砦と湯浅
「何だ、あれは?」
険しい山を登ってきたポッド王国の将兵は困惑する。こんな所に砦があるはず等ないのだ。
「何をしている。俺様の前にあるのだ。敵なら倒せ。」
後方からバーバード国王が命じる。
ポッド王国兵が逆茂木に取り付いて取り除こうとする。さらには逆茂木を乗り越えて、土壁や堀に向かう兵達もいる。そこに2本の火矢が飛ぶ。黒煙があがり火が広がる。油が逆茂木にかけてあったのだ。
巻き込まれた兵士が火に包まれて転がる。煙りに包まれて混乱する兵士達もいる。
「魔術師どもに何とかさせろ。」
国王の命令に従って宮廷魔術師達が前に出る。
水魔法を使って火を消そうとするが、燃えているのは木ではなく油である。水では消えない。
「チッ。無能が!」
国王のイライラがつのる。
逆茂木の火が消えるまでポッド王国は進軍を停止する事になった。
その頃オルファンはウィンドドラゴンに運ばれてポッド王国内に進入していた。そしてポッド王国の都はあっと言う間にオルファンに降伏していた。
人々が活動している日中にドラゴンとともに現れたのだ。
「私の名前はオルファン!!義によりてライ王国にお味方いたす!!バーバード国王に味方する者は出てこい。相手になろう!」
オルファンと名乗る者はドラゴンの背にいる。
そしてバーバード国王は怨みを買いすぎていた。
降伏が伝えられて通された謁見の間で見たものは縄で縛られた親子。
「コイツらはバーバードの妻と子供達です。オルファン様のために捕らえておきました!!」
守備のために残された兵士達がバーバードの家族を捕らえる。皮肉なものである。
「バーバードに味方する家臣はいないのか?」
バーバードに付いて甘い汁を吸っていた者は、いつの間にか城から消えていたという。恐らくは脱出路があるのだろう。
都を島津忠良、武田信廉、平井信正、木戸弥左衛門、百田藤兵衛、上泉泰綱に任せる。都の掌握や貴族や豪族の対応、人質との面会なんてしていられない。
このポッド王国は3つの都市からなる。王都、闘争都市、商業都市。この3都市の外には豪族が治める村が点在している。
商業都市はわかる。だが闘争都市とは何だ。
力こそ全てのバーバード国王が作った都市であり、7つもの闘技場がある。ここで活躍すれば即座に軍にスカウトされる。さらには大会では国から莫大な賞金も貰える。そして観戦に訪れる客が金を使う事で都市が発展する。圧政により味方の少ない国内で、圧倒的にバーバード国王の支持者が多い都市なのだ。
商業都市もあっさりと降伏した。
上杉景虎と団忠正に商業都市を任せる。
これだけやれば遠征中のポッド王国軍にも情報が伝わるはずだ。バーバード国王は味方が多い闘争都市を目指すだろう。それまでに闘争都市を攻め落とす。
磯野員昌と岩間小熊を引き連れて闘争都市に降り立つ。
「この都市では強者こそが正しいのだろう?ならば
掛かってこい!!我らがこの都市を貰う!!」
バーバード国王の支持者に潜伏されると面倒だ。
正面から心をへし折る。
「進め、進め!!」
兵士の犠牲を気にせずに木戸や木柵に押し寄せる。
土壁や堀により兵士達は身動きが取れていない。
「放て!!」
長沼三徳の号により防衛兵器が作動する。
魔石の力を吸い上げた兵器が無数の矢を降らせる。
それによって多数の死傷者を出すが逃げ道がない。
犠牲者は魔石の魔力が尽きるまで出続ける事になった。
夜になりバーバード国王は不機嫌を隠しもしない。
逆茂木の火の鎮火に1日かけた。
さらに今日1日で砦を落とせなかった。
無数の矢が降り注いだ後にもファイヤーボールが幾つも放たれていた。ああいった兵器があるのは知っていた。だが使い捨てのくせに馬鹿高いのだ。
ポッド王国でも気安く買えるものではなかった。
「明日には落とせ。」
それだけを命じてバーバード国王は就寝する。
闇の中で木戸から出撃する者がいた。
湯浅新六。リアル戦国無双をした人物である。
ただ1人でポッド王国軍の宿営地に近付いていく。
「あぁ、お疲れ様。」
見張りにそう声をかけて槍を突く。
「長沼のご家老様も人使いが荒いのぉ。」
何でもないかのように歩を進めていく。
皆が寝ているのだろう。すれ違う兵を殺しても気付く者がいない。
兵糧を纏めて置いて、見張りが少ない事にも驚いた。見張りの兵も問題にならない。
「こんなもんかのぅ。」
兵糧やテントに次々と火をかける。
バーバード国王が気付いた時には宿営地は火の海であった。魔術師達が必死に鎮火をしている。
「落ち着け!」
そう言って走り回る兵を斬り捨てる。
将兵が恐怖で統率される。
「何があったのか報告しろ!!皆は鎮火させろ!」
「ほぃ!」
軽い掛け声が聞こえたと思ったら光が走った。
ギギッ。
金属鎧が悲鳴をあげ、脇腹が抉られる。
「陛下!!」
闘争都市から引き抜いた者達が護衛に駆け寄る。
「う~ん。仕留めたと思ったんじゃが。」
槍を片手に頭をボリボリとかいている。
とても手練れには見えない。
「貴様、何者だ!!」
護衛が問う。
「あん?湯浅新六と言ってもわからんじゃろ。斎藤の殿様に貰った有難い名前なんじゃが。」
「殺せ!!」
バーバード国王が叫ぶ。
護衛に付いた者が飛び掛かる。
光が3つ。
3人が喉を突かれて死んだ。
「戦場を知らんのか?最近の若いのはなっとらんなぁ。」
護衛達は動けない。
湯浅新六が踏み込み、護衛達を突いて回る。
残る護衛は3人。その後ろにはバーバード国王。
「つまらん。カカシしかおらん。」
そう言って背を向けてスタスタと歩き出す湯浅新六。
「うおぉぉ!!」
護衛が後ろから大剣で斬りかかる。
「奇襲で声を出してどうするんじゃ。」
呆れ返った声。
護衛は胴に穴を空けられて死ぬ。
湯浅を恐れて兵士達は道を開ける。
手を出せる者は誰もいなかった。
その夜、バーバード国王は多いに荒れた。




