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出奔

翌日には現れた奴隷達を幻影の館2号館、3号館に押し込む。

今更ながら神ラインショッピングで買うものを間違えた。「ハイヒューマンの核」「10歳若返り」など自身を強くする物を買えば良かった。

昨日も寄付したばかりなのだ。今日も寄付するのは不自然すぎる。

別の街で寄付するにも日数は足りない。

今回は泣く泣く諦める。

こうしてオルファンのウルトラスーパーセールは終了した。


王都内では神殿関係者が率先して瓦礫を片付けては死者を発見して埋葬している。

この事は予想外の効果を生んだ。

神殿への敵対を恐れて、他勢力が王都へ進軍する事が出来なくなっていたのだ。

神殿のミカサ王国への加担ではないかとの抗議に対し、「死者を弔って欲しいという声に応えた行動であり、神殿はどこかの勢力に加担しない。埋葬が終われば王都を離れる。」との声明を出している。

神殿上層部への寄付もあり、神殿関係者が王都で活動を行うのは3ヶ月だけとの期限も設けられた。


王都周辺の貴族達は王都を奪還したシャーロット第1王女へと靡いた。大きな力を持つ貴族はおらず、正に風見鶏である。毎日のようにシャーロット王女の元を訪れてご機嫌を伺う。

また、クロウ第1王子に付いた貴族達からは復興を待つようにと邪魔が入る。王女の主導で復興が行われれば王女の側にいる者の手柄になってしまう。また、復興には莫大な金が動く。その利権や賄賂にありつけない事は赦し難い。

クロウ王子についた貴族達の仕事はシャーロット王女の邪魔をする事になりつつあった。


「困りましたわ。」

最近は会う度にこう言われている。

解らなくはないが、溜め息ばかりだ。

北のホワイトリリー王国、ザックブルグ山岳帝国、王都北東のバラン公爵領、王都南のプリンバイン大公領に備えるためにも兵が必要なのだ。

だが、シャーロット王女がかき集めた1000の兵士は王都にはいない。

「王女が兵を集めるのはクロウ王子と戦うため。そうでないならアテナイと戦うクロウ王子に食糧と兵士を差し出せるはず。」

そんな理由でオルファンが集めた食糧と共に兵士を連れて行ったのだ。

「シャーロット王女はクロウ王子を討って王になるつもりだ。」

そんな噂は国中に流れている。



「シャーロット殿下が謀反をするとの噂にクロウ殿下は心を痛めております。ここはシャーロット殿下が王都を離れるしかありますまい。」

クロウ王子からの詰問使がわずか数日で訪れた。

正式な使者ではあるが、クロウ王子は知らない事だ。目的はシャーロット王女への牽制。

実際にシャーロット王女が王都から退去する事などありえない。


だが、たまたま側で聞いていた男がいた。

護衛と言う名目でいたオルファンである。

3人の王女の心労は見ていた。約束の半年で見捨てるつもりであった。だが、これが貴族か。

これが兄から妹への仕打ちか。


「使者殿。クロウ殿下にお伝えください。

王都退去の件、了承しましたと。」

「オルファン様?」

シャーロット王女は何が始まったのか理解していない。

「3人の王女殿下は、このオルファンが責任を持って国外にお連れしましょう。」

慌てるのは使者達だ。

実際に王都を退去されては困る。

シャーロット王女も焦る。

だが、

「このままではクロウ殿下はシャーロット殿下を殺さねばならないでしょう。その証しが詰問使。

兄弟間で行う事ではない。クロウ殿下がシャーロット殿下に不信を持っているのです。

血を見る前に国を出ましょう。」

「待たれよ!シャーロット殿下が王都を出れば、この王都はどうなる?」

「おかしな事を言われる。使者殿が王都を出ろと言われたのですよ?」

無言になった使者達を返す。


「今夜、王都を出ましょう。刺客が送られてからでは遅いです。」

クロウ王子派の邪魔は今まであった。刺客と聞いて思い当たる事があったのだろう。頷いてくれた。

すぐに神殿関係者に事情を説明する。

神殿関係者達もある程度埋葬をしたらすぐに逃げる事で話がついた。住民達へも説明する。

「クロウ王子は王女様が王様になると疑っている。

このまま王都にいたら王都が戦場になる。だから、王女様を連れて逃げる。」

様々な声が聞こえる。だが、その内容を聞く勇気は無かった。

最後まで助けられなくて済まない。


夜になり、王都の外に逃亡する者達が集まった。

3人の王女達以外は幻影の館3号館に入ってもらう。そのために3号館の住人には2号館に移ってもらっている。


ここからだ。ここからが心配だ。

1つの封印石を取り出す。「ウィンドドラゴン」。

問題がなければ現れてオルファンに従ってくれるはずだ。だが、従ってくれなかった場合は戦う事になる。戦う事はないと解っていても、戦うかもと心配してしまう。ドラゴンとはそれ程の存在だ。


封印石を砕く。力と魔力が吹き出し、形を成していく。デカイ。やはり圧倒的な存在。

ウィンドドラゴン。

「呼び出したのはアナタですか?」

意外な声に驚く。穏やかな女性の声。

「ええ。私です。これから私達を乗せて空を翔んでもらいたい。」

「いいでしょう。アナタには従いましょう。」

成功したようだ。

王女3人とオルファン、中牧花を乗せてウィンドドラゴンは空を翔ぶ。

行き先は西である。

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