稚拙な策
目が覚めたオルファンの周りには押し潰された魔物達の死体がいくつもあった。
星降剣が始末してくれたようだ。星降剣は仕事は終わったとばかりに眠りについてしまった。
後はどうするか?
魔力はまだ半分も回復していないようだ。数値で見えない以上、感覚的なものでしかない。
敵はどれだけ残っている?5万くらいか?
リッチのメラウノスに対峙した後だと5万と聞いても何とかなりそうだ。メラウノスの前に立つくらいなら5万の敵の方が簡単だ。
敵が来るまでは座って魔力の回復に努める事にした。
待つ事1日。平井信正から湿原の出口で敵を削る事を献策される。敵の動きが鈍る場所で一撃。この平原で一撃。そして後方の陣で決戦か。オルファン1人での突撃が見透かれたかのように皆の配置が決められていく。
まずは湿原の出口でハイエルフ、エルフ、ダークエルフ達とオルファンで魔法による遠距離攻撃を仕掛ける。一撃離脱。欲をかけば被害を出す。
次はこの平原での攻撃。
ここでは長沼三徳、湯浅新六、平井信正の3人が指揮を取り、恐竜人、竜人らで翻弄する。
最後は陣地で決戦だ。
だが知っている。長沼、湯浅、平井の3人が平原で死ぬつもりだという事を。ドワーフ達が盾になってでもオルファンを守るつもりだという事を。
打ち合わせが終わり、野営の準備に入る。
その隙に湿原へ向かう。バレないようにわざわざ妖刀トキワタリまで使用した。
守りたいのは国じゃない。アイツらだ。
合流した蟲人達から砦の移動離宮は回収した。
自分の国土に知らない砦があったらどうする?
無視はできないはずだ。
なら、すでに兵器などが利用できない砦を有効利用させてもらう。
全力で湿原を駆け抜ける。いや、湿原のコスタ連邦入り口あたりで馬の嘶きが聞こえた。砦を設置して鉄門を内部からしっかりと閉じる。内部には魔法陣を大量に設置する。弱い魔物だらけだが、戦いは数でもあるのだ。
準備が終わらないうちに鉄門を破壊しようとする音が聞こえてきた。魔法陣の発動まではもう少し。
時間を稼ぐ必要がある。
砦の上層から声を発する。
「ヤマト王国国王オルファンだ!!雷で帰らぬとは見事!!褒美に死を贈ろう。すまない。死んでくれ!」
挑発は充分だったようだ。投石機の準備を始めている。矢も降り注ぎ始めた。砦内で魔法陣が次々と発動している。さぁ、死んでくれ。
ヤマト王国国王オルファンが現れた。馬鹿だ。奴を討てばコスタ連邦の勝利だ。破城槌や投石機も投入して砦を攻める。オルファンはすぐに妖刀トキワタリを使って砦から脱出をする。
空間を移動した後に目眩に襲われる。どうやらトキワタリに血を吸われたようだ。急いでポーションを飲み干す。コスタ連邦の裏を取れた。
残りの魔法陣を設置していく。背後からの奇襲になるはずだ。
砦の壁が砕け、そこから魔物達が溢れ出す。それに混乱するような傭兵達ではないが、数の多い魔物の相手に集中している。その背後にも魔物達が現れた。だが、コスタ連邦軍の数が多いためにいくつかの部隊だけで対処されてしまう。
・・・。完全にあてが外れた。少しは混乱してくれるはずだったんだが。
まぁ、敵の足を止める事には成功したのだ。
魔法を使わせてもらおう。
ファイヤーアロー?何故、矢が1本だけなのか。
矢とは雨のように降り注いでこそ。
イメージはある。イメージを固めるための魔法名も決めてある。
「赤壁の大火」
100を超えるファイヤーアローがコスタ連邦軍に落ちる。失敗だ。理想形は万を超す矢だ。まだまだだ。だが、100を超えるファイヤーアローに襲われたコスタ連邦軍は堪らない。炎に飲み込まれる部隊が続出する。
さらに、ファイヤーアローを使える者が100人以上いると考えた傭兵団が突撃をしてきた。魔法を使われる前に魔法使いを殺す。考えは間違っていない。
「何!?1人だと!?」
「隠れているはずだ。伏兵に気をつけろ!!」
「こいつが王だ!斬れ!手柄だ!」
手頃そうな敵を4、5人斬る。
「手強いぞ!集団でかかれ!」
少し怯えてもらおう。
「英雄、竜殺しと言われたオルファンにこの程度で勝てるつもりか?先程の火矢では足りないか?」
敵が逃げてくれれば楽だ。虚名であろうと使わせてもらおう。
「雷、火をやったのだ。次は剣か?それとも槍か?
このオルファン、万の軍勢に勝ると自負しているのだが。」
そう言って敵の槍を切断する。さぁ、下がれ。逃げろ!!
狙いは富士川の戦いの再現。水音に驚いた軍勢が逃げ出した戦いだ。
「下がるな!!」
どうやら失敗かな?




