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落雷の下剋上  作者: 風冥つむろ.
一章.【俺達の日常】

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day9 -鳩羽の武器と姫憂の覚悟-

「……この辺りかな」



全体的に赤黒く、青白いネオンの光で神威爽と書かれている本殿に姫憂は、左手に持っている鳩羽の武器の存在を確認するようにぎゅっと強く握りしめる。

持ち手を合体させると巨大な楕円形の刃になるフリスビー刀式。

一つの楕円先に空いている小さな漆黒の穴から、もう一つの楕円の穴に繋がったワイヤーを姫憂は見つめた。



“うわぁ、修学旅行の班伊織と一緒かよ……”


“え、何で嫌そうなの?別に良いじゃん”


“だって、伊織も女子の班の方がやりやすいだろ。……色々とさ”


“でも男なのは男何だから女子と一緒にするわけないじゃん”


“それはそうなんだけど、どう接していいかわかんねぇんだよ”



脳裏に過る過去の冷たい記憶が、周囲のネオンの光をさらに希薄に感じさせた。

姫憂の視界は、鮮やかな霓虹の色彩と、灰色に淀んだ過去の記憶が重なり合い、どこか現実味を失っていく。



「みーつけたっ!」


「っ……!ぐっ……」



背後からの刺客。

その正体はもちろん、攻の太刀を構えた透朱であった。

フリスビーで受ける攻撃を最小限に抑えたからか、吹き飛ばされたものの、何とか生き残る事が出来た姫憂に、透朱は容赦なかった。

攻の太刀に青白い不気味な電気を纏わせて、何度も何度も攻撃してくる。




「姫憂さん、敵に背中何か向けちゃだめだよ〜?すぐやられるんだから、さ!」


「がはっ……!」


「姫憂さんさ、私と残機で勝負するんじゃなくて、鈴を結ぼうとしてるんでしょ?鈴を奪って結ぶだけなら私を倒さなくて良いもんね!

でも残念でした〜。私がいる限り、ここは通さないよ」


「はぁ……、はぁ……」



パシャン、パシャン。


まるで透朱の攻撃に呼応する様に、水飛沫がイルカのように跳ねまくる。

しかし、フリスビーと刀を交えて闘う相手が、仲間の妹であると言う事実も姫憂の判断を鈍らせていた。


攻撃の手が、コンマ数秒だけ遅れ、その隙に透朱の刃が姫憂の頬をかすめる。



「正々堂々、残機で勝負しよっ!」


「鈴を奪うのも正々堂々だけ、ど!?」



追い詰められ、息を切らしながらも必死にツッコミを入れ返す姫憂の余裕のなさと負けん気が透朱を刺激してしまったようだ。

リボンやフリルがひるがえる。



「今度は、左っと!ふっ……!」


「何でそこ避けるのー!?もぅ……!」


「あれ〜?姫憂さん、そんなに私に攻撃して良いの?またさっきみたいにやられちゃう、よ!」



電子の雫が肌に当たる感覚は、戦いの熱とは裏腹に氷のように冷たい。

一つのフリスビーが空を切って向こう側の本殿の壁に突き刺さり、もう一つのそれが攻の太刀を防ぐ。

麻耶の周りを走り、隙を見つけては攻撃を繰り返す。

フリスビー刀の重量感が、電子信号となって脳に直接ズシリと伝わって来た。

金属音が姫憂の耳元で響き、小さな火花が散る。



「ふっ、良いんだよ」


「……?あれ……そう言えば姫憂さんの武器って、あんなフリスビーみたいな形だっけ……?」


「お兄の判断は正しかったみたい、だよ!」



そう言って姫憂は、持っていたフリスビー刀の側面にある小さなボタンを押す。


ウィーン。


小さなノイズ音がしゅる、しゅると言うワイヤーをフリスビー刀に吸い込む音と共に響く。

それは、透朱を、麻耶を破滅へと引きずり込む地獄行きの列車の音の様だった。



「……っ!ワイヤー!?縛られて……!」


「はぁっ!」


「う゛ぁ゙っ……!」



フリスビー刀で切られた衝撃は麻耶の防衛ラインを容易く突破し、透朱の身体を彼女の悲鳴と共に光の粒子へと変えていく。



『おぉーっと!ここで初めて姫憂が透朱を撃破し、一矢報いる!』


「……っ、おかしい……。どうして私が……!」


「……何度攻撃してもそれが蓄積してカウンターとして返ってくるなら、俺が麻耶ちゃんにカウンターを発現させる前に一発で勝負をつければいい!

これが、ENDS NOVAの闘い方だよ!」



その言葉は、この対戦が始める前に神威爽が言った、帝都のワンマンチームに対する姫憂なりの応えだった。



『そして、そして!第6区中央付近にて、鳩羽は鈴庵を相討ちで残機を使い果たし撃破!透朱の残機は残り二つ!

この広い戦場で二人の一騎打ちとなるでしょう!最終決戦突入後にして、終星の勢い止まらずです!』


「はぁ……っ、はぁ……っ。……見ててね、お兄、帝都。絶対に勝ってみせるから!」




姫憂は実体のない汗を拭きながら、雲一つない晴天の空を見上げ、自身の勝利を確信したのだった―――……。

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