ミモザの心苦しい恋と時戻り -10-
「ミモザ様!! どういうことですか! 王太子殿下と知り合いだったなんて!?」
一部始終を隠れて見ていたクラスメイトたちが、ミモザを取り囲んだ。
(見られてたんだ……もう、みんなとお友達になれないかも、今度はせっかく仲良くなれると思ったのに……)
もう終わりだと思った。また気を使われて、最悪嫌がらせを受けてしまうかもしれないと。
(でも、そんなの嫌だ。みんなにはわたしは王太子様と関係ないって、はっきりと宣言しなくちゃ!)
「知り合いというか、きっと、誰かと間違ってるんだと思います。それに、ハメを外したいだけなのかもしれないじゃないですか! 火遊び、みたいな」
えへへ、と笑って誤魔化すも、本気なのは十分に分かっている。前の人生と同じだと。
でも、どうにか引き返さないといけない。そうしないと、また全てを奪ってしまう。
「ああ〜、確かにアケーシャ様は真面目そうだから、真逆なミモザ様を……」
「えっ?」
一瞬何を言われてるの、分からなかった。
「あ、悪い意味じゃないですよ、ミモザ様はとっても可愛い方です。そうだわ、この際、王太子殿下の、その火遊びのお相手になるっていうのはどうですか?」
「確かに! あれだけお美しい王太子殿下になら、私だったら学生時代の火遊びでも本望だわ」
「ミモザ様、青春の思い出に。滅多にないことですから」
クラスメイトたちが口々に言い始めた言葉に、ミモザは驚きを隠せない。
「え!? 何言ってるんですか!! だめです。絶対に、それだけはだめですから!!」
「ふふ、ミモザ様って意外とお堅いんですね。」
(ちょっと、本当に何なの? どうしてみんなは応援してくれるの? 今度の人生は、前と違うの?)
ミモザのいるD組は、主に下級貴族や商人などの成金貴族の子息令嬢がほとんどだった。王族と関わるなんて夢のまた夢の話。
そこで降って湧いてきた、王太子からの“一方的な”ミモザへのアプローチに、クラスメイトの主に女生徒たちが、一気に盛り上がってしまった。
だけど、それはクラスメイトだけ。違うクラスの生徒からの虐めや嫌がらせは、始まってしまった。
だけど……
(あれ? そういえば、最近ぱたりと嫌がらせがなくなったな。どうして? 前はあんなに嫌がらせされたのに? それに、アケーシャ様の姿を全く見ない)
A組は、B、C、D組とは教室が入っている棟自体が違う。だけど、前の人生では、中庭や共用施設、移動中などに会うこともあった。
(絶対におかしい……)
不思議に思い、アケーシャと前の人生で虐めてきた生徒たちのことを、注意深く見てみることにした。
すると、アケーシャが、わざとミモザのことを避けているように感じた。
それに、アケーシャの周りにいたはずの沢山の女生徒たちがいない。主にその女生徒たちが、ミモザのことを虐めていたのだけど。
「アケーシャ様が、いない……」
「え? ミモザ様、突然どうしたんですか?」
「アケーシャ様と全くお会いできないんです!! わたし、一生懸命お探ししているのに」
ミモザの言葉に、クラスメイトは目が点になる。そして、一人が納得したように告げた。
「あ、もしかして、ミモザ様って、王太子殿下だけでなく、王太子殿下とアケーシャ様の美男美女カップルに憧れてたんですか?」
「えっ……」
その言葉に、胸がちくりと傷んだ。
「それ、分かります! 私もとってもお似合いだと思ってましたもの。だから、王太子殿下からのお誘いも渋っていたんですね」
「でも、アケーシャ様って、他に男がいるんでしょ?」
「一緒に図書室でお勉強してる方? あの方は弟みたいですよ? あの方もとっても格好良いですよね。私はあの方の方が、実は好みです」
「それに、王太子殿下にとても冷たいって聞いたわよ。それに、クラスメイトにも冷たく叱責していたとか」
「アケーシャ様はそんな人じゃありません!!」
(もしかして、アケーシャ様は、わたしのために怒ってくれてるの? もしかして、アケーシャ様も……)
未来を知っている。そう思わずにはいられなかった。
「ミモザ様、冗談ですよ。そうなのね、ミモザ様は、王太子殿下とアケーシャ様のお二人に憧れていたんですね。でも、好きになってしまったら、仕方がないですよ」
「えっ!? 好き、だなんて、そんな……」
「私たちはみんな、もう気付いてますよ」
「えっ……」
「だって、ミモザ様ったら、王太子殿下のことをよく目で追ってるし、お二人でお話しされている時、とても嬉しそうなんですもの」
クラスメイトはみな微笑んでくれていた。好きになってもいい、と言って、応援してくれていることに、少しだけ嬉しくなってしまった。
(もしかしたら、わたしが王太子様を好きなことを知って、今度はわたしを応援してくれてるってこと? でもそんなの、わたしに都合が良すぎるよね? それに、アケーシャ様の何の得にもならないじゃない。じゃあ、どうして?)
前の人生では、アケーシャの全てを奪ったのに。
しかし、話しかけるどころか、姿さえも殆ど見かけることができなかった。
運良く姿を見かけた時には、アケーシャはエイデンと一緒にいた。
前の人生で唯一、アケーシャ自身がミモザに関わってきた刺繍のハンカチについても、全くの無反応だった。




