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ケーキ



 家に帰って一人になると、湖都は肘をついてぼんやりと考えた。


 雄大が、希和子を好き。

 本当に? 

 わたしの勘違い? でも、もし、そうならどうしよう。


 今日の二人の様子を見ていると、いい感じだった気がする。

 希和子はどうなんだろう。


 はああ…。


 大きなため息が出る。


 ああ、やだやだ。考え出したら止まらなくなった。

 いつから自分はこんなうじうじした人間になったのか。


「ああっ、もうっ」


 突然、大きな声を上げて立ち上がる。


 考えるのやめた!

 わたしはうじうじ人間なんかじゃない。クールに決めなきゃ。


 そう思ったとたん、おせっかいの虫がうずきだした。



 ×××××



 次の日、湖都は雄大を呼び出した。

 なるべく他の生徒に見られないよう屋上につながる階段を選んだ。ここなら、生徒はほとんど来ない。


 雄大は少しそわそわしていて湖都を見るなり、何だよ、呼び出したりして、とぶっきらぼうに言った。


「あんたさ、希和子が好きなんでしょ」


 開口一番にそう言うと、雄大は顔を真っ赤にさせてあたふたした。


「はあっ!? な、何言ってんだよっ」


 ああ、やっぱり!

 図星過ぎて、笑っちゃう。


「告白したら?」

「え?」

「好きなんでしょ」


 好きという言葉に敏感に反応するらしい。雄大はまた顔を赤くさせた。


「バカ言うな」

「男でしょっ」

「な、何だよ、いきなり」


 雄大が戸惑っている。

 湖都は思い切って教えた。


「昨日見たでしょ? 希和子、ケーキが大好きなんだよ」

「だ、だから何だよ」


 雄大は、湖都の迫力に押されているようだった。


「好きなものがはっきりしているんだから、簡単でしょ」

「簡単って?」

「もう、鈍い男ね」


 湖都はじれったさに口をふくらませた。


「ケーキを作って告白するのよ」

「は?」


 雄大がぽかんと口を開ける。


「好きだってケーキ渡すの。希和子、喜ぶよ」

「ま、待てよ。俺がケーキ作るのか?」

「うん」

「はあ…」


 雄大がため息をついた。


「なんで俺が作らなきゃいけないんだよ。男なのに」

「気持ちよ。だって、希和子は昨日、チョコレートケーキだけでも四つも食べたのよ」


 同じケーキを四つも食べる女の子はめったにいない。よほど好きなのだ。


「お前は?」

「へ?」

「三つしか食べなかったろ?」


 雄大の言葉に声が出せなかった。


「あ、あたしのことはいいじゃん」


 小さく答えると、雄大は眉をひそめた。


「ケーキが嫌いなんだろ」

「そんな女子いないよ」

「じゃあ、なんで食べなかったんだよ」

「お腹一杯だったの」

「なんで」

「いいでしょ」


 雄大は腑に落ちない顔をしていたが、息を吐いた。


「分かった。じゃあな、おせっかい」


 くるりと背中を向ける。



 おせっかい。



 呼び止めようと思ったが、やめた。


 おせっかいをして嫌われたかもしれない。

 けど、二人がうまくいったらいいじゃない。


「…帰ろ」


 呟いた。





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