最終話
女が地面に落ちた瞬間バンと破裂音がし一面赤く染まった。
あまりの光景に顔を逸らしてしまった。
だが、また立ち上がってきたらと思うといてもたってもいられず
もう一度ゆっくりと視線を落とす。
するともうそこはいつもの地面に戻っていた。
ビューと一筋風が吹いた。
自分が不安定な柵の上にいることを思い出し、おそるおそる降りる。
コンクリのベランダの床に両足を下ろすと急に力が抜けて尻餅をついてしまった。
心臓が脈打っていて息が荒い。
だがそれも全て生きているからである。
「はー」
なんとも言えない長い息が出てきた。
そこでやっとこの件が終わった様な気がした。
あれだけ陰っていた陽の光が、いつの間にか部屋全体に行き渡っている様子をベランダから眺めていた。
風が吹き込み、部屋の空気を根こそぎ入れ替えてくれた様な気がした。
その日の午後、なんとか大学に行きユミにお寺から帰ってから、今朝あったことまでを順を追って話した。
最初は歩きながら話し始めたものの、途中で
「ちょっと待って、座って聞きたい」
と言われ近くのベンチに腰を下ろし丁寧に伝えた。
全部話し終えた時にユミは、
「そっか、じゃぁ猫ちゃんがコウキに恩返ししてくれたんだ」
と口にした。
僕もそんな気がしていたので
「そうだね」
とだけ返して今日はお開きになった。
家に帰り、汗ばんだシャツを脱いだ時背中を確認してみたが
穴はもう空いていなかった。
『背中の穴』、これにて完結となります。最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
もし彼らの結末に何か感じるものがありましたら、画面下部より【ブックマーク】や【評価】をいただけますと幸いです。いただいた感想や評価はすべて大切に読ませていただきます。
※現在は、次作として「現代の神主が因習村を成敗する伝奇アクション」を準備中です。また次の物語でお会いできることを楽しみにしています。




