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第七十話 第一の関門突破


呪文の詠唱と共にアガサの体に魔力が励起!

すぐさまその属性は風に変換されるも、

力強さはそのままに強風が沸き立つ!

だがトルネードと言える風の強さではない。

せいぜい突風というところだろう。

だが、それは所狭しと洞窟内に吹き荒れ始めた。

全員のローブや外套がはためき、

ケイジが手にしているマップがバババと折れ曲がってゆく。


この分なら転ぶのに気をつければいいだけで、洞窟には影響も与えずに・・・


おかしい・・・。


これは肌の感覚か、風の流れがおかしくなってないか?


 「ファイアー。」

私は火の初級呪文を使用した。


!!

それは既に予感めいたものがあった。

生活魔法とも言われる初級呪文は、

本来、魔法が起動されるとその場から動かない。

勿論アガサのトルネードが吹き荒れている最中なので、すぐさま消しとばされてしまったが、

この場の全員が気づいたろう、

私の作った炎は先程の壁の中に吸い込まれてしまったのだ。


そう、壁に炎がぶつかったのではなく、

消えた。


 「炎が岩壁の中に消えていった!?」

驚くケイジに、術者であるアガサが的確に訂正する。

 「炎でなく、私のトルネードの気流が壁に向かって流出。

 これは高い確率でこの壁は幻影!」


そこでアガサは術の発動をストップさせた。

出力を抑えているとは言え、全体攻撃魔法の魔力コストは半端ないしね。

だが・・・


 「げ、幻影・・・?

 この壁、触れるよな・・・?」


リィナちゃんがペタペタ壁をいじる。

これはかなり高度な術だ。


観測者はそこに壁があると思い込まされているから、

自分で壁の感触すら自分自身で再現させられるように錯覚してしまっているのだ。


だが、他の無機的な現象がそこに起きれば、そこで初めて観測者も違和感に気付くことができるというわけだ。


 「か、鑑定でさえも?」

そう、タバサの鑑定も、

恐らく近隣の岩石の材質を読み取った、というより読み取らされた。

よくまもあ、そんな高度な隠匿魔法をこんなところに張ったもんだ。


そしてアガサは次々と魔法を撃ち込む。

威力を抑えた基本の魔法ばかりだが、

呪文詠唱さえ勿体ないとばかりに省略パターンで撃てるようだ。


 「ファイアーボール!

 ストーンバレット!

 アイスニードル!

 ライトニング!!」


す、凄いな、

連射速度も凄まじい。

さすがダークエルフでもトップクラスの魔法使いだ。


そして、唱えた魔法は全て壁の中に吸い込まれた。

そしてそれぞれの時間差が生じ、

奥の方から衝突音なり破壊音が聞こえてくる。


 「間違いないね、

 この奥は空洞になってる。

 けど、これ生身のウチら入れんの?」

リィナちゃんの聴力は、もはや誤魔化しを許さない。


そうなんだよね。

原理的には間違いなく私たちも奥に行けるはずなんだけど、

あまりにもリアルな壁がそこにあるように思えて、

その壁をすり抜けられる気がしない。


そして一番恐ろしいのは・・・


 「強行突破したらそこに罠を仕掛けられている可能性。」


タバサの的確な判断。

そう、それを想定すべきだろう。


 「ダメかぁ〜、

 なんならあたしがみんなを壁に放り投げたら、意外とすり抜けられるかなあって思ったんだけど。」


ダメダメ!

怖いよリィナさん!


 「いや、ここは強行しよう。」

おい、ケイジ!

どうするつもりだ!?


 「タバサ!

 全員にシールド!!」

 「了解! 今度こそ完璧に依頼を遂行!!

 プロテクションシールド!」


無属性のシールドか、

主に物理的なダメージから身を守るシールドだ。

私たちの体を中心に透明な球体の膜がかかる。


 「アガサ!

 洞窟を水で押し流せ!!」


フィールド呪文てか、

まさか・・・。


 「命の根源たる水よ、我が足元に集いて勢いを増せ!」


あ、これフィールド呪文じゃないぞ!?


 「大地より湧き出でて全てをちょこっと飲み込め!『メイルシュトローム!!』」


全体攻撃呪文じゃないかっ!!

だが先程と同じく威力を抑え目?


どこから湧き出たのか考える暇もなく、大量の水が洞窟内に溢れかえる!

当然、私たちは球体ごと浮かび上がり体の自由は利かない!

そしてフィールド呪文でなく攻撃用呪文であるからには、その水は指向性を持つ!

その方向は幻術で作られたと思われる岩壁に・・・


 「あああ!!」

大量の水は岩壁に阻まれているが、

先程の魔法がすり抜けていった箇所は、今回もそこだけ水の流れが消えていく!


その流れに乗れれば私達も・・・

あっぶな!!

