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「あー、最悪」
最悪という言葉1つでは表せないほどの怒りが渦巻いている。
何せ信じてた人に裏切られたのだ。それも、1日に2人にもだ。
1人は同僚かつ後輩の咲ちゃん。もう1人は、彼氏の智である。
デートを流されたその日になら、買い物しようかとちょっと遠い街に出かけて見たのは、咲ちゃんと智が親しげに腕を組んで歩いてあろう事か口づけをしてる所だった。
会社の同僚の中で一番可愛がっていたつもりである。その流れで1、2度、智に咲ちゃんを会わした事がある。
だから、咲ちゃんは智が私の彼ということを知っていたのだ。
違う会社に務めているけど智は、順調に出世街道を渡っているらしい。あれから、鈍感だった所は、ほぼ消えて気のつく優しい優良物件へと進化していったのだ。
そりゃ、狙いたくなるだろう。目のつけ所はいいと咲ちゃ……もう、呼び捨てでいい咲にも言いたい。けど、私のなのである。
外国では、挨拶替わりでするとかいうがここは日本である。そんな、軽いものでも無さそうだ。そう目が語っていた。
というかである、腕を組んで歩いていたのに今出会いましたーと道端で口づけをするか?しないだろう?というか、道端で堂々と口づけ何て無理である。そんな、度胸はない。
多分、あれが初めてじゃないのは何となく雰囲気でも分かってしまった。雰囲気だけでは、もちろん無いのだが。
その、1、2度の出会いでいつ連絡を交換したんだろうか、後輩の裏切りは予想以上に体に堪えた。多分、知らない所でやり取りをしていたのだろう。それで、唇を許してもいい関係にまでなってしまったのだ。
智とは、あれから8年カレカノをやってきてそろそろ籍を入れようかという話をしていたのだ。
酷い裏切りである。しかも、その話をしたのは、つい1週間前なのである。それも、智の部屋のソファーの上で口づけをしながらである。
これが、怒らずにいられるかという話なのだ。つまりだ、浮気をしながら、結婚の話をしていたのだ。気づかなかった私を殴りたい。
今日だって、仕事が忙しいのかな?と思っていた。内緒にして気付かない私を嘲笑いながら関係を2人は続けるつもりだったのだろう。
バタンっ
つい、自販機の傍に置いてあったゴミ箱を蹴り倒して虚しくなる。
「あーあ、何やってるんだろ」
私はまるで散らばったペットボトル。中身を飲み干されて、飽きられたら雑に捨てられる。もしかしたら捨てるつもりは無いのかもしれない。キレイなペットボトルと交互に飲むつもりなのかもしれない。
なんて、ポエミーな事を思ったがその実嫌悪感が体を走っている、ああ汚らわしい。
智は、浮気をするような人では無かった。なら、そそのかした咲が悪いのか?咲が憎い、裏切った智も憎い。
ヤケになって叩きつけるように散らばっていたペットボトルの片付けが終わって、フラフラ歩いていたらいつの間にか辺りは霧だらけになっていた。
思ったよりも霧が濃くて前が見づらい。
何かの記事で読んだ気がする。地球温暖化やコンクリートによる気温上昇で昔多かった霧が減少しているということ。昔、親に連れられた農場でしか霧を見たことないし、つまりありえないのだ。
さっきまであった足元に白線が書かれた道路ではなく土の感触があってブロックが積まれた壁の代わりに木が生えてるなんて。いや、1本とかそういうレベルの話ではないのだ、霧と認識した辺から歩いて見たのは木しかないのだ。
そんな事を思い出したら、何か寒くなってきた……。
「痛っ、なによもうっ」
前がよく見えなから看板にぶつけてしまった。もう、今日は踏んだりけったりである。
「死食レストラン?変な名前のレストランね」
とりあえず、この先にレストランがあることが分かった。この、奇妙な空間においてやっとのこと手に入れた脱出する手がかりで舞い上がっていてその下に書いてあった文字まで注意して見てなかった。
「死食レストラン この先400m
復讐したい人がいる人にオススメです。完食出来た方は、祝福を」