9 だべり
ローザはけっこうお喋りだ。
ただ、イヤな感じはしないし、むしろ心地良い。
次のアルバム曲の話をしたてくれた。
一旦はレコーディングしたものの、声変わりみたいなかすれが納得いかないと。
なんだったら収録しなおすか、って時に男性化して長時間変らなかった。
それは運命の相手に会って、性別を定めようとする本能だと診断されたらしい。
アトリメデューナには起こるかもしれないこと。
事務所側も想定に入れていたと。
アトリメデューナには必ず運命の相手がいる。
それは分かっているけど、どこにいるのかとかは分からないらしい。
超都会では宇宙旅行が始まっていて、ローザはその船から依頼があったらしい。
立体映像ですませることにした、って。
君がいるから、って。
君、って言うのは、僕のこと。
あきな、のこと。
そうじゃなかったら宇宙にまで探しに行っていた、と。
・・・なんだかスゴい話だ。
「・・・ん?」
少しの間があって、視線を落としていた僕はローザを見る。
凝視されている。
「可愛い」
「は?」
『ローザちゃん』は僕を床のカーペットに押し倒すと、おもむろに口元を舐めた。
驚いている時、ぺろりと何かをすくい取って食べてた。
ああ・・・ロールケーキのクリーム部分だ。
そのまま解放されて、起き上がる。
「不覚だった・・・」
「ねぇねぇ、ダメかなぁ?」
「・・・マーマーに相談してくるっ」
「そうなの?オーケー」
一階に降りて、リビングキッチンにいる母を見つける。
「マーマー、僕、女の子になってもいいかな?」
母は笑ってうなずいてくれた。
「応援するよ。後悔するなよ?」
「うん!」
二階の自室に戻って、「4日、休みがあるんだよね?」とローザに聞く。
その時ローザは女性になっていた。
母の作ったワンピースがとっも似合う。
「ま、まさか・・・4日間ぶっつづけでっ・・・・!?」
「何の話?」
「うーん・・・違うのかぁ。何の話をしているの?」
「僕、君のために、女性になりたいと思った。女性になるには神に申請して変化に3日かかる間、眠ってるんだ」
「・・・誰のため?」
「僕のためだ。ローザに抱かれたい。女性として」
「本当にそれでいいの?僕、叶うなら子供欲しいよ?結婚もしたい」
号泣してしまった僕は、
「神様お願いです」と
なんとか聞きとれるかもしれない発音で言ったあと、眠りに入ったらしい。
倒れている僕をローザと母がベッドに眠らせてくれて、その間、ローザは側にいてくれたらしい。
幸せな香りに包まれていた。