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VirtualGT  作者: ラドロ
9/21

第9話 嵐の前の静けさ〜ピットレポートを添えて〜 第3戦 鈴鹿 予選

どうも!ラドロです!今回は鈴鹿1000キロの前哨戦です!


それでは、どうぞ!

波乱の富士から1ヶ月たった7月の鈴鹿VRサーキット。猛暑の中、佐々木厚大はピット内で2チームのドライバーたちと会議していた。というのも71番のNTTと72番の楽天はともに彼が監督を務める姉妹チームだ。会議の理由は他でもないその戦績だ。岡山では予選では楽天がQ1敗退したものの最終的に3番手にNTT、5番手に楽天が食い込んだが富士では打って変わってひどい戦績だった。予選ではどちらもQ1を突破したにもかかわらず、決勝後には楽天は6番手で、NTTに至ってはハンディもあって9番手という散々たる結果だった。ハンディによる差が大きくなりコース的にもハンディのよる差が如実に現れるというこの第3戦で反撃の狼煙を上げたいところではあるがどうすべきだろう、ということで早めに集まり、会議を開いたのが5分前のことだ。

「僕らのマシンはチームで度合いに差があれど、コーナリングマシンに仕上がっているのは言うまでもありません。そして鈴鹿ではコーナリングスピードが物を言います」

そう語ってくれたのは楽天の清水雄太だ。彼の方に体ごと向きを変え質問を追加で飛ばす。

「なら、次は行けるのか?」

「はっきり言って確証はありません。前回のようにトラブルや他チームの戦略等で全く変わってきます」

「けど私達なら上位は取れる、その自信がある、でしょ?」

そう言葉を引き継いだのはNTTの吉葉桜だ。チームは参戦の都合上異なるが彼らは幼馴染みらしく2人で応募し2人で当選したとのこと。腕時計を一瞬目を落としてから再び皆に目線を合わせると声を張り上げた。 

「…よし、メンタル的にバッチリなのはわかった。あと数分でフリー走行が始まる。フリー走行でいろいろ予選に向けて準備しよう」

「「「「はい!」」」」

4人分の返事を確認すると意識を切り替え、体の向きも反転させた。



『さあやってきました。普段は室内からコース上の出来事のみを実況している私ですが、今回はピットを直接歩き回り、ドライバーや監督の皆さんに裏側まで聞いてまわろうと思います』

彼はまずGT−R使いのもとを訪れた。

「最初の取材に対応してくださるのはKONの川口創一選手です。おはようございます」

「おはようございます」

「早速ですが現段階でポイントリーダーのKONはなぜそこまでの速さが出せるのでしょう?」

「マシンがいいからですね。SGTでのGT−Rはマシンスペック自体はありながら空力パーツのバランスが悪く、結果が残せなかったので逆に言えば空力バランスさえ良ければ結果を残せるのではないかということでやったみたらほんとに良くて(笑)」

「なるほど。しかし今回は唯一、燃リスがつけられていますがどれくらいの順位が目標ですか?」

「1位しかないですね。どんな状態でもここでは優勝したいと思ってましたし加えてここはボーナス的な感じで獲得ポイントが多いので絶対勝ちに行きたいですね」

「なるほどー。ちなみにどれくらい増えるんでしたっけ?」

「普段よりも総距離が他のおよそ3倍のこの鈴鹿では1位が25ポイント、つづいて18ポイント、13,10,8,6,5,4,3,2となっているので最大で通常よりも5ポイント多くもらえるようになってます」



『次に訪れたのは前回ポールを獲得しながらクラッシュでノーポイントに終わってしまったマザー空力です』

「おはようございます」

「おはようございます」

「それでは楓さん。監督として前戦の振り返りと今戦をどう見てるか、お願いしていいですか?」

「はい。前回は凛が予選でよくやってくれました。ストレートではどうしても一歩劣る中、コーナーのスピードでコースレコードにあと一歩というところまで行けました。ただ決勝は負のループに翻弄されてしまった。まず最初は予選でタイヤが摩耗しているため数少ないアドバンテージであるコーナースピードが出ず、結果的に抜かれる。そして焦りが募り更にミスが増える。なんとかピットで持ち直したもののオーバーテイクしようとしすぎて前のマシンのスピンを避けられず、リタイヤという最後を迎えてしまいました。今回はコーナーで速さを稼ぐところですし、ドライバーたちも切り替え、冷静に臨めるように準備してきてくれている。今回の主役は我々になると思います」

