127 保存食を作ろう! 3
書き終わった(珍しく)ので一日早いですが更新です!
お昼の準備をしているとロトム達がたくさんの採取物と共に戻り、たくさんお礼を伝えて昼食にして、食べ終わると子供たちを木陰で昼寝へと送り出した。
作業をしたい!とごねられるかと思ったが、朝からはりきっていて疲れたのか、昼食を食べながら小さな子は寝落ちしそうになっており、今は全員がぐっすり眠っている。
「オズ、今の間に散歩しよう!子供たちが皆、張り切って保存食を作ってくれているからな。ここでは珍しい食べ物だろうから、出来上がったら食べ方をしっかり教えるよ」
オズに昼食を出し、食べ終えたところで手を引いて部屋から出て井戸の回りの午前中の子供たちの作業を見せた。その後はキキリと一緒に子供たちが昼寝していない方の森の木陰へと、散歩をしながら向かう。
今日はユーラも作業を手伝っていたからか、昼寝しているので三人で散歩だ。
「ほら、オズ。この野草だ、良く見てくれよ。この野草は林や森の入り口にも生えているから、覚えておくんだぞ。秋の終わりから春の新芽が伸びるまでは食べられないが、それ以外の時期はいつでも採って食べられるからな。食べる時は、色が薄い若い葉を摘めば、また翌年も食べられるから」
森に入ると、少しずつオルトロスに教わっていた人里でも生えている食べられる野草を一つ一つ手に取り、オズの手にのせて説明して行く。
これは最近では毎日のことで、同じ野草を繰り返し説明することで、戻された時に無意識化で刷り込まれて覚えていることを期待しているのだ。
アーシュやオルトロスにも聞いてみたけど、無意識下で覚えている可能性は否定出来ないって言われたもんな。魔法も俺に教えられるのは教えているし、こうして食べられる野草の知識があれば、なんとか生き延びる可能性は高まるだろうしな。
ただ心配なのは、守護地の近辺の森から離れてしまえば、草原や林があっても精霊がいなくなって力をなくしており、どこにでも生える野草でさえ生えていない可能性が高いということだ。
そこら辺は今度シンクさんにも確認してみようかな……。とりあえず三か月くらいは節約すれば食べられる分くらいは子供たちも協力してくれているし、保存食を持たせられるだろうしな。
盗られる危険性はあるが、容量は小さくても俺が今使っているような時間遅延のマジックバッグが手に入ればよかったのだが、子供たちの親御さん達に見かけたら、と声を掛けてみたが、集まったのはあれから二つだけで、どちらも容量は小さな小屋くらいはあったが時間遅延ではなかった。
まあ、守護地は基本的に樹海のような深い森とか、森の奥の高山地帯とか自然が豊かな場所に限られているので、そこに立ち入れる人もほぼいない、というのが実際のところなのだろう。
今使っているマジックバッグだって、今の世界の状況を考えれば何百年も経っている可能性があるしな……。表のカバンの皮が痛んで溶けているくらいで、良く残っていたよなぁ。アーシュに感謝だな。
このマジックバッグが最初の頃にアーシュが思い出して持って来てくれなかったら、と思うとゾッとしてしまう。それくらい、あるのとないのとでは暮らしやすさが段違いなのだ。
「……まあない物は仕方ないしな。あ、オズ、この蔦はもう少し寒くなると手の平くらいの大きさの実をつけるぞ。この蔦になる実はそのまま置いておいても日持ちしたから、森に入ったら探してみるといいよ」
子供たちが昼寝から起き出すと、保存食作りの再開だ。
午後からはアーシュが追加で持って来てくれた岩塩を砕いて水に溶かし、盥にソミュール液を作り、そこに俺が午前中に処理した魚を浸けてもらうつもりだ。
後は……。肉は俺が切らないと均一にならないしな。均一じゃないとしょっぱい場所と味が出来るし、腐りやすいかもしれないし。なら干し果実の方を頼んでみるか?
ジャーキーや燻製の作り方は、昨今で流行りだったキャンプ番組などを流し見していた時になんとなく覚えていたものだ。
俺は基本的に家で本を読んだりするのが好きなインドア派だったが、本で読んだりただつけていたテレビの番組の知識が、意外と覚えていたりもしている。
「じゃあ午後も作業を別れてやるぞー。まず、この岩塩を砕いて欲しいから、セランとフェイ、砕けるところまで砕いてくれるか?そしてラジ達三人は、セランとフェイが砕いた岩塩をもっと細かく砕いてくれ。砕けたらクー・シーの子達でこの笊で篩にかけてゴミを取ったら、このすり鉢でもっと細かく砕いて欲しいんだ」
子供たちのキラキラな視線を受けながら、皆の前で予めツヴァイに割って貰ってある岩塩と笊を取り出し、布の上で何度か篩にかけてゴミを取り除く。そしてすり鉢を取り出して、ズリズリと擦って粉にして見せた。
「ロトムとクオン、それにケット・シーの大きい子達は、お昼前に皆が洗ってくれていた果物と野菜を切って、干して行く作業だ。風で切るのは難しいから、気を付けて作業してくれな?そして切り終わった果物は、この板の上の布の上に並べておいて欲しい」
洗って貰った果物と野菜を一つずつ取り、俺は風で切るのは無理だからまな板の上でナイフで見本として適切な厚さに切って行く。切った果物は設置しておいた板の上に並べて干した。
「野菜は茹でてから干すから、切るだけお願いな。終わったら次の作業もあるからなー!でも、怪我しないように、やる時は丁寧にゆっくりな。そして最後にライとシュウ、それにケット・シーの木登りが得意な子には、広場の周りの木に採って来て貰った蔦を結んで、干場を設置して欲しいんだ。高さは一番下の枝が同じ高さの木の間に蔦を張って結ぶんだ。片方の木に蔦を結んだら、もう片方の蔦をライが運んでくれな」
ケット・シーの二本足で歩き出した大きな子は手先も器用で、蔦を木に結ぶくらいなら出来るのだ。シュウは木登りが得意なので、ケット・シーの子の助けをしてくれる……だろう。うん。
それぞれ頼んだ子供たちが、自分が今からやる作業を理解したことを確認し、やる気に満ちた顔をしている子供たちを見回し、おもむろに頷いた。
「よし!保存食作業、午後の部、開始だ。頑張るぞーーー!」
『『『『『『『『『『おーーーーーーー!(みぎゃ!)(ミャウッ!)(ワンッ!)』』』』』』』』』
おーー!とキラキラした眼差しで前脚を上げる子供たちの姿は、頼もしく、そしてとてもかわいかったのだった。




