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第7話 ベオルグの森に住まう竜

 ベオルグの森には竜が住んでいます。


 竜は友である羊飼いを、待ち続けていました。

 けれど、待てど暮らせど、羊飼いは一向に姿を現しません。


 そうして数百年の月日が過ぎ、ある日、竜の前に一人の青年が現れます。

 彼はくたびれた鎧を身に纏い、今にも倒れてしまいそうな様子でした。


 竜は気まぐれに、その青年を助けることにしました。

 もちろん、タダではありません。

 竜は青年に、物語を語って聞かせるように言いました。

 青年はそれを了承し、数多の物語を竜に語って聞かせます。


 それは竜にとって、とても懐かしい話の数々でした。

 竜は満足し、その晩は青年を獣から守ってやることにしました。



 次の日、青年は自分の国に戻ると言いました。

 彼は皇子だったのです。

 彼は竜に言いました。


 この礼はいずれ必ず返そう。


 竜はこれを鼻で笑いました。

 そう言って、本当に返しに来た人間を、竜は一人も見たことがありません。

 いえ、一人はいたかもしれませんが、あの青年が返しにくるとは思えませんでした。



 それから何度か日が昇ったある日。

 森に招かれざる客が現れます。


 魔のものたちが、竜退治にやって来たのです。

 竜は必死に戦いました。けれど、羊飼いのいない竜はただの獣です。

 鉄の剣に貫かれ、それでも竜は大切な森を守ろうと戦いました。


 しかし、魔のものたちには叶いません。

 竜は羊飼いと会えなくなることを悲しみ、最期の時を待ちました。



 その時でした。

 一人の騎士が竜の前に現れます。


 彼は言いました。


 竜よ。我が友よ、借りを返しにきたぞ。


 竜は待ち望んでいました。

 その言葉を。

 友に再び会える、その時を。



 我が名はルカ=ローウェン。友のために剣を振るうもの。




 ***




「ルカおじい様。自分の名前を物語にするのはどうかと思います」

「ははは。よいではないか。物語は語られるだけの所以があるのだ」

「流石に竜を助けただなんて……。まさか、本当に?」

「さあて、どうだかな」


 彼は空を見上げる。

 その澄み渡る青い空には、ぽつんと小さな黒い影が一つ。

 それはまるで物語の中の竜のような――。


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