時戻りの逆転人生で、初恋のやり直しを -14-
「アケーシャ、とても綺麗よ」
「ミモザも、とても可愛いわ」
アケーシャとミモザは卒業パーティーに向かうため、ヴァンガード公爵邸で準備をしていた。
「「ありがとうございます、お母様」」
アケーシャとミモザは声を揃えて、アイリーンとカミーユ、そしてハンナに向かって礼を言った。
卒業パーティーでアケーシャが着るドレスはダニエルが用意してくれたもの。ミモザのドレスももちろんエイデンとお揃いで仕立ててある。
「ミモザとお揃いだなんて、本当に嬉しい!」
「私もアケーシャとお揃いのリボンを卒業パーティーで付けられるなんて、夢にも思わなかったわ」
それぞれのドレスに合うように、同じ花の刺繍がモチーフとなっている髪飾り用のリボンを、母たちが二人にお揃いで用意してくれた。
自分たちのことを思い、一針一針思いを込めて刺繍をしたリボンを用意してくれたことが、何よりも嬉しかった。
「アケーシャの名前の由来はアカシアのお花なのよ。ふふ、ハンナ先生からミモザちゃんの名前の由来を聞いた時、二人は同じお花なのねって盛り上がったの」
「同じお花?」
「ええ、アカシアの花は、種類や地域によってはミモザとも呼ばれるみたいなのよ」
「私たち、同じお花なのね」
「何か、運命みたいだね」
アイリーンがその由来について、恥ずかしそうに話してくれるのは、ミモザが名付けで相談した時に聞かせてもらえる未来のお話。
******
そして卒業パーティーが始まった。もちろん、アケーシャのことはダニエルが、ミモザのことはエイデンがエスコートしてくれている。
卒業パーティーが終わりに近づいてきた頃、思い出したようにミモザが笑いはじめた。
「婚約破棄のあの宣言が懐かしいわ。本当に驚いたもの」
「確かに。わたしは婚約解消の宣言も度肝を抜かれましたよ。わたし、もうすでにアケーシャ様に婚約解消の了承を得ているのだと思ってましたから。それなのに、普通に考えて卒業パーティーでやりますか!?」
少しだけダニエルに対するもやもやを晴らしたい気持ちが二人を襲う。
「よし! 私も殿下に宣言してもらうわ!!」
「えっ、わたし婚約破棄されたら嫌ですよ!?」
「ふふ、逆よ! 幸せを宣言してもらうの。みんなの前で堂々とね。それはそれで勇気のいることだもの」
ミモザは、首を傾げるアケーシャと共に、ダニエルの前に立った。
「王太子殿下!」
「ん? どうしたんだ、ミモザ嬢が珍しいな?」
突然ミモザが大きな声を出したことに驚いたのか、会場全体が静まり返る。そしてみんなの視線がミモザたちに集中する。
心臓が高鳴る中、覚悟を決めたミモザがダニエルに問い質す。
「アケーシャと、絶対に幸せになれますか?」
答えを待つ間も心臓が早鐘を打ち続ける。ダニエルは、ふっと笑って、当たり前のように告げた。
「もちろんだ。アケーシャとでなければ、絶対に幸せになれない」
会場中が祝福の歓声と共に湧き上がった。
ダニエルの金色の瞳はしっかりとミモザを映し出している。その瞬間、ミモザの頬に涙が伝った。
【あなたとは、絶対に幸せになれない】
それは、ずっと記憶に引っかかっていた言葉だったから。ルツィフェが心を癒してくれても、記憶にはずっと残っていたから。
幸せな未来を夢見ていたあの時に言って欲しかった言葉を、今、自分の瞳をまっすぐに見つめ言ってくれた。
ようやくその言葉の呪いから解き放たれたようで、涙が止まらなくなった。
「えぇ!! 殿下!! どうして俺の大切なミモザを泣かせてるんですか。絶対に許しませんからね!」
周囲が祝福の歓声で盛り上がっている中、エイデンが声を荒げる。
「お、俺は何もしてないぞ。俺は今、アケーシャを幸せにすると誓っただけだ」
「ダニエル様!! ミモザのことを泣かせるなんて信じられない!! もう絶対に膝枕なんてしてあげませんから!!」
「姉様は泣いてないじゃないですか。泣いてるのはミモザです!! だけど、姉様、一生殿下に膝枕なんてしてはだめですよ!!」
「アケーシャ、そんなこと言わないでくれっ、頼む! ミモザ嬢からも何か言ってやってくれ。俺はミモザ嬢を泣かせるようなことは言ってないよな?」
「……ふふっ」
ちょっとだけ、ざまあみろ、と思ってしまったミモザがいた。
(もう、王妃にならないんだから、少しくらい邪な心を持ってもいいわよね)
ダニエルが延々とエイデンに怒られる中、アケーシャとミモザは二人だけでこっそりとバルコニーに出た。
空を見上げると、綺麗な星が輝いていた。
「ああ、スッキリした!」
「もうミモザったら、突然何を言い出すのかと思ったわ」
「だって、アケーシャには絶対に幸せになってほしいんだもの。みんなが祝福してくれてるわ、本当におめでとう」
「ありがとう。でも、わたしはミモザが祝福してくれるのが一番嬉しいんですからね!」
目に見えて、祝福されていることが分かり、アケーシャも涙を滲ませる。
一度目の人生は祝福なんてされていないことが分かりきっていた。二度目の人生は祝福されていると勘違いしていた。
涙をこぼさないように空を見上げた。
「あ! 流れ星!!」
「まあ、本当ね!」
瞳を閉じてアケーシャとミモザは願う。
「アケーシャは何を願ったの?」
「もちろん、みんなが幸せになりますように!」
「私も。……ルツィフェ様はもう一つのお願い事は何だったのかしら?」
「愛の神様だから、きっと愛についてですよ!」
「ふふ、きっとそうね」
二人はパーティー会場の中にいる彼の元へと、仲良く歩いて向かっていった。
『この世界がたくさんの幸せな愛で溢れますように』
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