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滅んだ地球では銃と魔法と、パワードスーツが活躍する。  作者: ネコ軍団
第2章

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第58話 余韻に迫る闇

「はい。大盛り焼きそばにトッピングの目玉焼き!」

「わーい! ありがとう」


 差し出されたプラスチックの盛られた、焼きそばを甘菜は笑顔で受け取る。山のように盛られた焼きそばの上にはこんがりと焼かれた目玉焼きが乗っていた。焼きそばを見て満面の笑みを浮かべる甘菜に、笑顔を向ける屋台の主は夏美だった。甘菜の後ろには彼女が勝ったのであろう綿あめとタコ焼きを抱えるレイと、小さなリンゴ飴を持つ未結が立って居る。三人は休憩時間に夏美が出店した屋台へとやってきたのだ。


「如月さんとレイは食べないのかい?」

「夜食のおにぎりがあるから…… なぁ? 先輩」

「えぇ…… 私も遠慮します」


 甘菜が持つ焼きそばを見て、首を横に振るレイと未結だった。


「もう若いのに……」


 二人に断られて少し残念そうにする夏美だった。そんな彼女に甘菜が手を差し出す。


「じゃあ二人の分は私がもらってあげるよ」

「あんたは食べ過ぎよ! まったく…… 何かあったらどうするの! お腹いっぱいで動けなくなるでしょ」

「平気だもん!」


 口を尖らせて不満そうにする甘菜だった。未結と顔を見合せたレイ、目を見開いてあきれた顔をする彼女に、恥ずかしそうにに笑った彼は甘菜の背後へと移動する。


「姉ちゃん! もう行くよ。じゃあね。おばさん」

「またねぇ」

「ありがとうございました」

「毎度あり」


 レイは綿あめを持ったまま右手をあげ挨拶し、甘菜はにこやかに笑って挨拶をする。未結は丁寧に頭を下げるのだった。

 臨時事務所に向かおうとする三人にドーンという大きな音が響いた。振り向いた三人に空母の少し先に沖で花火が上がるのが見えた。


「見てください! 花火ですよ!」

「おぉ!」

「綺麗だねぇ」


 観客は空母のヘリに群がって花火を見ていた。レインデビルズに支配された地球で、観賞用の花火が上がるのは久しぶりだ。幼い子にとっては初めての花火である。皆、感嘆の表情を浮かべ花火を見つめ中には涙ぐむ市民もいた。

 三人は観客の後方で、わずかに見える花火を並んで見つめていた。花火の光が甲板を照らし、レイはそっと花火から視線を横に向け、頬を花火の光に照らされながら目を輝かせている甘菜を見つめていた。

 やがて花火が終わり余韻に包まれている。


「よかった」


 甘菜は急に横を向いてレの顔を見てほほ笑む。急に振り向かれた彼は、少し恥ずかしそうに頬を赤くしごまかすように尋ねる。


「どうした?」

「なんでもなーい。さぁ事務所に帰って焼きそば食べよう!」

「おっおい。待って! 先輩。行こう」

「はーい」


 桟橋を指して歩き出す甘菜、彼女の後を未結とレイがついていくのだった。

 臨時事務所へと戻ってきた三人。持って帰って来た甘菜の戦利品を見て、黒田と石川はあきれるのだった。


「ふぃ…… 食べた。食べた。後はデザートを……」


 満足そうにうなずく甘菜、彼女の前の机には空になった、タコ焼きと焼きそばの皿が置かれていた。舌なめずりをした彼女は横に椅子に置かれた綿あめの袋に手を伸ばす。横の椅子に座り呆れていたレイが声をかける。


「まだ一日目だぞ。明日も明後日も祭りはあるんだからな」

「だからだよ。これだけ満足すれば明日から警備集中できるもん!」

「おっおう!」


 綿あめを口に含み、堂々と胸を張り得意げな顔をする甘菜だった。レイは堂々した彼女に何も言えなかった。湯呑が三つ乗ったトレイを持った未結が二人に近づく。


「レイさん。お茶を淹れましたからどうぞ。甘菜さんも」

「ありがとう」

「わーい。ありがとう」


 レイたちの前に湯呑を置く未結だった。静かな時間が流れていく。次の巡回も終わり、祭りの終わりの時刻が近づいて来ていた。

 時計に目をやる石川、時計は二十一時を少し過ぎたところを指している。黒田が石川を見てつぶやく。


「静かですね……」

「あぁ。警備の部隊も少し慣れて来たんだろう…… このまま何も起きなければいいがな」


 石川の言葉に小さくうなずく黒田だった。

 甲板では祭りが続いている。花火や盆踊りなどの出し物も終わり、少し観客は減ったが祭りの余韻を楽しむ客でまだにぎやかだった。


「そろそろ帰りなさい」

「はーい」

「先生またねぇ!」


 出し物が終わり閑散としている櫓の真下辺りで、浴衣姿の陽菜乃が顔見知りの生徒に声をかけ帰宅を促していた。彼女の後ろで虎太郎がにこやかに生徒達を見ていた。


「あっ! ひなっちじゃん!」

「おつー!」

「ひなっちすげえ浴衣似合ってんじゃん!」


 清華と愛が陽菜乃を見つけてやってきた。陽菜乃は二人ににこやかに挨拶をする。虎太郎は近づく二人を見つめ口元が緩み懐からケースを出して錠菓を口へと運ぶ。


「こんばんは、あなた達もそろそろ帰りなさい」


 帰宅を促す陽菜乃に不満そうに清華が口を尖らせた。愛はわざとらしく驚いて陽菜乃に答える。


「えぇ。夜はこれからだよ」

「そうだよー。ひなっち超真面目ー」

「なに言ってるのダメよ。明日も学校でしょ」


 明日も学校と言われ笑ってごまかす二人だった。彼らの後ろに警備に当たる戦闘服を番傘衆の姿が見える。清華が何かを思いついた顔をした。

 

