転生悪女は決意する。
私の目が覚めたのは夕方だった。
どうやら私は転生一日目を寝て過ごしてしまったらしい。
……もっと有意義な1日にしたかった。
例えば、前世の記憶を書き出してみるとか、筋トレをしてみるとか、屋敷の図書室に行ってみるとか。
それが、寝るだけだなんて!
でも、いっぱい寝たおかげで記憶の整理はできたみたいだ。
気絶する前の頭の中をかき回される感覚がなくなっている。
やはり、私は夢の中の公爵令嬢に転生したらしい。
名前はイライザ・アイスベルク。
年は10歳。
イライザ公爵の家長女。
残念ながら、イライザとは今日(夢の中含めたら昨日?)が全くのはじめましてだ。
別に前世で好きだった小説のキャラクターというわけでも何でもない。
どうせ転生するのなら、前世で作っていた「転生したい作品ランキング」の中にある作品がよかった。と、少しだけ思ってしまった。……今も思っている。
「あの夢は何だったんだろう?」
ポツリと呟く。
わかっているのは、過去ではないということ。
なぜなら、イライザの記憶にあんなものはないから。
それに、夢の中のイライザはもっと大人だったしね。
じゃあ、あれは私の未来?
いや、あんな未来は断固お断りしたい。
きっと違うだろう。違うと信じたい。
ぬぬぬ、と考えるが、答えはわかりそうにない。
まぁ、アレについては後々考えよう。
今じゃなくていい。
一旦考えることをやめて、部屋を探索してみることにした。
前世の2倍ほどありそうなベットの上から垂れているカーテン(多分違う)を押し退けて降りると、広い部屋が現れた。
茶色と赤をが基調とされていて落ち着いた雰囲気だ。
ベットの横にはテーブルと本棚。
クローゼットと思わしき扉の横にはドレッサーと全身鏡がおいてある。
意外と物は少なめなのかなーと思いきや、クローゼットの中にはドレスやバックが大量に入っていた。
公爵令嬢がミニマリストな訳がなかった。
ベッド戻り、ポスンと横たわる。
すると、頭の方になにか違和感を感じた。
「なんだこれ?」
枕を裏返すと、ボロボロの本が現れた。
表紙は傷があり、文字が読めない。
中を開くと、紙は黄色く変色していた。
パラパラと中を流し読みしていく。
「大陸歴12474年 日の月 6日目
平民から転入生がやって来た。
光属性だなんて、すごいわ。
やはり、平民との常識の違いに苦しんでい
るようだわ。
注意することが彼女のためなら、私がや
らなければ。 」
「大陸歴12475年 水の月 42日目
最近、彼女と婚約者様の距離が近い気がす
る。
仲がいいのはいいことだけれど……。
たとえ冗談だとしても、「二人の方がお似
合い」という言葉には少し傷つくわ。
いえ、私がもっと努力を重ねればいいだけ
の話ね。 」
「大陸歴12475年 風の月 35日目
彼女が階段から落ちた。
どうやら、私が落としたことになっている
らしい。
誤解があったのかしら。
早くとかなければいけないわ。 」
回りの視線がいたい。
私はやっていない。
今までの努力は全部 無駄だったようね。
嵌められた。
憎い。
許せない。
私を信じなかった全ての人間が許せない。
これは、日記?
毎日ではないけれど、かなりまめに書いてある。
そして……夢の内容と酷似している。
カチリと私のなかで何かがはまる音がした。
あぁ、もう逃げられない。
あの夢は、私の未来なのだ。
未来で私は誰かに嵌められる。
誰にも信じられず、そのまま死んでいく。
私は悪女なのだ。
「ふふっ。」
私は思わず笑ってしまっていた。
どうせ私はもう死んでいるのだ。
この人生は言わばおまけ。スピンオフ。
ならば、全力で楽しんでやろうではないか。
悪役令嬢として、華々しく散ってやるわ。
全力でこの名を≪イライザ・アイスベルク≫という名を、世界に轟かせてやるわ!!
「世界よ!!!私の活躍を、せいぜいご覧なさい!」
余談だが、私のカッコいい決意はリナに聞かれてしまっていた。
あの人、足音たたないんだね。
覚えた。




