表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/146

134 待望の稲刈り 1

またまた大変お待たせいたしましたーーーーーっ!<(_ _)>

 俺がオズに別れを告げた後、ズラトロクとシンクさんはユーラに挨拶をすると、あっさりとオズを連れて聖地へ続く結界へと消えて行った。


 オズはシンクさんに手を引かれ、ズラトロクと並んで歩いて行ったぞ。アーシュは二人を見送ると、さっさと飛んで行ってしまったがな!


 因みにオズとの別れにユーラは、オズの足をポンッと叩き、上を見上げてオズの顔を見つめ、一つ頷いていた。キキリもその反対側の足をポンッと同じように叩いて激励していたぞ。

 その姿を見て、思わず耐えていた涙腺が決壊しそうになったが、なんとかしっかりとオズの背を見送ることが出来た。


 朝一番で来ていたシュウ、それに早めに来ていた子供たちも俺の後ろに並んで見送っていたぞ。

 オズの背が見えなくなった時も、もっとやってあげられたことはなかったか、とずるずると考えてしまっていたが、とりあえずその後は気持ちを切り替えて子供たちと日課へと向かった。


 ただ……。子供たちが全員帰り、久しぶりにユーラとアインス達三人とキキリの六人で揃って台所で夕食を食べてから部屋へ戻ると、ロフト部屋へもう誰も行く必要がないのか、とロフト部屋への違和感がぬぐえず、少ししんみりとした気持ちになってしまった。


 翌朝はあまりしっかりと眠れた気はしなかったが、それでもいつものように早朝に起きると、まず広場の隅の石碑に行って祈りを捧げたのだった。




 それから数日、子供たちも少し元気がなく、少ししんみりとした雰囲気が続いていたが、とうとう俺の待ちかねた時がやって来た。

 そう、ククルカンの守護地の沼地で見守って育てていた、この世界で見つけた稲の稲刈りだ!


 最近はオズのことでバタバタしていたが、ククルカンの卵の元へはしっかりと毎日通っていた。さすがに毎日沼地の様子を見に行きはしなかったが、三日とおかずに様子を見に通っていた。


 アインス達三人には、またか!と毎回ブツブツ言われたけどな。それでもなんといっても米だからな!米が大事なのは日本人だから仕方ないよな!


 本当は俺の緑の魔法も掛けていたので、もう少し早い時期でも収穫することは可能だったのだが、オズの荷物の準備もあったので、途中からあえて魔法を掛けずにスプライト達に生育を全て任せて収穫の時期を調整して貰ったのだ。


 早く収穫してオズに持たせるか迷ったんだけどな。でも、オズが人の集落に合流した時、全く知らない穀物をもっているのはどうかと思いなおしたのだ。


 なのでオズに持たせたマジックバッグの中には、子供たちと一緒に作った保存食とスープの鍋以外は、あえて森でも採れる芋と野草、それに畑で採れた日持ちのする根菜だけ入れてある。見つけて集落で他の人達と畑を作ってくれたら……と願いをこめて少しだけ野菜の種も入れた。


 ああ、ダメだダメ。オズのことはもう、やれることはやったんだから。後は、子供たちと俺の冬の間の食糧とかを優先して考えないとな!……ある程度様子を見て、どうしようもなかったらシンクさんがオズを人の集落へ誘導することになっているし、だから、大丈夫だ!




「今日はククルカンの処で稲刈りをしてくるから、ちょっと戻りが遅くなるけど心配しないで待っていてくれな!じゃあ、ドライ、行くぞ!」


 泉まで子供たちと一緒に歩き、いつものように今日の当番のドライと一緒に別れてククルカンの結界の方へ張り切って歩いて行こうとすると、ユーラがキキリと一緒に追って来た。


「イツキ、いく!」

『きょう、一緒、行く、ギャウ』

「お、おお。今日はユーラとキキリが一緒に行ってくれるのか?でもユーラは入れるかもしれないけど、キキリは恐らく入れないと思うが……」


 オズが回復してからは日課の時はキキリも一緒に世界樹までは来ていたが、春になってからは子ウサギ三兄弟が来たこともあり、キキリはユーラと一緒に子供たちと泉でククルカンの処へ行っている間は待って貰っていた。


 キキリはまだククルカンに不信感があるのか、ちょっとしぶっていたけどな。でも、泉まではアインス達当番の誰かにしっかりと送って貰うと約束して、最近では一緒には行っていなかったのだ。


