54 家に帰ろう
おばあさんに礼を言い、宿に戻ってきた。
お風呂が時間によって男性専用と女性専用に切り替わるため、私が先に入る。入浴を終えて浴衣着で部屋に戻ると、ヨシさんが布団を客間と寝室に分けていた。
「なにしてんの?」
「男女が同じ部屋で寝るわけにはいかないので……」
「鍵かけらんないのに女一人で寝るほうが怖いわ」
「ハッ……確かに……」
せっせと布団を戻しはじめる。ただし布団と布団の間隔がすごい。これが私とヨシさんの心の距離ってわけね。
就寝前に桔梗さんへメッセージを送った。インスタを交換してあるのだ。
『そっちは大丈夫?』
『怖いくらい平和です。昼に買い物に行ったら、レシートのくじ引きで一等が出ました。お米です。キッチンに置いてあります。二人で食べてください』
『運ツヨ』
『私もびっくりです』
■
翌日には雨も止み、すがすがしく晴れていた。
朝食を終えた私たちは村を散歩する。
昨日見かけた盛り塩は、雨で流れていくらかなくなっていた。
「畑やってる人もいるのに、土壌大丈夫なのかな」
「さあ……」
適当に聞き込みなどをして、暗くなる前に帰る予定だ。
出発する前に土産物とか買いたい……そう考えながら歩いていると、くまだ商店と書かれた小さな店を見つけた。
野菜から歯ブラシまで、なんでもかんでもな品揃えを見るに、地元民のためのコンビニだろう。ルマンドもある。
「いらっしゃい。外の人がいるなんて珍しいね」
店の奥から中年男性が現れた。この村の平均年齢から見るとかなり若い。
話を聞けばUターン組だった。県外で働いていたものの、故郷に戻って屋号を継いだのだとか。本業は膠職人らしい。普段は軽トラで村の外まで買い出しに行ってこの簡易コンビニを運営しているようだ。高齢者ばかりのごがん村を支える重要人物の一人だろう。
「おみやげになるようなものが欲しいんですけど……」
そう相談すると、民芸品らしき指人形をおすすめしてもらった。革製の指サック牛だ。女の子バージョンや犬猫鳥もある。かわいい。昔は針仕事とかで指を守るために使っていたらしい。
「じゃあ、これください」
指人形をはめたまま駐車場にいくと、昨日と変わらずぽつんとヨシさんの車だけが停まっていた。
車のドアが開けられないことに気付き、指人形をカバンにしまった。
助手席に乗り込み、帰り道のカーナビをセットする。
「なんも事件起きなかったね」
「座敷牢とか期待してたんですか?」
「してた。祠があったら蹴飛ばすつもりだった」
「なくて良かった」
スマホで撮った写真データの整理をしたり、雑談をしながら帰り道を走る。山を降りて街中?に入ると、かなり日常の風景が戻ってきた。
桔梗さんをヨシさんの家に引き留め続けているため、今夜の夕飯は三人前必要だ。
夕飯の用意はこっちでするから何もしなくて良いと彼女には連絡してある。
私たちは家の近くのスーパー寄り、タコを買った。
今夜はタコパだ。




