【Side Story】カットされた第二次試験
【まえがき】
第3章の完結から数日が経ち、作者は久しぶりに連載ページを開きました。
無論、読者様からの評価を見るため。
そして――愕然としました!
「……なんだと……!」
そこにはなんと――天高くそびえ立つ、大量のポイント評価とブックマーク!
もはや書くしかない……!
これだけの『ポイント評価』と『ブクマ』をもらったら……!
書かないという選択は……ない!
つまりは――決定。
第4章の執筆ッッッ!
っということで皆様、たくさんのポイント評価とブクマ、本当にありがとうございました!
過酷な毎日連載でボロボロになった心と体が、ポイント評価とブクマの『回復効果』によって見事に癒されました!
皆様からの熱い応援のおかげで、無事に『第4章』の製作が決定です!
第4章の本編は【5月1日】からスタートいたします。
また、5月1日の本編スタートまでの期間は、サイドストーリーを不定期で投稿してまいります。第4章の開幕まで、ぜひこちらの物語も楽しんでいただけますと幸いです。
最後にお願いがございます!
本作を読んで「面白い!」「4章待ってた!」と思っていただけましたら、
ぜひページ下部の評価欄から【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に変えて、ポイントで応援して欲しいです!
皆様からの応援が、日々の執筆の何よりの原動力となっております。
第4章もさらに楽しんでいただけるよう全力で頑張りますので、引き続きよろしくお願いいたします!
帝都から遠く離れた、隣国ゲータ・ニィガの国境沿い。
鬱蒼と生い茂る巨大な木々が陽光を完全に遮り、昼間だというのに薄暗い。むせ返るような腐葉土の甘い匂いと、肌を刺すような冷たく重い瘴気が漂う『奈落の森』の入り口である。
そこに、第一次試験の激戦を潜り抜けた二十四名の魔導士候補生たちが集められていた。
炎の魔法使いである青年フランケも、周囲の異様な空気に圧倒され、緊張した面持ちで息を呑んでいる。
「よくぞ集まった、ひよっこ共。これより、第二次試験のサバイバルを開始する」
鋭い眼光で受験者たちをねめつけるのは、剣鬼のラーズスヴィズであった。
歴戦の凄みを含んだ彼女の声は冷たく澄み渡り、ざわついていた受験者たちの群れを一瞬にして静まり返らせる。
「ルールは簡単じゃ。お主らには、この森の中でスリーマンセルを組み、三日間生き延びてもらう。食事や水はすべて現地調達とする。己の魔法と知恵だけを頼りに、この大自然を生き抜いてみせよ」
その言葉に、受験者たちの顔がサッと青ざめた。
奈落の森は、凶悪な魔物がうじゃうじゃと生息する死の領域として広く知られている。そこで野宿をし、自力で食料を調達しろというのは、自ら魔物の餌になれと言っているようなものだった。
「あ、あのっ。もし魔物に襲われて、死んでしまったらどうするんですかっ」
恐怖に耐えきれなくなった一人の受験者が、声を震わせて尋ねる。
ラーズスヴィズは鼻で笑い、傍らに立つ人間の姿をしたファフニールを顎でしゃくった。
「安心せい。死の危険が迫れば、お主らに持たせる護符が自動で発動して、この安全地帯へと強制転移される仕組みになっておる。そして、そこにいるファフニールが完璧な治癒魔法をかける。つまり、絶対に死にはせん」
「ふん。手足の一本や二本飛んだところで、余が元通りにくっつけてやるから安心しろ」
竜の賢者が傲慢に言い放つと、受験者たちはホッと安堵の息を吐き、ガックリと肩の力を抜いた。
死なないという絶対的な保証は、恐怖に強張っていた彼らの心に大きな余裕をもたらしたのである。
「ただし、合格条件はただ生き残ることではない」
ラーズスヴィズがパチンと指を鳴らすと、宙に浮かんだ二十四本の『白い布』が、受験者たちの腕にそれぞれピタリと巻き付けられた。
ひんやりとした感触の、微かな魔力を帯びた特殊な布であった。
「その布を他人に奪われた者は、即座に失格となる。そして合格するためには、三日間生き延びた上で、自分たちのチームの布とは別に、他のチームから『布を九枚』奪わねばならん」
「九枚っ」
フランケが驚愕の声を上げ、大きくのけぞった。
自分たちのチームの三枚とは別に九枚集めるということは、最低でも他チームを三つ完全に壊滅させなければならない。全体の布の数は二十四枚しかないため、どう足掻いても二十四名のうち最大で二チーム、たった六名しか合格できないという、極めて狭き門であった。
受験者たちの間に、先ほどまでの安堵とは違う、ヒリヒリとした疑心暗鬼の空気が張り詰める。