『そうですね。世界樹の守り人であるユーラなら、恐らくククルカンの結界も入れるでしょう。キキリも無理をすれば入れるかもしれませんが……』


 キキリは世界の守り人であるドラゴンの子供なので、シュウの時に親御さんを呼びに行って貰ったように、聖地の結界は無理をすれば通れる。

 けれど、ククルカンに関しては、卵のこともあって入れるのは俺とアインス達三人だけとアーシュがククルカンと取り決めをしていたのだ。


 もう卵はかなり大きくなり、常に動いていて元気なので、俺的にはそろそろ生まれれるのではないか?と思っている。幻獣の卵のことなので、実際のところは俺には分かりようもないし、相変わらず未だに俺が行くとシクシク泣いているククルカンに話し掛けるのは面倒なのでしていないのだ。


 半年は経っているのに、毎日泣いてるってどれだけーーー!だよな……。最近ではツヴァイの当番の時、『いい加減にしろ!鬱陶しい!!』と蹴りに行こうとするから、それを止めるのが大変なんだよなぁ。アーシュに言ったら蹴らせとけ、とかいうしさ!それでもククルカンはあれでも一応幻獣だからな!


『ユーラ、一緒なら、行ける、思うギャウ』

「んー、ユーラと一緒なら結界を通れるかも、ってことか、キキリ。まあ、いいか。じゃあ一緒に行こう。どうせククルカンは何したって泣いているんだし。あっ、キキリ。うざいからって足蹴にしないようにな。多分、もっと面倒くさくなる気しかしないからな!」


 とりあえず稲刈りだー!と俺が張り切ったからか、それで恐らく興味を持ったらしいユーラとキキリを連れてククルカンの守護地へ繋がる結界の処へ来て、いつものようにドライと一緒に潜り抜けると目の前にはククルカンの卵のある巣だ。

 いつものように巣の向こう側にククルカンがシクシク泣いている姿をちらっと確認し、後ろを振り返る。


『ふむ。ユーラと一緒ならキキリもすんなり通れるのですか。面白いですね』


 するとそこには、ユーラの言葉通りに結界をするりとすり抜けたユーラとキキリの姿があったのだった。

 その姿を見て、シクシク泣いていたククルカンがビクッと飛び上がり、巣の中の卵が大きく揺れた。


「あ、ククルカン。今日は稲刈りをする予定なんだ。その見学をユーラがしたいってさ。ごめんな、驚かせて。ユーラは世界樹の守り人で、キキリは世界の守り人のドラゴンの子供なんだ。何も心配いらないからなー」


 わたわたしているククルカンを横目に、巣の中に最初の時よりも大きくなり、活発に動いている卵をそっと撫でて声を掛ける。

 ゆっくりと落ち着かせるように撫でていると、俺の隣からユーラがそっと手を伸ばしてククルカンの卵に触れた。


 その瞬間、柔らかな虹色の光が卵を包んで瞬いたように見えたが、すぐに虹色の光は消え、ゆるゆると動く卵だけが残されていた。


「……ユーラ、もしかして生まれるのか?」

「まだ。も、もうすぐ」

「そっか、もう少しで生まれるのか」

『!!!!!!!あっ、ありがとう、ありがとうございますぅうううううぅうう………っ!?』


 ユーラの足元にぬかずかんばかりに滂沱の涙を流すククルカンがうねうねとにじり寄って来たが、俺達はその姿を目に収めることはなく、ただゆらゆらと揺れる卵に「待っているから元気で生まれて来いよ」と声を掛け、そのままウキウキと稲刈りに向かったのだった。


 ……帰りもうざそうだな、とか思ってるけど、声には出してないぞ!さあ、いざ、稲刈りだーーーーっ!!






暑さにやられつつ、無事に2巻の作業が全て終了いたしました!

なので今週から更新頑張ります!目標は週3回ですが……暑さしだい、かな。

次は遅くも水曜投稿頑張ります!


また!今月30日にGCノベルズさんより2巻が発売となります!

今回もox先生が素晴らしくかわいらしいイラストをつけていただきました!

全編にわたり加筆改稿、書下ろし部分もありますので、よろしかったら予約などしていただけると喜び舞い踊ります!!


あと「このライトノベルがすごい!2026」に1巻がエントリーされております。

良かったらそちらにも清き一票を!お願いします!!( ´艸`)

どうぞよろしくお願いいたします<(_ _)>


挿絵(By みてみん)  



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