第4話 干渉
勝てない。
そう理解した時――
戦いは終わるのか。
HYDRA CHRYSALIS
新章:ORIGIN
第4話 干渉
崩れる。
世界が。
完全に。
「――回収、再開」
上位観測体の声。
感情はない。
ただの処理。
榊は動けない。
体が重い。
水が応えない。
「……くそ……」
歯を食いしばる。
だが。
分かっている。
(通じない)
さっきの攻撃。
すべて。
解析された。
適応された。
もう同じ手は使えない。
「――対象、確保」
上位観測体が手を上げる。
ゆっくりと。
確実に。
空間が固定される。
逃げ場がない。
「……ここまでか」
榊が呟く。
力が抜ける。
ほんのわずかに。
その瞬間。
足元の水が揺れる。
微かに。
本当に微かに。
「……?」
違和感。
今までと違う。
“別の流れ”。
「――異常検知」
上位観測体が反応する。
初めて。
即座に。
「……なんだ」
榊が目を細める。
水が。
勝手に動く。
自分の意思じゃない。
別の意志。
もっと静かで。
もっと深い。
「……まさか」
理解する。
遅れて。
“あれ”だ。
最初に触れたもの。
そのさらに奥。
「――干渉源、特定不能」
上位観測体の声に。
わずかな乱れ。
初めて。
“想定外”。
次の瞬間。
水が広がる。
静かに。
だが確実に。
空間全体へ。
「……来たか」
榊が呟く。
立ち上がる。
ゆっくりと。
体が軽い。
さっきまでの圧が――
消えている。
「――圧力低下」
上位観測体が後退する。
わずかに。
だが確実に。
「……効いてるな」
榊が笑う。
だが。
自分じゃない。
この力は。
「……誰だ」
小さく呟く。
その時。
声が響く。
直接。
頭の中に。
「――観測、拒否」
静かな声。
だが。
圧倒的。
上位観測体が止まる。
完全に。
「――干渉優先度、再計算」
遅い。
明らかに。
処理が追いついていない。
「……上がいるってか」
榊が言う。
理解する。
ここにいる“観測体”より上。
別の存在。
「――排除対象、変更」
上位観測体が言う。
だが。
その瞬間。
水が動く。
一瞬で。
完全に。
存在を包む。
「――ッ」
初めて。
明確な崩壊。
輪郭が乱れる。
維持できない。
「……終わりか?」
榊が言う。
だが。
違う。
これは。
自分の勝ちじゃない。
「――撤退」
上位観測体が言う。
即座に。
判断している。
そのまま。
空間が裂ける。
逃げる。
完全に。
「……逃げたか」
榊が息を吐く。
力が抜ける。
その場に立つ。
静寂。
完全に。
戦いが終わる。
だが。
足元の水は残っている。
静かに。
揺れている。
「……お前か」
榊が言う。
問いかけるように。
返事はない。
だが。
理解している。
これは。
“本体に近いもの”。
もしくは――
その一部。
「……助けたのか」
問いかける。
沈黙。
だが。
水がわずかに揺れる。
否定ではない。
肯定でもない。
ただ。
存在している。
「……借りは作ったな」
榊が小さく笑う。
その時。
水が静まる。
完全に。
元に戻る。
何もなかったかのように。
「……消えたか」
空を見る。
何もない。
だが。
分かっている。
これは終わりじゃない。
むしろ――
“始まった”。
「……上か」
小さく呟く。
上位観測体。
そのさらに上。
干渉してきた存在。
そして。
自分。
「……いいぜ」
一歩踏み出す。
もう迷いはない。
「全部、行く」
その言葉。
宣言。
戦いは。
次の段階へ。
完全に移行した。
―――続く
第4話を読んでいただきありがとうございます。
絶対的な劣勢の中で、
榊は“別の存在”によって救われました。
しかしそれは、
新たな脅威の始まりでもあります。
次話では、
この干渉の正体に迫ります。




