のモンスターの絵とかも描いてくれるんだ。」

『魔法はやっぱり凄い!!』

 と感心しつつ、「魔法にその様な使い方もあるんですね?」

 と聞いた。


「あの人は例外だよ。じゃあ、後ほど。」

 と言い残し、パタパタと走っていった。

 ムーチーはなんとなく見送り、部屋の中に入った。

 部屋の中は机、ベッド、トイレがあるだけの質素な部屋だった。


 兎を下に下ろし、ベッドへ横になった。

 そして意味もなく天井を見ていた。

『これ、勝手に外に出たら怒られるよね?ご飯までどうしよう……。』

 悩んだ結果、意味もなく筋トレを始めた。ご飯が来るまでずっと……。


 ◆◇◆◇


《コンコンッ》

「ご飯持ってきた!入るよー?」

「……、はぁーい。」

 

 ルルは少し間があったことに首を傾げながらも、返事があったので中に入った。

「……大丈夫?」

 ムーチーはご飯が来るまで2時間程度、ずっと筋トレで疲れ果てていた。

 その結果地面にうつ伏せで動けず、兎は背中でお座りをしていた。


「ふふっ。はいっ、兎さんの人参はこっちね?」

 ルルは笑いながら人参と葉っぱが入った器と水の入った器を部屋の角に置いた。

 兎は警戒しながらルルがご飯から離れるのを待ち、ムーチーのご飯を机に置いたタイミングで人参を食べだした。


「で、ムーチー君はなにしてるの?」

「外に出ていいか分からなかったので……、ずっと筋トレしてました。」

「ぷっ、うぅ~ん?分かんないや。ちょっと待っていてね~。」


 ルルは部屋を扉を開けたまま出ると、すぐ何かを引きずる音が聞こえた。

「よしっ、一緒に食べよ?」

 どうやら引きずる音は椅子の音でもう片方の手にはルルのご飯を持っていた。

『どうやら拒否権はなさそうだ……。』


「ムーチー君はまだ15歳じゃないよね?」

「来月で15歳です。教会へ職業選択に来るのを楽しみにしていたのに別の形でここに来るとは思ってなかったです。」

『まぁ、そうだよね。』

「ちょっと嫌なことだと思うけどライさんとリーツさんが村に来たところから一通り教えてもらっていいかな?」

 ルルは何となく察していたため、ご飯を一緒に食べて話し相手になりたかったのだ。


『ギルマスより私から聞く方がムーチー君も気が楽だよね?』

 ギルマスが聞こうとしていたので、ルルが話を聞く役を申し出ていたのだ。

 

 ◆◇◆◇◆◇


 昨日のリーツァ一家が来たところから全部話した。

 ルルはご飯を食べながらもしっかりメモを取っていた。

「そっか、詳しくありがとね?」

 ルルはメモを見ながら抜けが無いか見ていた。


「あっ、ギルマスから手紙預かってたんだ!食器片付けるから読んでてくれる?」

 ムーチーは手紙を受け取り頷いた。


 ――――

 ・明日の明朝、ルルが部屋まで迎えに行くので待機。

 ・騎士団と村周辺の探索、数日野営で周囲の確認を行う。

 ・シンク村に関しては調査が終了するまで他言無用。

 ・キョクタ村の村人も念のため調査対象。

 ・冒険者には2つの村方面の依頼を騎士団の訓練と称して明日から立ち入り禁止。

 ・探索中はギィシャと共に行動、詳細や違和感があれば逐一報告すること。


 ギルドマスター タッコル。

 ――――


「明日も鍛錬は出来なそうだ……。」

 ムーチーはしょぼんと落ち込んだ。

『にしてもこいつは呑気だな?飼い主のこと心配じゃないのか?』

 兎は一足先にベッドで寝ている。


《バタバタッ》

『あ、ルルさんだな……。』

《コンコン!》

「入るよー!」


『帰ってくるの遅かった?ギルマスに報告していたのかな?』

 ムーチーの予想通り、ギルマスとギィシャへメモを届けて要点だけ伝えていた。

 食器を返し、ギルマスの部屋までの往復を走ってきたのだ。その結果、『走ってきて息が上がっての、バレバレなんだよな。』

 ムーチーは少し口元が緩んだ。


「さて、明日も早いみたいだしお風呂の場所、案内するよ。」

 寝ている兎は放置し、部屋を後にした。

 ルルさんについて移動したが、風呂場も同じフロアだった。


「ここね?着替えは中に余っているの好きに使っていいよ。」

『僕の服はどうするんだろう?』

 ムーチーは自分の服を見下ろした。

「あっ、服は部屋の前に置いてくれたら洗っとくよ?」


「ありがとうございます!あの、探索まで外出ては駄目ですか?」

 ルルは少し困った顔をし、ムーチーは察した。

『ルルさん、その顔を見ればもう分かっちゃうよ。』

「ごめんね、このフロアから出ない様にギルマスに支持されて。まぁ、上に上がる階段の奥にある食堂とお風呂しかないけどね……。」


「じゃあまた明日ねっ!」

 ルルさんは手を振って自分の部屋へ帰っていった。

『お風呂、入るか……。』


 そしてその日はすぐ寝た。

『明日から野宿が続きかな。』

 

 

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