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夢を見ていた。

夢の中の私は、公爵令嬢だった。

それも、王太子の婚約者。

人当たりが良くて顔もいい彼に、多分私は惚れていた。

そんな彼に見合うよう、私はとても努力していた。

何て言ったって彼は希代の天才。

通常三つ持っていたら天才と言われている魔力属性を五つ持っていて、その上歴代最大級の魔力。

大胆かつ繊細な彼の魔法はとても美しかった。


そんなある日、一人の女の子が現れた。

彼女は平民出身なこともあり、私はよく彼女の事を気にかけていた。

苦言を呈すこともあったが、彼女とは概ね良好な関係を築けていたと思う。

誰とでもニコニコ話す彼女は、女の私から見ても非常に可愛らしかった。


周りからの「お似合いだね。」がもう自分には向けられなくなっていることに気づいた頃には遅かった。

希代の天才王太子と、光属性魔法を操る美少女。

平民からのシンデレラストーリー。

いつの間にか、彼女は『聖女』私は二人のなかを引き裂く『悪女』と呼ばれるようになった。

離れていく彼との距離に焦った。

どうにか取り替えそうと右往左往した。

荒れに荒れた。

もがき苦しんだ。

彼女に向けられた彼の笑顔を見たとき、私の中でなにかがフツと切れた。


事が起きたのは卒業パーティーの日。

彼女は階段から落ちた。

正確には私に()()()()()

幸い、彼女は怪我だけですんだが、私は彼女を殺そうとしたというこで婚約破棄。

修道院へ行く途中、賊のような集団に襲われそのまま……。


「イヤァァァァァァッッ!!」

自分の叫び声で飛び起きる。

そのまま自分の首をペタペタとさわる。

よかった、くっついてる。

妙にリアリティーのある夢だった。

まだ、ヒヤリとした金属が食い込む感覚が抜けない。

あんな死に方はいやだ。

幸い、現実での私はただのファンタジー小説が好きな高校生だ。

王太子と出会うことも、『聖女』を殺しかけることもない。

もちろん賊に首を飛ばされることも。

妙にリアルだったのも、似たような話の小説をよく読むからだろう。

きっとそうだ。

そう自分に言い聞かせるが、一度スピードを上げてしまった私の心臓はまだおさまりそうにない 。

餅でもつけそうだ。

「イライザ様。おはようございます。」

ギィッという音を立てて、メイドのリナが部屋に入ってきた。

……ん?リナ?なんで私は()()()()()()()()()()()()()()()

平凡な高校生である私がメイドを雇っているわけがない。

気が動転していて気がつかなかったが、そもそもここはどこだ?

「イライザ様?」

どうかなさいましたか? と私を心配するリナ。

そもそも、イライザって誰だ?

少しでも情報を得ようと私はフラフラと立ち上がり、ベッドから降りた。

部屋を見渡すと、鏡に映った自分と目が合う。

そこに映っていたのは黒い髪に切れ長の青い瞳。

さっきまで見ていた夢の中の公爵令嬢が映っていた。

突然、膨大な量の記憶……自分の物ではない、でも確かに自分の中にある、そんな記憶が頭に流れ込んできた。

頭の中がぐちゃぐちゃにされるに持ち悪さに思わず顔を歪めた瞬間、私の意識はプツリと切れた。

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