隣に立つ者が、次の瞬間には己の布を奪う敵になるのだ。
「文句のある奴は、今すぐ尻尾を巻いて帝都へ帰るがいい。さあ、試験開始じゃっ」
ラーズスヴィズの冷酷な宣言と共に、二十四名の受験者たちは、己の欲望と野心を胸に、薄暗い奈落の森の奥深くへと足を踏み入れていった。
◇
鬱蒼とした木々に囲まれた、奈落の森の奥深く。
フランケを含む三人の即席チームは、周囲を警戒しながら獣道を慎重に歩みを進めていた。
「だ、大丈夫さ。ラーズスヴィズ様は、絶対に死にはしないって言ってたしな」
「ああ。いざとなれば強制転移がある。死なないなら、多少無茶をしてでも他のチームを襲って布を奪えばいい。まずは安全な場所に身を隠して、他の連中が消耗するのを待とう」
チームメイトの魔導士たちが、強がりを含んだ声で笑い合う。
フランケもそれに同調して頷いた。命の保証があるというのは、精神的なアドバンテージとしてとてつもなく大きい。万が一魔物に襲われても、致命傷を負う直前に逃げ帰ることができるのだから。
ドスン、ドスンっ。
突如として、地響きのような重い足音が森の奥から近づいてきた。
足元の湿った土が微かに震え、腐った肉と血の混じった、強烈な獣の悪臭が鼻を突く。フランケたちは弾かれたように足を止め、音のする方向へと身構えた。
ガサガサと巨大な茂みを掻き分けて現れたのは、漆黒の体毛に覆われた四足歩行の巨大な獣であった。
赤く血走った双眸と、人間の胴体ほどもある巨大な爪。よだれを滴らせる大口には、ノコギリのような鋭い牙がびっしりと並んでおり、その全身から濃密な瘴気が立ち上っている。
「なっ、なんだあれはっ」
「う、嘘だろ。死熊じゃないかっ。なんであんなSランクの魔物が、こんな森の浅いところにうじゃうじゃいるんだよっ」
フランケたちが膝から崩れ落ちそうになりながら、絶望の声を上げる。
死熊は、熟練の魔導士が十人がかりでようやく討伐できるかどうかの、正真正銘の化け物である。それが一頭どころか、茂みの奥から三頭、四頭と次々に姿を現したのだ。
ギシャアアアアッ。
死熊の群れが、獲物を見つけて歓喜の咆哮を上げる。
その圧倒的な殺意と鼓膜を破るような轟音に当てられ、フランケの全身から滝のような冷や汗が吹き出した。
「こ、これのどこが『死なない』っていうんだよぉぉぉっ」
フランケの悲痛な叫び声が、森の木々を激しく揺るがす。
確かに死なないかもしれない。だがそれは、死ぬ一歩手前の、巨大な牙で生きたまま手足を引きちぎられ、内臓を貪られる究極の苦痛と恐怖を味わうということに他ならないのだ。
魔導士候補生たちは、迫り来る圧倒的な死の恐怖から逃れるため、なりふり構わず森の奥へと散り散りに逃げ惑い始めた。
場面は変わり、森の入り口に設けられた安全地帯。
そこには、優雅なティーセットが用意された真っ白なテーブルが置かれていた。
ラーズスヴィズとファフニールが、香り高いダージリンティーを片手に、のんびりと寛いでいる。芳醇な紅茶の香りが、森の瘴気をかき消すように優雅に漂っていた。
「ぎゃあああああああっ」
「たすけてくれぇぇぇぇっ」
森の奥から、断末魔のような受験者たちの悲鳴が絶え間なく響いてくる。
その阿鼻叫喚の地獄絵図を心地よいBGMにするかのように、ラーズスヴィズは優雅にティーカップを傾けた。
「まったく。この程度のサバイバルで、情けない声を上げおって」
「うむ。今の若い魔導士は、どうにも根性が足りんな。あれしきの獣、素手で殴り倒せばよかろうに」
呆れたように肩をすくめる二人の大賢者。
ラーズスヴィズは深くため息をつき、手元のバタークッキーを上品につまみ上げた。
「うちの可愛いソフィアなら、こんな森など涼しい顔で歩き回り、あの死熊どもを魔法の杖で手懐けて、あっという間に立派な野営地を作り上げるというのに」
「違いない。あやつなら、魔物の肉を美味しく調理して、余たちに極上のフルコースを振る舞ってくれるだろうな。まったく、嘆かわしいことだ」
彼らの合格基準は、根本から完全にバグっていた。
神域の杖職人であり、規格外の精神力と魔眼を持つソフィア・クラフトを『一般枠の基準』として無意識に設定しているのだ。並の魔導士が、その常軌を逸したハードルを越えられるはずがないのである。
「ひぃぃいいいいいいいっ」
大賢者たちの理不尽な期待とズレまくった評価の裏で、フランケたちの涙ながらの絶叫が、今日も奈落の森に虚しく木霊し続けるのだった。
【お知らせ】
※4/23(木)
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