day5 -それぞれの個性-
神威爽の宣戦布告から二日後。
特訓を前に、霓虹のキャンスピュラシー専用エリアに二人の姿があった。
目の前に浮かび上がるホログラムの武器庫から、姫憂は自分の手元に具現化された愛用の得物をそっと持ち上げた。
「帝都!どう?」
「へぇ、桃色を基調とした遠距離にも近距離にも対応している扇子型のブーメラン双剣か。
アバターはいつもの姫憂何だな?」
姫憂がふわりと身を翻すと、桃色を基調とした華やかな扇子型のブーメラン双剣が光の粒子を撒き散らす。
遠近両用を想定して作られたその得物は、小柄な彼の動きに合わせて軽やかに軌跡を描いた。
「まぁね〜。これお気に入りだから。そう言う帝都も霓虹と同じアバターじゃん」
「結局の所、これが一番ヒットボックスが少なくて済むからな」
ふふんと得意げに鼻を鳴らしながら、姫憂は手元の扇子を軽やかに一回転させた。
その視線の先で、帝都はいつもの目の下の人魂が特徴的な赤と黒を基調としたシンプルで動きやすい戦闘用のアバターのまま、肩を軽くすくめている。
「あ、そこは効率的なんだ。って、帝都のその武器……」
実用性重視の帝都らしい淡々とした返答に、姫憂は呆れたように目を丸くした。
「俺のは遠近両用の巨大ポイ型!すくい紙の所がシャボン玉になってて、その中にクナイが入ってて、枠にはナイフがあって、さらに持ち手の部分が取り外せるようになってんだよ。
だから、フラフープみたいにすることも出来るんだぜ!」
帝都がヒュッと片手を振ると、ホログラムの光から巨大なポイが具現化される。
それは、金魚すくいのポイを何倍にも巨大化させたような形状をしており、枠の部分には鋭利なナイフが仕込まれ、水面を模したすくい紙の部分は頑丈なシャボン玉の膜で覆われていた。
さらに、その中を無数のクナイが不規則に浮遊しているという、一見してロマンの塊のような武器だった。
――さらに、帝都がその持ち手を器用にガチャリと外すと、ポイの枠はそのままフラフープのように変形し、近接の格闘から中距離の牽制までこなすマルチウェポンへと姿を変える。
「因みに鳩羽の武器は濃い緑色と蘇芳色を基調とした提灯型の武器だぞ!
一つ一つが小さいから複数個持てて、好きな時に爆発させられる様になってるんだよ」
「じゃあ、お兄は範囲攻撃しか出来ないの?」
一方、帝都が語った鳩羽の武器――濃い緑色と深みのある蘇芳色を基調とした提灯型の得物は、手のひらサイズから一瞬で戦闘用サイズへと展開する特殊ガジェットだった。
無数の小振りの提灯が周囲にふわりと浮遊し、その一つひとつが遠隔操作で高火力の爆破を引き起こす爆弾として機能する。
「いや、提灯の先端には短刀が付いてるから、中身を抜いて畳むと近距離用の刀になる。
相手に向かって投げれば、遠距離用の投擲武器としても使えるってさ」
しかも、提灯の先端に隠された短刀をシャキッと抜き放ち、本体の紙部分を折り畳むことで、瞬時に鋭利な近接用の刀へとトランスフォームする。
遠隔爆破、投擲、そして接近戦での斬撃のすべてを内包した、まさに上級者向けの超万能武器である。
「え、チート級じゃん!」
「でも、その分扱いがめちゃくちゃ難しいらしい。使い始めた頃は素人にやられてたしな」
帝都から語られる、あまりにも手数が多くてずるい兄の武器の仕様に、姫憂は両手をわなわなと震わせながら声を裏返した
呆れたように肩をすくめながら、帝都は苦笑交じりに付け加える。
足元に広がる、夢と希望を詰め込んだキャンスピュラシーの舞台である大草原に今、二人が降り立つのだった―――!




