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最強ゲーマーの《多世界攻略録(マルチバースアーカイブ)》  作者: 紅柳
第二部仮想世界編 第一編 隔離世界編
43/150

第43話:レベルアップの光と軍師の違和感

『樹海窟』の緑鮮やかな一本道を、俺たちは危なげなく突き進んでいた。

道中に現れるシャドウ・バットや、木の根に擬態した移動植物『ルート・ウォーカー』といったモンスターたちは、すべて俺の【予測演算】が弾き出す赤い予測ラインによって、出現した瞬間にその未来の軌跡を完全に暴かれていた。


「次、左からルート・ウォーカー2匹。闇風、手前の突進をいなしてヘイトを取ってくれ。カレンは奥の個体の体幹を崩す。メグ、2匹が重なった瞬間に叩き込め」

「はい、お任せください、WISTERIAさん!」

闇風が短剣を構え、システムのアシスト光を伴いながら美しく閃かせる。彼はゲーム的な「ターゲット固定ヘイト」の仕組みを直感的に理解したのか、あえて大きな動作で敵の注意を惹きつけ、完璧なステップで攻撃を受け流した。さっきまで俺の後ろでおどおどしていたのが嘘のような、見事な立ち回りだ。


「させませんっ!」

カレンのレイピアが鋭く突き出され、ルート・ウォーカーの急所である『核』の結晶を正確に捉える。ガキィン、と硬質な効果音が響き、敵が大きくのけぞって行動不能スタン状態に陥った。

「そぉれ、『フラムポーション』!」

絶妙なタイミングで、メグの手から投げ渡されたフラスコが炸裂する。激しい炎が2匹のモンスターを包み込み、そのHPバーを瞬時に消し飛ばした。

ズサァァ……と、光の粒子となって消えていくモンスターたち。


その瞬間、俺たちの身体が同時に眩い純白の光に包まれた。耳元で、ファンファーレのような軽快なシステム音が鳴り響く。

『ポーン! LEVEL UP!』

視界の端で、それぞれのステータスウィンドウが自動的に開き、数値が書き換えられていくのが見えた。

「あ、レベルが上がりました! レベル2です!」

カレンが自分の手を握ったり開いたりしながら、嬉しそうに声を上げる。


「本当ね。身体が一瞬で軽くなったわ。現実の修行と違って、筋肉痛もなしに一瞬で強くなれるなんて、本当に都合のいい世界だわ」

メグもウィンドウを見つめながら、感心したように息を吐いた。


俺も自分のステータスを確認する。

名前:WISTERIA

レベル:2

職業:戦術士(見習い)

所持スキル:【予測演算(Lv.2)】

「……なるほど。レベルが上がったことで、スキルのレベルも上がっているな」


俺は小さく呟き、思考の海へと沈み込んだ。

スキルレベルが2になったことで、【予測演算】の精度が明確に上がっているのが分かった。脳内にフィードバックされる敵の『1秒後の未来』の情報量が、より濃密に、よりノイズが少なくなっている。この調子でレベルが10の倍数になれば、スキルそのものが進化する。そのシステム自体は非常に合理的で、プレイヤーとしての高揚感を煽る素晴らしい設計だ。

しかし、その一方で、俺の胸の奥には拭いきれない「違和感」がじわじわと広がっていた。


「WISTERIAさん! レベルが上がったら、短剣がすごく手に馴染むようになりました。これなら、さっきよりもっとWISTERIAさんの指示通りに動けそうです!」

闇風が嬉しそうに、弾んだ声で報告してくる。その真っ直ぐで純粋な瞳には、相変わらず俺への絶大な信頼が宿っている。

「ああ、頼りにしてるよ、闇風。……なぁ、お前たち。この世界に来てから、少し『感覚が良くなりすぎている』とは感じないか?」


俺の問いかけに、3人が怪訝そうな顔をした。

「良くなりすぎている、ですか?」

カレンが首をかしげる。

「そうだ。確かにシステムのアシストはある。だが、いくらなんでも俺たちの連携が初手から完璧すぎる。ゲームの仕様に身体が馴染む速度が、異常に早すぎるんだ。まるで……俺たちの脳が、最初からこの世界に最適化されているかのように」

戦術士としての俺の頭脳が、このピカピカで過保護な世界の違和感を捉え始めていた。システムが親切なのではない。システムが、俺たちの『現実の境界線』を曖昧にしようと、急速に侵食してきているのではないか――そんな不穏な仮説が頭をよぎる。


「ちょっと青真、難しく考えすぎじゃない? 私たちが強すぎるのは、現実で死線をくぐり抜けてきた『ガチ勢』だからでしょ。システムが甘やかしてくれるうちに、サクッとこのダンジョンを終わらせちゃいましょうよ」

メグが俺の肩をポンと叩き、前方の大きな扉を指差した。

その扉の先からは、これまでの雑魚モンスターとは明らかに違う、重苦しいプレッシャーが漂ってきている。床には、これでもかと派手な警告色で『この先、ボスエリア』という文字が明滅していた。


「……そうだな。今は目の前の攻略に集中しよう。行くぞ、みんな。最初のボスのお出ましだ」

「はい!」

「了解!」

「ついていきます、WISTERIAさん!」

三人の頼もしい返事を聞きながら、俺たちは気を引き締め直し、巨大な扉を押し開けた。

読んでいただきありがとうございました!もし面白いと思っていただけたら、ブクマや評価で応援してもらえると励みになりま

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