【15話】物色ー『期待と結果』
戦利品漁りと買い取りです。
ゴブリンロードの巨体が崩れ落ちた後、静寂が戻った部屋で、俺はまず周囲を注意深く見渡した。薄暗い空間には、ゴブリンたちの残骸が散らばっており、煙が立ち上っている。勝利の余韻に浸りつつ、アイテムを確認することにした。
視線を向けると、倒れたゴブリンロードの周囲には、微かに光るいくつかの物が見えた。闇の中で反射するわずかな輝きが、アイテムの存在を教えてくれる。
まず、俺の目に留まったのは黒曜石のアミュレットだった。地面に落ちたそのアミュレットは、黒曜石の暗黒のような色合いで、無骨に削られた感じがかっこいい。手を伸ばし、指でそのアミュレットをつかむと、冷たく滑らかな表面が感じられ、ズシリとした重みが伝わってきた。なんかちょっと光ってるし。
次に目に入ったのは、ゴブリンロードの血晶石だ。地面に転がっていたその石は、深紅の輝きを放ち、まるで生きているかのように脈打っている。手に取ると、石の表面から感じる僅かな震えが、内部に秘められたエネルギーを示していた。その色合いは、血のように鮮やかで、思わず息を呑んだ。
最後に目を向けたのは、ゴブリンロードが振り回していた巨大な斧だ。3mぐらいあるんじゃないか? 地面に突き刺さっているその斧は、全体が黒ずんでおり、力強い一撃を放った痕跡が見て取れる。柄の部分は太く、頑丈そうだ。斧の刃の部分は、いかにも重そうで、光を反射しながらもその圧倒的なサイズ感を見せつけている。持ち上げれるかと持ち上げてみる。
「おっっっもいけどいけるな…」
その重さに少し驚きながらも、【身体強化】の力で持ち上げることができた。
ブンッブンッとと振ってみる。強そうだけど俺のスタイルとあってないな。
「次の階層に行くつもりだったのになぁ」
斧がなければ次の階層を覗きぐらいは行ける気がするが、斧での戦闘の仕方はまだわからないから、危ないだろう。
もともとは【身体強化】の性能の確認だったし、いいとしよう。
俺はそれぞれの魔石などのドロップアイテムを丁寧に袋に収めると、戦利品を持ってダンジョンを後にする準備を整えた。
ダンジョンを出たあと、ギルドの中の受付のカウンターで、職員にアイテムを渡す。
「すみません、これらのアイテムを鑑定してもらえますか?」
職員はアイテムを丁寧に受け取り、鑑定のための処理を始める。俺はその間、ロビーで待機しながら、これからの階層に向けて準備を整えた。
しばらくして、職員が戻ってきた。手には先ほど渡したアイテムがあり、彼の表情には少し興奮が混じっている。
「お待たせしました。これが鑑定結果です」
職員はアイテムの詳細を説明し始めた。
「まず、黒曜石のアミュレットですが、これには攻撃に対する防御力が20%軽減される効果があります」
「次に、この巨大な斧ですが、これは非常に重い武器ですので、【身体強化】を持つ方ぐらいしかまともに扱えないでしょう。よく運んでこれましたね」
「まぁ、気合で」
もっと良い言い訳あっただろ。
職員は斧の説明が終わると、慎重な顔つきで俺に話しかけてきた。
「最後に、ゴブリンロードの血晶石です。これを吸収すると、身体能力が一時的に大幅に強化されるんですが…これには少し事情がありまして…よろしければこちらの契約書にサインを頂きたくて」
職員は契約書を差し出し、その上に血晶石を置いた。契約書には、いくつかの注意事項が書かれており、詳細な説明が記載されていた。
「こちらの契約書には、ゴブリンロードの血晶石の使用、持ち出し、売却について書かれている契約書です。よくお読みの上、ご確認ください」
どんなもんだろうか。
ゴブリンロードの血晶石使用および取引契約書
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第1条:契約の目的
本契約書(以下「本契約」といいます)は、ゴブリンロードの血晶石(以下「血晶石」といいます)の取引及び使用に関する条件、リスク、制限について詳細に定め、契約者の同意を得ることを目的としています。
第2条:血晶石の特性
1. 名称: ゴブリンロードの血晶石
2. 外見: 深紅の輝きを放ち、脈打つようなエネルギーを感じさせる石。
3. 効果: 吸収することで、契約者の身体能力が一時的に大幅に強化されます。
第3条:使用上の注意事項
1. 副作用:
- 使用後に強い疲労感や痛みを伴う可能性があります。
- 長期間または頻繁に使用することで、筋肉や骨格に過度の負担がかかる恐れがあります。
2. 依存性:
- 身体が元々強くない契約者は、血晶石に依存しやすくなる可能性があります。
- 依存症状として、身体的な要求が高まり、健康を害する恐れがあります。
3. 使用制限:
- 一度に複数の血晶石を使用することは禁止されています。