私含めケイジやタバサが球体ごと壁に激突する!

シールド張ってあるから外傷はないけども、うわわわわっ!


 「みんな意識を保持!

 水流は私がコントロール!」


威力を抑えているせいか、

アガサにはその余力があるようだ。

タバサの作った球体の中で、ひっくり返りながら、もう私達に出来ることなどない!

頼むよ、アガサ!!


 「うっ・・・と、止まった?」


気がつくと、徐々に水の勢いは弱くなり、私の球体は洞窟の岩陰に引っかかって動かなくなった。


あー見っともない。

シールド呪文のクッションがあるからケガはないけど、

四つん這いになるのがやっと、

目が回ってしばらく起きれそうにないな。


 「み、みみ、みんな無事?

 全員そろってる?」


流石にリィナちゃんも声に力がないぞ。

えっと、

ケイジにタバサに、

あ、アガサが先にヨロヨロ立ち上がって胸を張ってる。

 「見たか繊細なる我が魔力操作!

 見事幻影の壁を突破!!」


い、いや、見事だけどこれは・・・

 「ケイジ!!

 上手くいったから良かったけど危ないだろこれ!!

 壁の向こうが奈落の底だったらどうする!?」


思わず怒鳴ってしまった。

アガサは悪くない。

こんな無茶苦茶な指示を出したケイジが悪い!


プロテクションシールドが次々に解除されると、ケイジもゆっくりと立ち上がった。

 「いやあ、まあ魔人側も通るならそんな致命的な罠はないかなあと。

 罠があったとしても、大量の水で吹き飛ばすか無効化できるし・・・

 それに落とし穴系だったらカラドックの精霊術で何とかなるんじゃ?」


 「・・・お前、さっきアカザには派手な魔法使うなって言っておいて。」


 「はっはっは、そんなこと言ったっけ?

 まあ、無事で何よりということで。

 それより現状確認しようぜ?」


仕方ない奴だ。

まだ地面は大量の水が浸ったままだが、

せいぜいブーツのくるぶしぐらいまでで歩くのに不自由はない。

辺りを見回すとここは完全に今までいたエリアと異なることがわかる。

洞窟内と岩や壁自体は今までと変わらないが、

明らかに先に続くと思われる一本道がある。


 「ここからはマップがない。

 感覚も研ぎ澄ませ。

 何がいるかわからんぞ。」


ケイジの言葉は今更だがその通りだ。

わざわざ幻術をかけてまでこの道を隠していたんだ。

紛れもなくこの先に待ち構えている者がいる。


振り返ると元来た道が確認できる。

幻術はこっちのルートからは機能してないようだ。

帰りは楽だな。


だが、ここから先は前に進むにしても楽とは言えない。

情報は何もないのだ。


ケイジの指示の下に、

先頭のリィナちゃんが五感を研ぎ澄ませて先陣を切る。

続いて魔力の流れを感知できる私、

支援魔法を使えるタバサ、

攻撃魔法のアガサ、

そして後方の守りと指示役のケイジが殿だ。


アガサのライトが新たな洞窟を照らす。

洞窟の天井や足元、岩壁に変化は見られないが、僅かに風の流れを感じる。

現在一本道の為に道を誤ることもない。

これは間違いなく、どこか外に通じている道だ。


そのまま20分程歩いたろうか?

洞窟内の道は上り坂になった。

勿論人が手入れしているわけでもないので、

凸凹がかなりある。

女性陣には辛いかも?

リィナちゃんは余裕のようだが、

エルフ組がバテ始めている。


どこか休んだ方がいいかもしれないな。


振り返ってその事を問うと、

二人のエルフは揃って私の両腕にそれぞれ腕を絡めてきた。

 「さすが優しいカラドック、気遣い感謝!」

 「心配無用、Aランクパーティーならこの程度余裕!」


な、なるほど、伊達に数々のクエストを達成してはいないということか。


まあ、私も最初は体力落ちてたけど、Cランクになった頃は他の冒険者たちにも遅れはしないようになってたからなあ。


2人のじゃれ付きはスルーして、

更に数分歩いたところか、

先頭のリィナちゃんの耳がピクリと動いた。


 「川の音だ。」

勿論私にはまだ聞こえない。

全員足を止めて、各自がそれぞれ得意の感覚をフルに発揮する。


 「植物の匂い・・・だな。

 コケの類いじゃない。」

ケイジの嗅覚にも反応があったようだ。

私の方は異常を感じないが、

これは外の出口が近くなったということか。


アガサがライトの光量を下げる。

外からの光を感知するためだ。


異常は・・・ないが、周辺の魔力の流れに一定の動きが出てきた。

確実に外部からの流れだろう。

 

さて、鬼が出るか蛇が出るか?


次回いよいよこのパーティーでカラドック初戦闘。

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