「でも、レイっちとかまだ頑張ってるでしょ」

「そうだよ。同級生が頑張ってるのに帰るのはよくないよ」

「温守くんはお仕事でしょ。遊んでるあなたたちとは違うのよ。もう……」


 レイをだしにして陽菜乃の帰宅攻勢から、逃げようする二人に陽菜乃は呆れるのだった。三人の横から虎太郎が近づいて来た。彼はにこやかに陽菜乃に話しかける。


「まぁまぁ。まだいいじゃないですか…… 祭りを楽しんでるだけですし」

「磯先生! ダメですよ。彼らは成人しててもまだ学生です」


 首を横に振り強く否定する陽菜乃だった。磯はにこにこと笑いながら陽菜乃の横に立って話を続ける。


「祭りはこれからですよ…… だからまだ居させてあげましょうよ」

「これからって」


 にこにこと笑いながら虎太郎は懐からケースを出し、錠菓を取り出して口へほうりこむ。変わらずにこにこと笑う虎太郎の目の奥がうっすらと青く光り出した。


「なんか礒せん変じゃね……」

「うん…… かえろっか」


 清華の提案にうなずく愛だった。二人は陽菜乃に向かって手を上げた。


「あっあの! ひなっち! うちら帰ります」

「ばいばーい」

「えっ!? 気を付けて帰るのよ」


 慌てて背中を向けて帰宅する清華と愛だった。陽菜乃は突然のことに驚いた手を振った。しかし、ニコニコと陽菜乃の横に居た虎太郎は、眉間にシワを寄せ怒りの表情に変えた。


「待て!!!!!!!!!!!」


 帰ろうと二人を虎太郎が怒鳴りつける。急に怒鳴られた清華と愛はビクッとなって振り返る。突然のことで虎太郎の隣に居た陽菜乃は固まっていた。


「祭りはこれからだと言ってるだろ! 勝手に帰るんじゃない!!!」

「いやでも…… うちらは学校で…… えっ!?」


 虎太郎の体が青白く光りだした。強烈な光を放った虎太郎の皮膚は白く透け、目や口の中まで光が出て白い線が甲板を照らす。


「ぐぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 苦しそうな声をあげる虎太郎、甚平の裾から紫のイカのような足がいくつも出てきた。


「「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」


 悲鳴を上げる三人、虎太郎の下半身がイカのようになり、左右に長い触腕をもち、真ん中の八本の足で立っていた。周囲の観客も虎太郎を見て逃げだした。


「キャア!!」

「やめて!!!」


 虎太郎の触腕が伸びて、清華と愛に巻き付いた。そのまま二人は持ち上げられてしまう。二人は拘束され虎太郎の横へと連れて来られた。自分の左右にいる二人を交互に見て虎太郎がニチャアと笑う。


「心配するなお前たちは大事な証人だ。悪いようにしない」

「なっなにを証人って」

「そうだよ。なんでうちらがそんな証人に……」

「何を言ってる生徒に祝福されるなんていいものだろ?」


 わけのわからないことをいう虎太郎に呆然とする。陽菜乃は混乱していたが、目の前で拘束されてた生徒を守ろうと必死に虎太郎に向かって行く。


「二人を離してください。ご自分が何をしてるのか」


 陽菜乃は虎太郎の前に立ち、顔を突き出し二人をはなすように命令する。そんな彼女に虎太郎は優しくほほ笑む。


「大丈夫だよ。すぐに向かおう」

「むっ向かうってどこにですか! 馬鹿なことを言ってないで早く二人を……」


 眉間にシワをよせムッとした表情をする虎太郎だった。


「うるさい! 今から二人の結婚式だろうが!! 黙れ!」

「えっ!? はっ!?」


 陽菜乃を怒鳴りつけた虎太郎は、自分の顔の横で右手の指を鳴らした。


「キャアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 虎太郎が指を鳴らすと同時に陽菜乃の上に、白い円が出て中から触手が下りて彼女を拘束した。陽菜乃は触手に両手を縛られ上にあげられた姿勢にされる。


「じゃあ行こうか。花嫁さん」

「いや……」

「大丈夫。すぐに祝福される。聖獣さまにな」


 にこっと笑う虎太郎、彼の足がぐんと上に伸びていく。白い円も彼の足が伸びると同時に上空へと上がっていく。虎太郎と三人を櫓へと連れて行くのだった。甲板に警報が鳴り響く。パワードスーツをまとった番傘衆たちが虎太郎へと向かって行く。

 同時に特務第十小隊が、待機する臨時事務所の電話が鳴り響くのだった。

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