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56 アパートふたたび

()()()()は? 今日は一緒じゃないの?」


「色々あってさー。スネて車出してくれなかったの」


 新幹線と電車を乗り継ぎ、再びT都の盛り塩アパートへやってきた。

 おばあさんはハトにエサをやるのをやめたらしい。例の二人が無事に交際を始めたんだとか。

 アパートに関する配信はいい感じにネットで炎上し、近くを撮影するオカルト好きはたまに現れるようだが、迷惑系はすっかり近寄らなくなったとのこと。塩の不法投棄もなくなって大家さんも安堵しているという。


「大家さんは元気?」


 私を見るなり、おばあさんは笑顔になって部屋に招き入れてくれた。ハグまでしてくれて、なんて愛おしい。あの村のおばあさんが塩対応の闇の婆ならこっちは砂糖対応の光の婆だ。せっかくだから会いに来て良かった。


「大家さんはねえ、不摂生なのがいけないのよね。病院で栄養指導を受けてるそうよ」


「なはは。塩と脂が好きそうな腹してたもんね」


「あなたは相変わらず細いわねえ。お昼ご飯は食べたの? うちで食べていきなさいな」


「おばあちゃん、神……!?」


「この後の予定は大丈夫?」


「知り合いの占い師に会いに来ただけだから、だいじょーぶ!」


 私のポケットには占い屋フィービーのショップカードがある。

 T都に来たのは、綾目さんに用事があるからだった。




   ■ ■ ■




 ──計画を聞いて呆れたが、僕の言うことを心里さんは聞かない。本当に一人で出発してしまった。

 心里さんは言った。「化け物退治してくるから、ヨシさんはペテン師と決着つけといてね」と。


「今日はお一人なんですか?」


 寝室として貸し出している客間から桔梗さんがやってきた。僕は居間でノートパソコンを叩き、仕事の記事を作成しているところだった。


「あの子はごがん村に行きましたよ。別の場所に寄ってかららしいですが。──決着をつけるつもりらしいです」


「下哭さんは行かなくて良かったんですか」


「僕は彼女の幸運を知ってますから。それよりも、あなたのほうが心配です」


 桔梗さんが怨霊に狙われる理由は「クラスメイトだったから」ではないと、心里さんは推理したようだった。

 答え合わせを僕に任せて別件に行くなんて、探偵小説だったら無責任で打ち切りになるところだ。

 いわく「桔梗さんのことは真実がどうあれどうしようもないし、邪悪だけど怖くない」ため、いったん興味を失っているようだった。


「ここは安全なんでしょう? その理由、そろそろ教えてくれませんか。確かにここで寝起きしている間、一度も野蕗ちゃんの気配を感じません。まるで嫌がって近寄らないみたいに……」


 野蕗ちゃん、か。


 僕はノートパソコンを閉じて、彼女の方を見やった。座椅子をすすめる。


「まずは僕の話をしましょうか。僕や心里さんがあなたの霊能力を疑った理由も、あなたをこの家で保護する理由も、すべて同じなんですよ」

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