003
「とりあえず、情報収集を優先したいと思います」
ツキシダはシェーナさんにそう告げた。
だが……
「ここに人は居ません。なので人を探してみようと思います」
「分かりました。手伝いましょう」
なんとありがたい。やっぱりこの人は優しい。
でも……何で? まあ、いいや。
今はもとの世界との通信を……
「ああ! ツキミの事、忘れてた!!」
どうしよう、僕がいなくなってからもう半日は経っている。
ヤバい!! 帰ったら亡きものにされる。どうしよう。
「もとの世界と通信を繋ぎたいのなら、一応それらしい機械はありますが」
「本当ですか!」
「ええ。山の中で、その装置の実験をしようと思っていたら、貴方を見つけたという訳です」
なるほど……
だからあの時、ツキミと連絡が出来たのか……
あれ?
でも、途中で切れたような……
そんな事を考えていると、シェーナさんが2階から、降りてきた。
両手で何故か扇風機を抱えて。
「あの……何ですか、それ?」
「通信機です。何故こんな形をしているのか、どうやって通信機の役割を持っているのかは、分かりませんが……」
だから、山で試して見ようとしていたんです――と、彼女は言う。
ありがとう。僕が疑問に思う前に説明してくれて。
そのあとツキシダとシェーナさんは家の外に出た。
そして、ツキシダは、驚いたように声を出す。
「あの僕が倒れていた山、あんなに離れてたんだ……」
知らず知らずの内に早足になっていたのだろうか
そう言えば、体が軽いような気がする。
「さてと、太陽が当たる場所へ向かいましょうか」
そう言って、彼女は歩き出す。
ここは男として荷物(扇風機型通信機)を持つべきだろうか……と、思いもしたが、シェーナさんは、軽々と持っていたので、やめた。
しかし、シェーナさん、しっかりしてるなー。
一人暮らし、だからかな……?
そして、シェーナさんの家から800メートル程歩いた所で、
「ここでいいでしょう。スイッチオン!」
シェーナさんがスイッチを入れると、
ツキミの声が聞こえてきた。
「あぁん♡いやっ……」
シェーナさんはスイッチを切った。
……あのやろう!!
ツキシダが怒りに震える一方で、
「……あれ、シェーナさん?」
シェーナさんは、顔を真っ赤にして、固まっていた。
続く
次回から、本格的に、物語が、動き出す!?