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第17話:ギルド、現実にログインす

第四師団長をハめ殺した翌日。街の空気は一変していた。

黒死蝶の最上位――第一から第三師団による、なりふり構わない大規模な「青真狩り」の包囲網が敷かれたのだ。街の主要道路は奴らの息がかかった不審な車両で封鎖され、その軍勢は数百人規模に膨れ上がっていた。


「サブマスター、さすがにこの数は私たちの4人だけのスキルじゃ捌ききれないわ。完全に物量で圧殺されるルートよ」

拠点のモニターを見つめるメグの顔に焦りが浮かぶ。


だが、俺はスマホのギルドチャットを開き、不敵に笑った。

「問題ない。数が足りないなら――こっちも『いつものメンバー』を揃えるだけだ」


画面に、一言だけメッセージを打ち込む。

『――リアルレイド(全面戦争)を開始する。全メンバー、現実リアルにログインせよ』


直後、街の静寂を切り裂いて、凄まじい重低音のエンジン音が響き渡った。

窓の外を見下ろした一条さんと闇風が、目を見開く。


「……な、なんですか、あの車列は!?」


包囲していた黒死蝶の軍勢を正面から跳ね飛ばすように現れたのは、漆黒の大型装甲車プロテクション・ビークルの車列だった。さらに上空からは、民間の大型ヘリが爆音を立てて飛来する。


装甲車のドアが開き、防弾仕様の高級スーツに身を包んだ若き女性が降り立った。

ゲーム内最強のメインタンク、リアルでは国内屈指の重工業系マルチ企業を率いる若き天才社長・アイギスだった。


「お待たせ、サブマスター。我が社の開発部が総力を挙げた『チタン合金製・電磁機動大盾』と『タクティカルプロテクター』、ギルドの予算で500人分用意しておいたわよ?」


彼女の後ろから、装甲車のハッチを開けて次々と降り立つ男たち。全員が支給されたお揃いの重装甲プロテクターと機動盾を装備した、「百華繚乱」の前衛職モブメンバーたちだ。


さらに、ハザードランプを点滅させた救急車両の一団が滑り込んでくる。

「おいおい、夜勤明けの俺を呼び出すなんていい度胸じゃないか」

白衣を翻して現れたのは、ゲーム内の優秀なヒーラー、リアルでは超一流大学病院の救命救急センターで主治医を務める天才外科医・キュアだった。


彼の手下である衛生兵部隊(医療系メンバー)が、瞬時に戦線の真後ろに迅速な救護テント(セーフティエリア)を構築していく。


「そして――」

アイギスが不敵に微笑む。

「ゲーム内でうちの突撃隊長をやってたアイツ、リアルじゃあ『防衛関係の特殊部隊』の現役幹部だったのよね。連れてきたわよ」


大型装甲車の屋根から、ガチのタクティカルギアと無線機を身にまとった屈強な男たちが一斉にラペリング(降下)してくる。彼らは一瞬にして黒死蝶の包囲網の弱点を分析し、完璧な戦術フォーメーションを展開した。


「百華繚乱、前衛部隊! 盾のフォランクスを展開して戦線を押し上げろ!」

アイギスの号令とともに、数百人の重装歩兵と装甲車が、黒死蝶の包囲網を逆にすり潰すように前進を開始する。


「衛生班、前線に『戦闘興奮バフ剤』と『疲労回復スプレー』を常時配給! 一人たりとも前線を下げさせるな!」

キュアの指示で、無限の継戦能力がギルドに付与される。


数分前まで絶望的な包囲網にいたはずの俺たちの前に、今や黒死蝶の上位三師団と真っ向から渡り合える「最強の私兵ギルド」が具現化していた。


装甲車のボンネットに腰掛けた俺は、脳内に展開された『予測演算タクティカル・フォーサイト』のマップが、味方の青い光点で埋め尽くされていくのを見てニヤリと笑った。


「よし、盤面ステージは整った。――全軍、突撃。黒死蝶を根こそぎハメ殺すぞ」


「「「おおおおおッ!!lll」」」


現実の街を舞台にした、前代未聞の「黒死大戦」の火蓋が、今切って落された。

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