表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自分だけ揚げ物が楽しめる世界  作者: ミツメ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/83

狙撃

 ひどく怯えた表情だった。まるで敗北を受け入れているような――


 轟音に対し綜馬、ミケア、玖珂の三人は三者三様の対応を見せた。綜馬は感知を最大に、ミケアは弓を取る。玖珂は物陰に隠れるように腰を下げた。


「やつです。シュヴァリエです。」


「なんでそれが、」


「この一帯であんな音を立てていいのは奴だけなんです。」


 ドンッ!!と再び轟音が響く。何かを打ち付けるような、鈍い音。


「交戦中みたいです。5、6、最低でも6人。なかなかの手練れだと思います。」


 轟音の正体。そしてその原因が判明したところで、ミケアは綜馬の反応を確認する。今が好機なのでは。そう言いたげな表情だった。

 手練れの数名と共闘、それもうまくいけば急襲出来るかもしれない。こんな機会二度とないかもしれなかった。


「行こう。ミケア。玖珂さんはどうします?」


「どうして、。だめです。殺されます、無事では帰れません。」


「けど、今を逃すとこんな機会二度と。」


 玖珂は綜馬の言葉に肯定も否定もせず、色の抜けたような表情を見せるだけだった。



 そこにいたのは名前の通り騎士だった。[朔]に少し似ていて、灰色の鎧を装備している。それを囲む10近い人々。目を滾らせている。よく見ると所々怪我をして血を流している。


「どうするソーマ。」


「ミケアはいつでも射られるように準備しといて、」


 綜馬は[カンジ]を飛ばし、タイミングを見計らう。綜馬とミケアは少人数戦闘に慣れすぎた結果、大人数の戦いが苦手だった。連携がごちゃごちゃして、フレンドリーファイヤをしかねない。

 そのため、二人は補助に徹する。シュヴァリエを囲む者たちはそれなりの技量があるようにうかがえる。二人の補助があれば文字通り百人力。今が千載一遇の機会に思えて仕方なかった。


「ミケア、左肘、」「右腿」「右肩」


 綜馬はタイミングをはかってシュヴァリエの行動を制限していく。ミケアの射出は到底致命傷には及ばないが、その分衝撃が起こるように細工してある。魔力を込めた魔石を鏃にして、当たった瞬間に爆ぜる。その波を【音魔法】で増幅。


 結果、矢が当たるたびにシュヴァリエはその箇所の行動が一時不能に陥る。それによって生じる隙。それを見逃すほど弱いものはこの場にはいなかった。


「どっかに援軍がいるみてぇだ。さっさと終わらせるぞ!」


「あいよ!」


 リーダー格の男はチラッと姿を隠しているはずの綜馬の方に一瞥送った後、攻撃の勢いを強めるように指示する。両者とも見解は同じようだった。


 左脇腹、腰、右頬、右肩、左腕、左手、


 シュヴァリエが攻撃のモーションに入ることも許さない。腕を上げれば跳ね除けられ、一歩踏み込めば姿勢を崩される。完封だった。

「ミケア、首だ。これで終わる。」


 一瞬の間があった。戦局を変える事はなく、言われなければ気づかない程の間。しかし、これは歴戦の戦士であるミケアが作ったものという事に意味があった。

 ミケアが放った矢がシュヴァリエに当たる前に爆ぜた。


「ソーマ、もう一体出てきた、」ミケアからの報告は、綜馬が言葉失って発せなかった内容だった。一瞬の間に思考を巡らせる。その結果――


「ミケア、移動して。北側からの援護に切り替える。」そう伝えると綜馬自身もビルから降りた。


――――――――――――――――――――――――――――――


 男たちは猛っていた。これまでの不遇があっという間に拭えるのだと。力を得て、技を学び、戦いを知った。強者であることが絶対条件のこの世界でその理をなぞる様に、奪い、殺し、傷付けてきた。そして豊かさの渇望は肥大していく。今回も今までと同じ、利益を得るための狩り。

 いつもと違うのは獲物の大きさ。何者かによって公開された関東4区のエリアランキング。そこで一位に君臨していたもの。それがターゲットだった。

 大金を払って手に入れた使い切りの追尾魔道具。獲物を追ってやってきたは良かったものの、関東では危険区域に分類される場所にまで踏み込んでしまっていた。


 「ボス、これどうします。佐々木達を囮にするしか、」

始めは良かった。どこからか援護もあり、ネームドの狩りが成功する方向へ向かっていた。思ってもいないおまけだと喜んでいたのも束の間。今目の前にいるのはネームドが二体。逃げるか立ち向かうかその選択を迫られる状況になっていた。


「逃げたら勿体ないが、戦ってもどうなるか、」言う通り最近入ってきた佐々木を囮にするのが一番被害が少ないかもしれない。

 決断は早かった。


「よし、佐々木。お前は自分の仲間で時間稼ぎしてくれ。俺たちは例の魔道具を持ってくる。あれさえあればこんな奴ら一ころだ。」


「そんな、それって僕たち、」


「わかったか、佐々木?」


「はい。大丈夫です。柏木さんたちも気を付けて。」


「何言ってるんですか!佐々木さん!僕たちを囮にして逃げる気ですよ!」


「そんな真似するわけねぇじゃねぇか信じろ。」


「柏木さんもこう言ってますし、きっと大丈夫ですよ。」佐々木は落ち着かせるように小さく笑ってみせた。



「あぁ、もう終わりだ。」柏木たちを逃がした後、佐々木隊と呼ばれる新人組三人は前衛を交代しながら交戦を続けていた。


「また来ますよ、あの人たちなら。」


「そんなわけないじゃないですか!最後笑ってましたよ!あの人たち。」


「それでも来ますよ。だって、この装備あいつらのだから。」 


「え、」


「あいつら来る前にさっさと終わらせよっか。」


 佐々木は眼鏡を雑に取ると前衛へ下がるように指示を送る。

「俺がいく。」そう残して佐々木は飛び上がる。放たれた斬撃はシュヴァリエの片腕を抉り取った。

読んでいただきありがとうございます。


いいね、☆☆☆☆☆の評価頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