表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

お茶会は小休止じゃないんですか?

18

 アーシアが俺の奴隷となってから3日が過ぎた。

 もう3日と言うべきなのか、まだ3日と言うべきなのかわからないが、アーシアがいることで俺の生活に大きな変化が――ない。大きな変化どころか、小さな変化すらない。

 何故かと言えば、アーシアを奴隷にすることは認められたものの、さすがに何の教育もしていない奴隷を俺の側に置くことはアンジェリカとマイザーの2人が揃って却下したからだ。

 最低限の教育を行うということで、アーシアはこの3日間アンジェリカの腹心であるエミリアに預けられているので、俺の生活に変化があるわけがない。

 ようやく最低限の教育ってやつが終わる今日、アーシアが俺の下に来るはずなんだが、今度は俺の方がアーシアの相手をしている余裕がなくなってしまったのがなんとも言えない。

 いや、紙ってすごいね。

 パソコンが本当に懐かしく思える。

 どうしたのかって?

 マイザーに指示した税関系の書類が揃ったって言うから見に来たんだよ。

 5年分は長すぎたかもしれない。

 だって、部屋4つ書類の山で埋まってるんだよ?

 これ、どこに保存してたの?

 この3日でいろいろ調整させて、定期で開かれるお茶会とマイザーの内政報告以外――というか、習い事関係は1週間なしにしてあるけど、1週間で見終わるのか? これ……


「へーか?」

「ああ、アーシア。来たのか」


 書類の山を前に呆然としている俺に子どもサイズのメイド服に身を包んだアーシアが声をかけてきた。

 メイドの仕事をさせるわけでもないのになんでメイド服着せてるんだ?

 まぁいい。


「勉強は終わったのか?」

「うん。へーかの側にいてもいいって」

「そうか。だが、悪いな。俺の方はしばらくお前の相手をする余裕がなさそうだ」

「どうしたの?」

「これを読まなくちゃいけないんだ」

「これ?」


 書類の山を見てアーシアは首をひねる。

 元は寒村出身のアーシアは文字が読めないので、手伝わせることもできない。


「……いっぱい」

「そうだな。いっぱいある。だから……そうだな、ちょっとだけお手伝いしてくれるか?」

「お手伝い?」

「ああ」


 覚えて良かった速読術!

 読んだ書類をアーシアに頼んで分類分けしていく。

 なんで自分からこんな面倒きわまりない仕事見つけちゃったかなぁ本当に!




「ルード様、大丈夫ですの?」


 書類を読み始めてから4日、お茶会の日なので不正の確認は一旦手を止め、初めてのお茶会仲間兼お友達であるベスやビービー、スタンたちとのお茶会だ。

 そのお茶会の席でビービーが心配そうな顔でそんな問いかけをしてくる。


「ああ……なんとかな……」


 たぶん今の俺は死んだような目をしているだろう。

 いくら速読できるったって、量が多すぎるんだよ……

 寝る間も惜しんで丸3日かけた成果は、全体の4分の1を終わらせることに成功する程度だ。

 うん。

 ようやく一部屋終わりました。

 どう考えてもこのペースだと1週間じゃ無理ってね。


「そんなに疲れることをしてらっしゃるんですか?」

「ああ……まぁな」


 こちらも心配そうな顔をするベスになんと言ったものかと考えているところで、スタンがとんでもない爆弾を放り込んで来やがった。


「あ、もしかして最近奴隷にした獣人の女の子のせいですか? 奴隷の女を買ったら疲れるもんだって父上が言ってました」

「獣人の!?」

「女の子!?」

「でも、なんで疲れるんですか?」


 あ の き ん に く だ る ま がぁぁぁぁっ!

 息子になんちゅう下ネタ仕込んでんだあのアホは!

 てか、ベスとビービーはマセ過ぎじゃないのか? まだ君ら6才だぞ?

 あ、いや、下ネタの意味は分かってないのか? ただ、俺の側に女がいることが衝撃だっただけだな……うん。疲れすぎて思考力落ちてる。


「それは俺も知らん。それに、俺が疲れてる原因は全く違う」

「ルード様、奴隷を買われたのですか?」

「なぜ女の子なんですの!?」

「奴隷は買ったというか、没収しただけだな。女だったのは偶然だ……奴隷に関する法律が新しくなったのは知っているか?」

「ええ。当家の領地にも奴隷を集めた村はありますので」

「私の所もそうですわね」

「僕の家にはないので、わからないです」


 まぁ、スタンの父親は法衣だからね。奴隷村持ってたら逆に怖いわ。

 奴隷村とはこの世界の領地持ち貴族にとってはけっこう普通の政策だ。

 経済的な理由で奴隷になった者や軽犯罪で奴隷になった者を集めて農耕を営ませる。

 奴隷制が改正されるまで奴隷は国民ではなかったので、奴隷村での生産量は領地の生産量とは見なされず、領主の自己生産分と見なされたので通常の村とは違った税率が適用されていた。

 それこそ、生かさず殺さずで最低限の食料だけ残して残りは全て没収するのが一般的だったのだ。

 しかし、奴隷制が改正されたことで、奴隷であろうとも根本は国民であるという方針から、奴隷村でも奴隷に対する義務の他に奴隷村に課すことが出来る最大税率が設定されることとなった。

 また、いつかは奴隷村の奴隷も解放されるので、最終的には普通の村と変わらなくなってしまう。

 むしろ、衣食住の保証や健康管理を奴隷の所有者である貴族自身に義務づけている分だけ普通の村より不良債権側だろう。


「そうか……マカルファ公爵やカロン公爵には恨まれているだろうな」


 優良株だったものが一気に不良債権になったのだから、恨まれて当然だろう。

 ソーシャルネットゲームで運営が突然、強すぎるキャラクターを修正したら一気に雑魚キャラになったようなものだ。

 大金使って奴隷キャラクターを入手した貴族プレイヤーは阿鼻叫喚だろうな。

 俺が貴族プレイヤーならうんえいに苦情メールの1つも送るだろう。


「いえ、父はむしろルード様を賞賛しておりました」

「そうですわね。私の父も、奴隷と言えど我が民であるというお言葉に、さすがは陛下と感動に打ち震えておりましたわ」

「そう言ってもらえると嬉しいものだな」


 まぁ、おべっかなんでしょうがね。


「それで、ルード様?」

「奴隷の女の子のことをもっと詳しく」

「だから、新たな法で奴隷をどう扱うかの見本として俺自らが奴隷を持つことにしただけだ。女であることに深い理由はない」

「そうですか……では」

「私たちにその見本をお見せくださいませ」


 君ら仲いいね。

 さっきからスタンが空気みたいになってるよ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