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【三話シリーズ】30分の悪党  作者: 常に移動する点P


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2/3

【2/3】東島翔子

 人間とはなんと業の深い生き物であろうか。という私も人間ではあるが、この時代の人間ではない。2046年からやって来た。過去においてのSF的事象は、先の時代では現実的日常事象でもある。タイムトラベルが仕事の道具になっている業種はわずかだが、この時代で言うとそう、AIのような働きかもしれない。


 額田浩二に過去と未来のどちらかを選ばせたのは今回で5度目。これまで未来ばかりを選んでいたが、やっと過去を選択した。確率の問題なのか。


 2046年、額田浩二は70歳になり、ようやく逮捕された。裁判中に病気で死亡したことで、警察組織への風当たりは強くなった。どうして今頃逮捕したのだ、ということだ。


 私は、額田には諜報機関員と言っているが厳密には警察組織内での特殊機動員、ありていに言えば自由を与えられた警察官だ。動きやすくするために、この時代では、民間の諜報機関員としている。警察官だと言われたら、誰だって身構えるし、特に元刑事の額田ならなおさら。警察組織がそこまで自由度が高くなっているなんて、信じないだろうに。


 いくつかの事実の積み重ねから、額田が真犯人ではないことは明らかだ。だが、犯罪に対して、いや、被害者に対しては加害者が必要になる。誤解がないように言えば、「セット」であると言う方が正しいか。


 8人もの尊い命が奪われているのに、加害者・犯人の目星もつかないとあれば、被害者だけが産まれたことになる。

 本質的には8人の被害者には8人の加害者が必要だ。だが、それをたった1人でやってのける時点で、このバランスの悪いことといったらならない。

 国民感情からすると、万一逮捕者が1人だとして、8人の命を奪ったとあれば、裁判を経る間でもなく、死刑を求めるだろう、だが、死刑にしたところで、帳尻が合わないのだ。


 それゆえ、この手の犯罪は早期に逮捕収監・起訴・死刑執行が求められる。警察ができることは早期逮捕・収監だけだ。


 できるだけ早く逮捕という流れを得るために、私は、20年前の2026年にやって来たというわけだ。だが額田はこれまでの4回は未来へのタイムトラベルを要求した。自分の行く末が見たかったのだろう。老人となった自分が刑務所で裁判中という事実を4回見ている。絶望しかなかったのだろうか、そのあと額田は、2026年に戻って来たときに、自殺する。なんとも歯切れのわるいというか、後味の悪い結末だ。私は2046年に戻り、再び2026年にやってきて額田と接触するということを5回繰り返したというわけだ。


 ゆえに、額田自殺の分岐ルートが4つもできてしまい、上司からは大目玉を喰らっている。


 今回は、過去に戻ってくれたおかげで、その後足がつくこととなり、逮捕にまでこぎつけられた。逃亡犯であった額田が、目的をもって何かを追跡した途端、このザマだ。


 私には誰が犯人なのかが問題ではないし、世の中の平和が維持されるのであれば、誤認逮捕も冤罪も必要悪だと考えるのだ。


 とはいえだ、とはいえ。


 額田が逮捕された事実を2046年に戻って実感すると、何とも尻の座りの悪いことか。冤罪の冤は濡れ衣・無実の罪なんて意味もあるが、「恨み」と言う意味もあるじゃないか。私には、罪を恨む意味でしか聞こえてこない。


 眠れない日が一週間続いた。自分の欲求が次から次へと浮かぶのが人間だとするならば、私の欲求はただひとつ、やすらかな睡眠だ。


 私は2026年に行った、額田に6度目の接触を図る。分岐した時空は仕方ない。諦めよう。


 額田の冤罪を晴らすために、もう一段階時空を超える。さらに20年前、2006年に飛ぶ。5回目に

接触した額田が過去に戻った地点に。額田は妻の幸恵にメッセージを、おそらく真犯人に殺害されないようにとアドバイスを送っているはずだ。


 2006年に戻ったとて、真犯人の目星すらつかないかもしれない。だが、真相を知って戻ること自体は意味がある。

・****・


 2026年に戻り、2046年にジャンプした。ようやく元の時代に戻った。私はひどい思い違いをしていたようだった。私は今日、辞表を提出した。責任を取りたいからではない、私の想像を超えるところに、私を置き去りにしておきたくない、ただその一念だ。


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