第53話 2種類の光
トリスタン皇国 ドルフィン家領内の町の宿屋
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猿の手という話を聞いた事がある
願いを叶えてくれる代わりにその反動がきて不幸になってしまうという話
私の回復魔法はそれと同じ?
梨絵 :「私の回復魔法って呪われた力なの?」
伯爵令嬢:「あはははは 面白い事考えるわね貴方
それとも平民はそういう考えが普通なのかしら?」
梨絵 :「だって私の回復魔法で誰かが不幸になるなんて」
伯爵令嬢:「素晴らしい力じゃない!
私なんか羨ましくてしょうがないわよ!」
梨絵 :「なんで?」
伯爵令嬢:「考え方の違い
物の見方の違いね」
梨絵 :「それって」
伯爵令嬢:「この世界には悪い人間 悪が存在するの
この世界には人を襲う魔物が存在するの
それは御存知?」
梨絵 :「それは知っているけど」
伯爵令嬢:「こういう考えはできないの?
貴方は最高の攻撃魔法を撃てる 貴方は最高の回復魔法を使える
ただ 使う時は両方を同時に使う必要がある
そういう制限が掛かっているだけ」
梨絵 :「それって」
伯爵令嬢:「素晴らしい力じゃない 正しく聖女のみが使える力じゃない
教会で働く者はね 魔物狩りに同行したがるの
魔物の攻撃で傷ついた人を回復してその反動を
近くの魔物に押し付けたりできるからね
要は使い方
力を理解して使い方を理解する
それだけで良かったのに」
梨絵 :「そうか。。。呪われている訳ではないのか」
伯爵令嬢:「はーー でも貴方よけいな事をしてくれちゃったのよね」
梨絵 :「え?」
伯爵令嬢:「本当は貴方が自分で気付くまで待つつもりでいたけど
何で教えてあげてるかまだ気づいてないの?」
梨絵 :「。。。余計な事をした。。。いったい?」
伯爵令嬢:「皇子様との婚約 おめでとう
ただ そこで貴方 ほんとーーーーに要らない事をしたわよね?」
梨絵 :「えーーーと」
伯爵令嬢:「皇子様との婚約発表 その時」
梨絵 :「。。。あ!!
祝福の回復魔法」
伯爵令嬢:「そう 国民は喜んでいたわよね
城下町を包み込んだ綺麗な光
でも 貴方の力は強すぎた
その反動がきたらどうなるか お分かり?」
梨絵 :「。。。。。。」
伯爵令嬢:「それを防ごうと騎士団が戦争を起こそうにも
貴方の演説で止めてしまった
それを防ごうと大規模な魔物討伐も貴方の演説で止めてしまった
なら確実に別の形で反動が来る
それが分からない訳じゃないわよね?
騎士団が戦争をして魂を捧げるのを防いだ
魔物討伐で魂を捧げるのを防いだ
ならトリスタン皇国に何が起きるのか?
その反動を貴方の命で償おうとしたがレオンハルトが
貴方を逃がしてしまった
それなら起きるのは」
伯爵令嬢がセンスを開いてひらひら
‟バシッ” と閉じてドアを指差す
‟ドンドンドン” と叩かれるドア
‟ガチャッ” とドアが開けられる
伝令 :「大変です!!
シャンデン家令嬢から伯爵令嬢へ緊急の伝令です!!
陛下が崩御です
陛下が病で倒られました」
梨絵 :「え?。。。」
そして聖女は理解したのだろう
反動は陛下が死にトリスタン皇国が崩れるという事を
伯爵令嬢:「何をなさっているのです 無礼者!!!」
伝令 :「!!!」
伯爵令嬢:「ノックをして返事をする前に開ける無能がこんな所にいるとは」
伝令 :「。。。」
伯爵令嬢:「女同士の話し合いの最中です
とっとと出ていきなさい!!」
伝令 :「あ!。。。失礼いたしました」
ドアが凄い勢いで閉められる
伯爵令嬢:「さて 貴方はどうするおつもり?」
梨絵 :「どうするって?」
伯爵令嬢:「貴方を殺そうとした皇子と結婚して無くなる国の再興を頑張るとか?」
梨絵 :「当然でしょ! 私の回復魔法のせいで起きた事だから」
伯爵令嬢:「あら。。。あなた残念な御方なのね。。。お可哀想に。。。」
梨絵 :「どういう事よ」
伯爵令嬢:「貴方の世界ではどうか知りませんが
この世界では50歳まで生きれば充分とされているの
あなた すでに15~6でしょ」
梨絵 :「17歳よ」
伯爵令嬢:「だったら残りの人生をこの国の為捧げるの?」
梨絵 :「。。。」
伯爵令嬢:「元の世界に帰るのは諦めるの?」
梨絵 :「。。。」
伯爵令嬢:「私だったら怒り出すけどね
だって騙されたような物じゃない
何も知らないで 勝手に莫大な借金を押し付けられたような物」
梨絵 :「。。。」
伯爵令嬢:「最後の引き金を引いたのは貴方かもしれない
でも全ての責任は貴方一人ではないの
そんな事すら分からないなんて。。。お可哀想に。。。」
梨絵 :「でも だったら」
伯爵令嬢:「逃げればいいじゃない
別の国にいって生きたいように生きればいいじゃない
それとも貴方 聖女といわれても所詮 平民の女
誰かに何かを言われないと生きていけないの?」
梨絵 :「そんな事は。。。でも逃げるっていったって」
伯爵令嬢:「貴方 本当におつむが弱いのね
ここに私がいるじゃない」
梨絵 :「へ?」
伯爵令嬢:「平民を守るのは貴族の務め
私があなたに手を差し出してあげても良くてよ」
窓から差し込む冷たい月光
そして部屋の入口にある暖かみのあるランプ
その2種類の光に照らされながら
ドルフィン家の令嬢は煌びやかに笑った
全5章の内の第1章はこれで終了です
第2章以降は カクヨム 及び アルファポリスで投稿中です




