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いざ、聖別の儀式

09

 初めてのお茶会が成功したからか、翌日からは毎日お茶会が開催されるようになった。

 毎日のように、じゃなくて毎日だ。

 ちなみに、そのお相手はベスたち3人ではない。

 王族という立場上、俺には50家の領地持ち貴族と20家ある高位の法衣貴族の子どもとお茶会をする慣例と言うか義務みたいなものがある。

 そのため、これまたこの国の慣例に則り、計70家の各家で5才から10才までの子どもから一番年若い人間を相手に習い事をつぶしてまで連日お茶会を開くことになったわけだ。

 当然のことだが、該当する年齢の子どもがいない家もある。まぁ、そう言った家は当主を相手に後日謁見と言う形で対応するので問題はない。

 とは言え、該当する年齢の子どもは40人もいたおかげで、1日に2、3人を相手にして14日間毎日お茶会だ。お腹がたぷたぷしそうです。

 とまぁ、冗談は置いといて、有力貴族たちと連日お茶会を行ったわけだが、何も毎回毎回ベスやビービーたちのように素を出して対応したわけじゃない。

 高位貴族と呼ばれる伯爵家以上の家格を持つ貴族の中でも、とりわけ力が強い貴族やゲームで登場した貴族家は後々のことを考えて、個人的なお友達・・・になれるよう接した。

 当然、相手によって対応を変えているなんてことは相手に知られれば、いらぬ疑いを持たせることにつながるが、その心配はあまりしていない。

 今回俺が相手をしたような貴族連中は、自分の子どもが国王の素を見せられるほど親しくなったと知れば、それを利用できないような馬鹿ではない。

 万が一、素の対応をしなかった相手に対応が違うことがバレたとしても、お宅の子どもが緊張してるみたいだったし、混乱させるような真似を避けたのだと言い訳できる。

 そんなこんなの実りあるお茶会を一通り終えた俺に待ち受ける新たなお仕事は、この世界における5才児の必修科目――聖別の儀式を受けることだった。

 これはゲームでも名前が出ていた行事で、この世界では非常に重要な意味がある。

 聖別とは、5才を迎えた子どもがゲーム的なステータスを見る儀式だ。

 普通のロールプレイングゲームだったフォア戦Ⅳでは、教会以外でステータスを確認できないという虐め仕様が結構な顰蹙ひんしゅくを受けていたんだが、現実となった今では、ステータスなんてものを見るためには何かしらの装置を必要とするだろうとちょっと納得できた。

 まぁ、ゲーム的に見れば面倒くさい仕様だよマジで。


「陛下、準備はよろしいでしょうか?」

「構わんよ神官殿」


 とまぁ……俺はそういった理由で、教会に行く――と思ったら、それはあくまでも通常は、という話であって王様である俺の場合は違う。

 どう違うかと言えば、なんとまぁ神官を城に呼びつけて行われるのだ。

 城には王族が聖別の儀式を行う専用の部屋が用意されており、やろうと思えばいつでもステータスを見ることが出来るらしい。

 そんなわけで、王都で一番偉い神官を呼びつけて俺の聖別が行われる。

 ちなみに一番偉い神官とは言うが、実を言うところ神官には基本的に序列は存在しない。

 しかし、組織として序列は存在しないと言われても、国や街を管理するためには組織の代表がどうしても必要になってしまう。

 そのため、年長者やリーダーシップを取れる人間が便宜上のトップとして選ばれるのだ。

 と言うのも、この世界の神官――と言うか、教会という組織は、モノホンの神様がいるおかげで、非常に厳格な組織なのだ。

 神様は何人もおり、人によって信仰する神は違うが、その中でも癒やしの神を信仰する人間が神官と呼ばれる人間だ。

 神官というのは、癒やしの神を信仰し人々を癒やすことを仕事にしている人間を指す職業の名称であり、癒やしの神以外を信仰する人間は神官にはなれない。

 では、誰がどこでどうやって他の神を信仰し、教えを広めるのか。

 答えは、信仰したい人が好きなように信仰し、教えを広める人は特に決まっていない。だ。場所は、癒やしの神を含めて教会の祭壇が共用スペースになっている。

 そもそも、この世界において教会は神を信仰する場所ではあるが、教えを広めるための場所ではない。

 この世界では、どの神を信仰するかは個人の自由に任されており、教えを説いて信仰を広める必要がないからだ。

 むしろ教会は、病院のようなものと言った方がいい。神官は医者だな。

 癒やしの神は、清貧を尊び、自己よりも他者を助ける人間に加護を与え、私利私欲におぼれる人間には加護を与えないし、加護を与えた相手が堕落すれば加護を取り上げる。

 定期的に癒やしの魔法の実技テストが行われるので、悪質な神官は自然と淘汰されるわけだ。

 そのおかげで教会は、真面目な神官だけが正当に評価される組織なのである。

 だから、出世欲だとかには無縁の人間ばかりなので、自然と神官は横並びの立場を持つわけだ。

 まぁ、個人的に神官が師弟関係になったり、尊敬したりってのはあるが、それは教会で正式に認められた上下関係とは言えないので除外される。

 閑話休題それはさておき

 マイザーとアンジェリカを後ろに控えさせると、老神官の指示に従って部屋の中央に置かれた石盤のようなものの前に立つ。

 緊張とかは特にしていない。

 この聖別の儀式で俺に必要なことは魔法が使えることの証明だ。

 貴族の貴族たり得る証は魔法が使えることであり、魔法を使えない者は貴族にあらずとまで言われる。

 しかし、幸いと言うべきか魔法が使えるか否かの要因はゲームの設定的に遺伝性が非常に強い。

 なぜかと言えば、魔法は神の加護によって使えるようになるものだからだ。

 加護の強弱によって遺伝するか否かと魔力量が決まる。すごい気に入ったやつの子孫だから特別視しているとかそんな感じだ。

 王権神授を地で行っている世界なので、国王である俺が魔法を使えないと言うことはまず間違いなくありえない。よって、王族である俺は魔法が使えなかったらどうしようなんて不安になる必要がないのだから緊張する必要がない。

