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ハズレスキル『土壌感知』で転生した俺に、死にかけの辺境村を任されました  作者: ヲワ・おわり


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第70話 また始まりだ

朝、村の入り口に、全員が、集まっていた。


ミリアが、大きな荷物を、背負っている。中には、あの、農業記録帳の、完全版も、入っていた。


「行ってきます」


ミリアが、一言、言った。


「気をつけて。分からないことが、あれば、連絡してください」


俺が、言うと、ラナが、横から、ぶっきらぼうに、付け加えた。


「ちゃんと、飯を、食え」


ミリアが、笑った。



「二年間……ありがとう、ございました」


ミリアの声が、少し、震えた。


「農業を、教えてもらって。ここに、いさせてもらって……。私、最初、ひどいこと、言いました。『証明してください』って、突っかかって。レイム様じゃ、なかったら、きっと、怒ってたと、思います。私のこと」


「怒ることは、一度も、なかったですよ」


俺が、言うと、ミリアが、目を、丸くした。


「……嘘、ですよね」


「本当です」


ミリアが、しばらく、俺を、見て――それから、ふっと、笑った。涙を、こらえた、笑顔だった。


「……じゃあ。行ってきます」


そう言って、歩き出した。


その背中は、もう、振り返らなかった。一度も。立派な、旅立ちだった。



ミリアの姿が、見えなくなった後。


俺が、振り返ると――ラナが、農地に、向かって、歩いていた。


誰も、頼んでいない。なのに、一人で、農地に、出ていく。鍬を、手にして。老いた足取りで、でも、確かに。


その姿を、俺は、ただ、見ていた。


何も、言わなかった。言う必要が、なかった。あれが、ラナの、生き方だった。ここが、ラナの、場所だった。



俺は、農地に、近づいて、土に、手を、当てた。


最後に、もう一度。


スキルが、反応した。


【土壌感知】


――良好。一部、優良。


二年前、初めて、この土を、触った時。診断は、こうだった。「荒廃」「劣化」「死につつある」。


それが、今は――「良好」「優良」。


土は、生きている。人も、生きている。この場所は、続いていく。



数日後の、朝。


俺は、ダールム村を、発つことに、なった。


馬に、荷を、積む。東の集落へ。次の、荒れた土地へ。


出発の前に、俺は、村を、最後に、振り返った。


ラナが、農地に、いる。アナが、記録帳を、開いている。トムが、農具を、手にしている。センが、水路のそばに、立っている。村長が、入り口に、立っている。


全員が、いる。


全員が、動いている。


俺が、いなくても――この村は、もう、回っていく。



俺は、誰にも、声を、かけなかった。


声を、かけなくても、伝わっている。それだけの、二年間だった。


馬を、進めた。


ダールム村が、後ろに、遠ざかっていく。水路の音が、麦の匂いが、少しずつ、遠くなる。


胸の中で、一つの言葉が、浮かんだ。前世でも、新しい現場に、向かうたびに、呟いていた言葉だ。


でも――その意味は、あの頃とは、まるで、違っていた。


前世の「また始まりだ」は、また、失敗に、向かう始まりだった。報われない、繰り返しの、ため息だった。


今の「また始まりだ」は――。


確かに、積み上げた、ものの、上に、立つ、始まりだ。



さて、また始まりだ。

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