11 マネージャーさんも一緒に
うとうとしている僕の部屋に聞き慣れないノック音がした。
独特なリズム。
「あ。ライル?今は大丈夫だよ。入って」
ローザがそう言うと、そこにはスーツを着た美青年。
「ローザ様、四日目です」
「うん。仕事に戻るよ」
「ほーう・・・ああ、なるほど」
マネージャーさんが僕に気づいて、そしてローザが僕を示して発した。
「僕のいいひと」
「ほう。まさか話に出てたひと?」
「そうだよ。結婚式はどうだったの?」
「さすがに祖母の四回目の結婚式って慣れてきますよ」
・・・ええ!?
って顔をしてしまって、マネージャーさんがそれを見つけて苦笑。
「お嬢さん、ライルと申します。ローザのマネージャーです。冠婚葬祭が続きまして、対面ははじめてかと思われます」
「あ、はい。アキナ、と申します。よろしく」
「うんうん。あ。ローザ、着替えを」
「ああ。うんうん」
マネージャーさんがスポーツバッグから衣服を取り出す。
着替えているローザに気を取られていたけど、そこに母が来た。
「ねぇ、そちらまだ時間はなぁい?」
「ん?なにかご用が?」
「せっかく作ったケーキやクッキーもったいないから、おやつ、ご一緒しませんか?」
「ほう、ローザ?」
「うん、皆で食べようよ」
「ローザがそう言うなら、少しだけ」
こうしてマネージャーさんも一緒に、リビングで『初めて』のお祝い。
なんかかなごやかで、気恥ずかしいけど祝福してもらってるし嬉しいのも本当。
ひねくれなくてよかった。
それから、母のちょっとした発言で、とんでもない会話になった。
母「歌詞は誰が書いてるの?」
ローザ君「あ。女性のほうのローザの状態じゃ無いと描けないんです。歌詞」
母「曲って言うの?メロディは?」
ローザ君「実は僕が担当しています」
「はぁ~・・・お腹いっぱい・・・って、ローザ、今の極秘事項だぞっ?」
「アキナと結婚するから言ったの」
「な・ん・て!?」
「アキナと」
椅子から立ち上がったライルさんは、背景に雷を思わせた。
「すぐに、すぐに、すぐに、事務所と連絡をとって天に申請しようねっ」
「さすが僕のマネージャー兼ファン」
「いいんだ、さぁ、行くよ、ローザっ」
「おばさま、美味しいお菓子ありがとう。出席できて光栄です」
「あらあら」
「アキナ、愛してるよ」
「ええっ!?ああ、うん、僕も愛してるよ、ローザ!!」
「・・・うん!!」
レコーディングの件さぁ、録り直しできないかなぁとローザがライルさんに言っているのが聞こえた。
玄関まで母と見送ったけど、どうも不思議な感じがした。
「ねぇ、ローザ!!」
「ん?」
靴を履いているローザがこちらに振り向く。
そこにはボシュンがいて、「歌えるようになってるよ」と言う。
「もしかして、男性の状態では歌えないの?」
「そうだったんだけど、なんでか男性の状態で歌えそうだから試してみる」
「分かった」
靴を履いたローザが僕に両手を広げた。
僕はそそそと近づく。
おおぎょうにコメディチックにハグをしあう。
ふたりが笑顔を向け合って、軽いキスを唇にした。
お見送りしたあと、振り向くと母の目は真っ赤だった。
「ついに女の子になったのねぇ・・・ママ、嬉しい」
「ママ・・・産んでくれてありがとう」
くぐもる母の瞳から涙がこぼれた。
「もう、泣かないって・・・決めた、のに・・・」
母に抱きつくと、母はしばらく泣いたあと言った。
「いつまでもシーツ巻いてないで、女の子用の服を着ましょうね」
「どれがいいかなぁ」
ボシュンが「色々おめでとう」と言ってくれて、微笑んでお礼を言えた。