 いや、正直、無印でラスボスだったルードの能力を考えるとクソ弱いんじゃないかって不安はある。

 あれじゃね? もしかしたら、この聖別でルードのステータスがクソ雑魚だったせいで、マイザーが「あ、こいつダメだ」って見限ったんじゃないかって不安もある。

 あんまりにも弱いと貴族にも舐められるって不安もある。

 せっかくお茶会は成功したのに、残念ステなせいでお腹がタプタプになった苦労が水の泡になるんじゃないかって不安もある。

 城を歩く度に影でコソコソとクソ雑魚ステータスを笑われてるんじゃないかって疑心暗鬼になりながら歩くことになるんじゃないかって不安もある。

 あれ? 緊張はしてないけどよく考えたら不安が多すぎないか?

 なんか緊張してきた。


「どうぞ、お手を」

「うむ」


 ちょっと緊張してきたことを悟らせないよう、鷹揚に頷きながら老神官の指示に従って石版の中央に手を触れる。

 すると、空中に見上げるほど巨大な半透明の板が浮かび上がり、そこに文字が現れる。


―――――――

のうりょく

と゛うく゛

そうひ゛

はなす

―――――――


 まんまゲームじゃん!?

 いつの間に俺はBボタン押したんだ? それとも三角ボタンか!? 四角か!?

 ほんと何これ!?

 ツッコみどころ多過ぎじゃないか。

 能力はわかるよ?

 だけど、道具と装備ってなに?

 今自分が装備してるものが分からない奴とかいんの?

 分からなくなったら、顔を下に向けて自分が装備してるもの見れば良くない?

 道具だって、何持ってるのか知りたいんならリュックなり道具を収納しているものの中身確認しろよ。

 何より、話すってなんだよ!

 誰と話すんだよ!

 意味分かんねーからマジで!


「……………………?」

「神官殿、どうかしたのか?」


 なんか、神官のじーさんも首ひねってるんだけど?

 なに、やっぱこれおかしいんじゃないの?

 バグでしょ?

 絶対バグってるでしょ?


「いえ、あまりにも普通の者と出てくるものが違いますので……それになんと書いてあるのかも分からない」

「む、わからないのか?」


 ステータス表示自体が神の御業みわざ的なものだし、転生者の特別仕様で俺以外には認識阻害でもかかってんの?


「はい。陛下にはおわかりになるのでしょうか?」

「うむ。わかるが……しばし待て」


 ちょっと、中身次第では誤魔化した方が良いかもしんないから、少し待ってくれ。

 さて、どうしたもんか。

 とりあえず、なんか選択してみる?

 どれにしよう?

 好きなものは最初派だし、どう考えても一番おかしい「はなす」からにしよう。


『おうとうはない。るすのようた゛」


 意味分からん。

 留守って誰がどこを留守にしてんだよ!

 あれか? やっぱ神の御業的なやつだし神様ですか?

 ねぇ、神様どこいんの? やっぱ教会? いや、教会に神はいないな。

 …………怪しまれるとあれだから、考察は後にしよう。

 次は、ステが見られるだろう「のうりょく」だな。


―――――――――――――――――――――

ルード

ちから:くそさ゛こ

すは゛やさ:と゛んか゛め

たいりょく:いっかいて゛おわり

かしこさ:た゛いそつ

うんのよさ:それなり


とくき゛:なし

まほう:闇

―――――――――――――――――――――


 マジで意味分かんないから……

 なんでドラゴンファンタジー風なんだよ!?

 フォア戦なら、アルファベット3文字だろ!?

 STRとAGIにDEFときてINTからLUKっていくはずだろうが!?

 自分のゲームに……フォウアード戦記に誇りを持てよ!

 なんで他社の超メジャータイトルぱくってんだこいつ!?

 てか、誰だこのステータス考えた奴は!

 さりげなく「たいりょく」が下ネタになってぞコラ!

 なんで「まほう」だけ中身漢字なんだよ!


「陛下?」

「あぁ……すまんな。どうやら、魔法は無事に使えるようだ」

「おぉ。それは重畳ですな」


 とりあえず、一番重要なことを伝えておく。

 魔法が使えると言う言葉に、そうなることが分かっていてもマイザーたちは胸をなで下ろしていた。

 それも当然で、遺伝性が非常に強いとは言うが、癒やしの神の礼にあるように神から嫌われると加護を取り消されることはありえるのだ。

 知らぬうちに神の怒りに触れ、国王の加護が取り消されたせいで内乱に発展したなんて話もある。

 まだ5年しか生きていない俺が神の怒りに触れるようなことををしたなんてことは、まずありえないが、この国に唯一残された王族である俺に万が一があった場合非常に面倒なことになるのだから、安堵するのも仕方がない。


「陛下、どの属性の魔法なのでしょうか?」

「闇とあるな」

「っ!?」


 マイザーの問いかけに答えると、3人が揃って息を呑む。

 え?

 もしかして、マイザー闇落ちフラグ立っちゃった? 闇属性だけに。


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