5 ホンモノ? ツクリバナシ?【2】
「さるぼぼ? あー、してるしてる。大事に」
『ならいいんです。あなたは目の前のことに夢中になって、すぐ自分の安全確保を忘れるから』
言われてやっと、ヨシさんから貰った手乗りサイズのぬいぐるみを思い出した。さるぼぼとは、G県H地方に伝わるお守り人形だ。赤い生地のシンプルなヒトガタに綿を詰めたもの。ヨシさんはそういう《思いやり系オカルト》を好み、時には手作りする。
出発前日に受け取り、荷物を詰める前のお泊まりカバンに突っ込んだ気がする。いまごろ底で窮屈にしているかもしれないが、失くさないためにそこにいてもらおう。
「そんなに心配しなくても大丈夫だって。これは引っ越しではなくお泊まりだし、私たちの《《幸運のルール》》には反しないよ。でしょ?」
『わかってますよ。でも心配くらいさせてください。だって、この前の《ひとりかくれんぼ》のときも』
「あー、なんか、電波が悪いかもー、明日またかけるね、ごめんねー」
軽やかにスマホ画面をタップし、通話を切った。
「さて。外の写真を撮ってまわるか」
スマホと水のペットボトルを持って立ち上がった。
ノックの怪現象が起きるのは夜だから、それまでは団地の下調べといこう。
靴をはいて玄関を出れば、見慣れない足元のそれが視界に入る。
「念には念を入れなきゃね」
盛り塩の前でしゃがみ、ペットボトルのキャップを開けた。
ひろきくんにスルーされたら困るから。
ボトルに残る水をそれぞれの盛り塩にかける。──すると、どろどろに崩れていく。が、完全に溶けて消えず、残ってしまった。水の量が少なかったようだ。
廊下をただ汚したようになってしまって焦る。
「これはさすがに怒られるか……!」
ポケットティッシュを取り出し、塩を拭った。
「……」
気になって、ティッシュ越しにニオイを嗅いでみる。
無臭だ。
そりゃそうか。塩だもの。




