シェルターの構造
文章データが全て無くなってしまい、試行錯誤しましたが戻ってくる事は無いようなので、書き直しました。遅れてすいません。
他作品も同じ感じなので順次更新します。
行き先のない二人にとってこの逃避行は実に空虚なものだった。形のない敵を常に意識しているような、ただただ警戒心ばかりが強くなって敵か、味方かと曖昧な存在を排除したがる。
綜馬は夜になるとふと考える。敵はどこにいるのかと。
堂島がいなければシェルターに協力しようとは思わなかった。シェルターでの日々があったから人を嫌いになったが、反対に人の良さも知った。それが無ければミケアは助けていなかったかもしれない。
綜馬は漠然と誰かの価値になりたかったのかもしれないと考えた。そして、それが力を持ってしまった者の責務なのかもしれないとも。
二人の逃避行はだらだらと続いた。
終わりを告げたのは一人の来訪者だった。
「それなりのダンジョンの周りはやっぱり人が多いね。」
「うん。ランカ達のところ帰る?」
「いや、それは最後にしよう。まだ一つも出来てないからさ。」
今日もいつも通り、魔石を集めて仮拠点へ帰る。人の多いダンジョンでは、ダンジョン内で滞在するのはかえって目立ってしまう。二人組という点でそもそも注目されてしまうのだから、それ以上に注目を集めてしまえば面倒になるのは当然の理と言えた。
「少しいいかな?」
綜馬とミケアは突然の呼びかけに跳ね飛んで反応する。
隠密も感知もそれなりのレベルでずっと発動させていた。つまり、この声の主はそれらを全てすり抜けて自分達に声を掛けている。
「あっ、そんなに警戒しないで、」
声の主は男だった。ちょうど陽が沈む頃。夕陽の眩しさが逆光となり男の容姿ははっきりと見えない。
「敵じゃないよ。私は。」
男は両手を上げるポーズを見せて、敵意の不在を表した。
「どうして、」
綜馬が質問を言い切る前に、
「聞きたいことは沢山あるだろうけど、まずは私の話を聞いて欲しい。」
男は綜馬の言葉を遮って自分の意思を伝えた。
「結論から言うと、君たち二人に協力して欲しいんだ。ランカーでありながら、戦いを嫌う君たち二人に。この世界を取り戻す戦いの招待をしに私はここにきた。」
綜馬もミケアも男の言葉に耳を疑ったが、それが嘘であるとはなぜか思わなかった。そして、男が自分達の敵ではないとも確信めいた何かを感じとった。
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冬弥とレオは戦っていた。彼らにとってこの世界の移り変わりなどどうでも良かった。自分たちの求める物のためならば何だって捨てる覚悟を持っていた。
マークは一つの信念の元に動いている。羽間から聞いた言葉を冬弥は反芻する。
シェルターを破壊し、この世界の理へ関与できる人間を絞る。そのために羽間はマークは800を解放した。
自分たちの世界が壊されたあの日、冬弥は堪え難い怒りを抱えていた。何もできなかった自分の不甲斐なさと、知っていたはずの理不尽に対して。
羽間が淡々と語るシェルター800壊滅の真実はどうにも許せなかったが、この世界の理である、何かを得るために何かを支払うというものに則っていたのだと、今なら理解できる。
失ってばかりの二人にとって、この世界の理は希望でしかなかった。全てが元に戻る。そう考えれば全ては少しの悲しみでしかない。
マークが正義の組織だなんてはなから思っていない。けれど、自分の立ちの活動がなければこの世界はより悪い方向へ進んでいたのではないか。
モンスターの少なくなった市街地を歩きながらふと考える。
モンスターをこの世界に産み落としていたのはシェルターだった。正しく言うならシステムと言えるが、世界の循環のために人の多い地域にモンスターを生み出し、殺し殺され、世界は巡る。
マークはその世界の循環を壊すために組織された。様々な思惑が一つの組織の中で渦巻いている。
復讐のため、野心のため、利益のため、
それぞれが等しくこの世界を憎んでいた。それでいて、この完成されたシステムの力を最大限に活かそうともがいていた。
命は惜しくなかった。冬弥は自分のせいで失った命を全て取り返したかった。そうしないと自分が自分を許せなかった。レオと二人。まずはじめはレオの仲間達の命。次に堂島、天谷、シェルターのみんな。命を取り戻していけばあの平穏の日々が帰ってくると信じていた。
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彼らは『ヨハネ』と名乗った。混沌の世を導く存在だと。
私たちは君たちの求めるものを持っている。そう言って渡されたものが件のアイテム『宝珠の欠片』だった。パッと見ガラスの欠片。しかし、それが力を持つ何かであることはすぐに理解できた。
ヨハネは頭を深々と下げる。かつての災厄を従えた存在。あなたに力を貸してほしいと。探していたかの方が綜馬であると彼らは深々と頭を下げた。
読んでいただきありがとうございます。
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