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逃避

バラン公爵は表面には出さないが苛立っていた。

まずは謀叛を起こした日に限って、国王が執務室に居なかった事。これにより国王の身柄の確保に失敗した。そのせいで国王と騎士団の合流を許し、未だに頑強な抵抗を受けている。


次に王族の確保。これは王族達が秘密の抜け道を使用した事により失敗した。また、たまたま城にきていた国王の叔父グリューワイル大公が兵を纏めて組織だった抵抗を指揮している。彼の元には第4王子も合流したため士気も高まっている。


そして何より貴族の子女を人質に出来なかった事が大きい。普段なら茶会をしているはずなのに、何故か王都にいない。普段王都から出ないくせに「視察」とは何だ!!王都にいたのは男爵級以下の夫人や子供など。子爵級でもわずか数家しかいなかった。人質としてはあまり意味がない。だか、大貴族の身内を探しているうちに、その男爵級の身内にも逃げられた。

人質を取れなかったために、他の貴族達の動きを牽制できない。無理矢理仲間に引き込む事もできていない。これにより戦略事態を大きく変える必要が生じていた。

「思い通りにはいかぬか。ままならぬものよのぉ。」


とはいえ、貴族達は動けないでいた。自分の領地と隣接する貴族が王国軍側なのか、バラン公爵軍側なのかわからないのだ。どちら側と宣言する貴族がいても、それが本当だとは限らない。

互いの疑心暗鬼により戦闘は王都周辺に絞られようとしていた。



オルファンが交戦した場所は王都からは馬車で3日、馬を掛けさせれば1日の距離である。そんな場所で交戦した以上バラン公爵が追撃の兵を出すのは明白であった。

「我等が時を稼ぎます。その間にお逃げくだされ。」

誰がオルファンを護り、誰が殿(しんがり)となるか。侍達だけで話し合われる。そこはオルファンに口は挟ませない。オルファンに意見を言わせれば全員で逃げると言うのが解っていたからだ。

背を見せた軍は脆い。侍達はそれを理解していた。

話し合いは続いている。

だが、オルファンにも考えがあった。

話を聞こうとしない侍達とは別に策を練っていた。



王城はすでに9割がバラン公爵の手に落ち、残すは王族居住区、謁見の間、騎士団詰所だけである。

その中で謁見の間を守るグリューワイル大公の指揮は老練であった。そのために『拳鬼カクサン』を謁見の間攻めにあてる事になった。


また、城門を守る事になったバラン公爵軍も門を固く閉ざし王国軍の攻撃を跳ね返していた。ここでは『剣鬼スケサン』がその武を見せ付け、王国軍は多数の死傷者を出している。城門をめぐる戦いはバラン公爵軍に軍配があがっていた。


王都内の軍施設、倉庫、貴族関連施設は当初はバラン公爵軍が占拠している。ここに人質を使って味方にした貴族軍を援軍として派遣し、王都を手中に収めるはずであった。だが、人質を取れなかった事により援軍はない。まだ、激しい戦闘は続いているが戦況は確実に国王軍に傾いていた。


そんな中でバラン公爵は王都内で遊撃任務に就いていた500をオルファン追撃、人質確保のために派遣する。まだ王都での決着が付かないため派遣できるギリギリの数字であった。

その中には敗走した絶対女王ヨハンナもいた。



女性陣は先行させた。敗残兵達は命令に従って王都に戻る。状況を説明したが命令は絶対らしい。

仕方なく見送る。

話し合いが終わった侍達から陣容を伝えられるが、

「策がある。」

オルファンが言い放つ。

実際は策なんてもんじゃない。嫌がらせだ。

さて、どうなる?


王都に戻る王国兵には悪いが利用させてもらう。

王都から出た追撃の兵とどこかで遭遇するはずだ。

その機会に第一手を打つ。

混戦の最中に「集魔香」を使用する。

どれだけ効果があるかはわからない。

戦いが終わって近づいた時に第二手。

足止めの罠と「集魔香」。

そして第三手。侍達の伏兵。

これは後退しながら距離をとり、タイミングをみての攻撃になる。


侍達は第二手が終わったらオルファンだけでも逃げる事を条件にこの策を受け入れた。

魔物を兵とする。

まぁ、命令なんてできないけどね。


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