2色目 ー緑ー
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「…そうだね」
赤の絞り出すような声、無理やり取り繕うような笑顔。幼心にもなんだか居たたまれなくって、赤には少しでも笑顔でいて欲しくて、緑は明るい声を上げる。
「おれ、今から青に会いにいくんだ!
帰ってくるのが見えたって水が教えてくれたから」
「そっか、やっと終わったんだね」
「うん!みんな無事そうだって!」
「本当?良かったあ」
赤の安堵した表情をみて、緑も安心した。
戦争が始まるといつも、緑は水のところに入り浸る。双眼鏡で戦争の一部始終を見るために。
水お手製の双眼鏡は争いのある遠い場所までくっきり見ることができる。しかし1つだけなので、水と交代で見るしかない。
もう1つ作ってくれないかと水にお願いしたら「2つも作ると価値が下がっちゃうので嫌です」とけんもほろろに断られた。こう言っているけれど本当は別々で見るのが寂しいから嫌なだけだということを、生まれてからの短い付き合いなのに緑はちゃんと知っている。
この青年のこんな部分が緑は大好きなのだ。
「誰もいなくならないで良かった」
赤はそう呟いて、まだ色のない無色の境界線に視線を置いて微笑む。
その表情に緑まで嬉しくなった。
誰であっても、素直な笑顔を見れると心がはずむ。
笑顔は自分だけじゃなくて、相手も幸せにすることができる大切な武器だと緑はずっと思っている。どんなつらい時でも、笑顔があればがんばれると。
いつから?
いつだろ?
それは、緑自身にも分からないけど。
そんなことを考えている間に、はるか彼方の無色の地から小さな五色の点が近づいてくるのが見えてきた。
黄緑、橙、桃、紫、ーそれから青。
輪郭がハッキリしてくるにつれ、武器を手に少しずつこちらに歩いて来ている姿すら見て取れる。
「赤見て!みんなこっちに来てる!」
みんなが帰ってきたことが嬉しくて、緑はその場でぴょんぴょんと飛び跳ねる。
早くみんなにお疲れさまを伝えて、戦いの様子を聞きたい気持ちでいっぱいだ。
赤もきっと喜んでるだろうと思って横を見上げると、赤はじっと遠くの色たちを見つめながら両手をぎゅっと握りしめて複雑な表情をしていた。
どうして笑っていないの?
赤には悲しい顔をしないで、明るく笑って欲しいのに。
まだ緑には、赤のその表情の意味が読み取れない。
「私、ちょっと用があるから、白のところに行ってくるね」
赤は笑みを浮かべてでそう言い、赤い髪をなびかせながらくるりと回れ右をして歩き出した。
それは赤自身の気持ちを押し込めて、まだ小さな緑を不安な気持ちにさせないように気遣った優しさの笑顔だった。
違う。
赤にそんな風に笑って欲しくない。
緑が欲しいのは赤自身の素直な喜びを表すための笑顔なのに。
「はやく大きくなりたいなぁ」
大きくなれば、きっと赤につらい表情をさせないことができるはずだから。
こちらに向かってくる色たちに背中を向けて歩いている赤を見ながら、緑は小さくぽつんと呟いた。




