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第2話 路面電車でGO!

              -Aksaray, Istanbul

 今日中に必ずしなければならないことがふたつある。次にイスタンブールに戻ってきた時の宿を確保することと、明日のイズミール行きの航空券を受け取ることだ。


「チケットは後で旅行会社の人がホテルに届けてくれるって言ってたよ」

「じゃあ、まずは宿探しだね」

「ブルーモスクの近くに観光案内所があるみたいだから、そこに行ってみようよ」


 地図で見ると、ホテルからは2kmちょっとある。目抜き通りを一直線なので迷うことはなさそうだが、歩くにはやや遠い。と思っていると、ゴーッという音を立てて目の前を路面電車が通り過ぎていった。しばらく見ていると頻繁にやって来る。これは便利だ。


「あれに乗って行こうよ」

「切符はどこで買うんだろうね」

「あそこじゃないの」


 歩道の片隅にキオスクのような小さな売店がある。三人揃って物欲しそうな顔で近づいていくと、店番の男が追い払うように手を振る。外国人はお断りなのだろうか。それにしては笑顔だ。トルコ語がわからないので、とりあえず電停を指差し「チケット」と言ってみるが、相変わらず男は何か言いながら手を振り続けている。


「この人、なんだかフリーって言ってるみたいだけど」

「ただってことなのかな」

「外国人だからサービスしてくれてるんじゃない」


 半信半疑ながら電停で待っていると、次の電車がやって来た。案の定、中までギッシリと混んでいて乗車口で押してもなかなか奥に進まない。ステップに足をかけるのがやっとで、このままだと把手にぶら下がりながら乗るような形になってしまう。やむを得ず諦めて一台待つことにする。


「いいか、みんな。次は何が何でも乗るぞ」


 ほどなく次の電車がやって来た。混み具合は変わらないが、今度はこちらも覚悟ができている。何しろ、世界に名だたる通勤ラッシュの国から来たのだ。こんなところで負けてなどいられない。無理矢理押し入ると後ろからさらに押され、どうにか乗り込むことができた。


 走り始めると意外に速い。さすがは電車だ。並走する車を次々と追い抜いていく。道路の中央で専用線となっているので、遮るものがなく渋滞知らずだ。


 次の電停を知らせるアナウンスも入る。渋い声で一言、駅名だけを告げるのだが、これがまた昔の国鉄みたいで聞き取りにくい。旧市街の地図がある程度頭に入っていたのでかろうじてわかるが、地理に疎い人には呪文のように聞こえるだろう。


 そのアナウンスが短く「スルタナメット」と呟いた。目的地だ。しかし、どうやってこの満員の車内から脱出すればいいのか。その時、弟が突然日本語で叫んだ。


「降りまーす」


 すると、どうだろう。あれだけ寿司詰めだった人波がさっと引き、出口へと向かう通路が目の前に現れたではないか。まるで旧約聖書でモーセが割った海を進むヘブライ人のように、悠々と電車を降りることができた。


 混沌としているようで、実は秩序正しい。それがこの国の人々の基本的なメンタリティーなのかもしれない。きっと、根が善人なのだ。好感度が少しアップした。

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