- 異常を感じた場合には直ちに使用を中止し、専門家に相談する必要があります。
第4条:契約に関する追加条項
1. 買い取り条件:
- 契約者が本契約書にサインすることで、当ギルドは血晶石40%上乗せの価格で買い取ります。
2. 持ち出しの禁止:
- 血晶石をギルド外に持ち出すことは禁止されています。血晶石はギルド内で保管されるものとします。
3. ダンジョン内使用に関する規定:
- 血晶石は当ギルドで保管し、他のダンジョンギルドが所有する血晶石を使用することができますが、その場合には、当ギルドに預けている血晶石の所有権が破棄されます。
第5条:使用に伴う補償
1. 補償:
- 血晶石使用後、身体に異常を感じた場合、一定の補償が提供される可能性があります。
- 補償内容については、使用後の状況に応じて、当ギルドの判断により決定されます。
第6条:契約の履行と遵守
1. 契約履行:
- 契約者は、本契約書に記載された全ての条件及び規定に従って行動し、義務を履行することを約束します。
2. 契約違反:
- 本契約の条件に違反した場合、契約者は当ギルドが定める措置に従うものとします。
- 違反によって生じた損害やリスクについて、契約者は全て自己負担とします。
第7条:契約の変更及び解除
1. 変更:
- 本契約の内容を変更する場合、当ギルドと契約者双方の合意が必要です。
2. 解除:
- 契約者が本契約の条件に従わない場合、当ギルドは本契約を一方的に解除する権利を有します。
第8条:同意事項
契約者は、本契約書に記載された内容を全て理解し、同意した上で血晶石を使用および取引することを確認します。
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契約者情報
氏名: __________________________
日付: __________________________
サイン: __________________________
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ギルド代表者情報
氏名: __________________________
役職: __________________________
日付: __________________________
サイン: __________________________
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規約を全部読んで「同意」するなんて初めてだぜ。
「依存性があるのか…こわいな」
俺は契約書をじっと見つめながら、少し考え込んだ。確かに副作用や依存性のリスクがあるのは気になるが、これを使う予定はなく、持ち出して売るつもりもないため、特に問題はないだろうと判断した。最終的には、特に支障がなければ、サインしておくことに決めた。
「了解、サインします」
俺は契約書にサインをした後、職員に返却すると、彼女は笑顔で契約書を受け取り、血晶石を丁寧に扱い始めた。
カウンターを移動し買い取り受付に向かった。
これらのアイテムをお願いします。
今回の収穫は、
- スライムの魔石、22個
- ゴブリンの魔石、20個
- ゴブリンロードの魔石、1個
- ゴブリンロードの血晶石、1個
- ゴブリンロードの斧、1個
- 黒曜石のアミュレット、1個
アミュレット以外は売ってしまおう、どうせ斧は使わないし、欲しくなったらまた取ればいい。
「ありがとうございます。買い取り番号二番でお待ち下さい」
そして俺は、待つために、ロビーのソファで優雅に座る。昼とか夜だと占領されているが、朝なら使い放題だ。
時計は6時を周り、テレビではニュースが流れている。
「若者の間で血晶石が流行中」という話題が取り上げられていた。タイムリーな話題だと感心しつつも、俺の番号が呼ばれるのを待った。
「番号札2番でお待ちのお客さまー」
快適なソファから重い腰を上げ、カウンターへと向かった。職員が手早く買取の内訳を伝えてくれた。
「買い取り完了いたしました。こちらが内訳です。口座の方に送金しますか?」
「あっ…あっ…」
なんと買取額、21万1,573円。高校生の俺が手にするには大金過ぎた。
「お願いします」
今回は現金はもらわない、俺はカードを手に入れたからな!スマートだぜ全く。
駅へ向かい、ロッカーから学校の荷物を取り出す。これからまた、いつも通りの学校生活が待っているが、朝のこの一瞬で非日常を体験した自分が、少しだけ誇らしく感じられた。
次は学校回です。
次の話かその次で、ヒロインを出したい。
そして流石に契約書を書くのは初めてだわ。
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