「なるほど。熱いコメントありがとうございます~」



『最後は前戦の勝者、アミューズメントです』

「おはようございます。前回は優勝おめでとうございます」

「おはようございます。ありがとうございます」

「ランキング3位につけていますがこれをどう見ていますか?」

「そうですね…まず1,2位がどっちも車種は違えど日産が入っているので今戦ではその牙城を崩しにかかりたいですね。またチャンピオンシップも視野に入れて考えています」

「なるほど、頑張ってくださいね。それではそろそろ予選が開始されます。はたしてここで一歩前に出るのは誰なのでしょう!!」



そうして予選Q1が行われた。そして結果は9位にファースター、10位にアミューズメントとスープラ2台が予選Q2に進むことすら叶わなかった。11番手にはモジューロ、そこからさらにウィダー、チーム無双、ザ・ファウスト、VRレーシングと続いた。

そしてQ2。俺ーー清水雄太ーーはQ2を担当するのはこれが初めてになる。緊張感が違う。しかし、気合は十分だった。

(絶対に1位を獲る…!)

そう心でつぶやきながらウォームアップを終え、アタックラップに入った。

富士とくらべたらかなり短いメインストレートをフルアクセルで駆け抜け、程なくして1コーナーに差し掛かる。ここは魔の1コーナーとも呼ばれており、形状自体は鋭い半楕円だが侵入速度が少しでも速ければオーバーランしてしまい、びびって遅くなると立ち上がりで遅れ、全体のペースに支障が出る。気持ち早めにアクセルをゆっくり抜くとノーブレーキで突っ込む。

そして一気に湾曲した2コーナーにかけてブレーキングするとなんとかマシンがコースにとどまる。アクセルを再び踏む。

直後再び現れた短い直線を進むと左、右と湾曲したS字コーナーに出る。細かくステアリングを動かし、アクセルやブレーキも踏んでは離しを繰り返して切り抜けるとまたおなじ構造のS字を走る。左右に走る横Gに耐えながらそれを抜けると緩やかな上り坂に差し掛かった。また道もなだらかにではあるが左を向いている。逆バンクだ。ここで一旦気持ちを落ち着かせると刹那の直線をおいて鋭く右にターンイン。このときもアクセルオフではあったがノーブレーキだ。しかし次は90度右に曲がらなければならないのでしっかりブレーキングする。2連デグナーと呼ばれここもかなりの危険地帯だ。

そこを立ち上がるとまた直線に差し掛かる。立体交差をくぐり抜け、少し右に道が傾いたと思ったら一気にブレーキングする。鈴鹿最大のブレーキングポイントの左ヘアピンだ。

すると逆バンクと左右反転させたかのような緩やかな右カーブが現れたのでフルアクセルでギアを上げながら逆バンクよりも長い道を駆け抜ける。息をついていると今度は絶妙な深さで曲がった左コーナー、スプーンコーナーが現れた。アウト、イン、アウトと往々としながらコーナーを抜けるとまたしても上り坂だ。しかしここは完全な直線でメインストレートよりも長いのでバックストレートと呼ばれる。

暫くの間、坂を駆け上がると傾斜がなくなり視界が良好になった。

すると今度は緩やかな左コーナーが見えてくる。130Rという、鈴鹿の中でも1,2を争う名所だ。そこをフルアクセルで抜けてステアリングを水平に戻すと今度は一気にブレーキングする。なんせ130Rを過ぎてすぐにあるこのコース最後のコーナーはシケインなのだ。

右へ左へと抜けるとメインストレートが見えてきた。鈴鹿のコントロールタワーは珍しく、ストレートの後半ではなく、ストレートに入るところにある。シケインを立ち上がり右のパドルを短く押すとともにコントロールラインを通過。こんな感じでアタックをしていると3周目のコントロールタワーではチェッカーフラッグが振られていた。予選Q2終了だ。アクセルを抜き、ふー、と息をついていると

「オシ!!やったぞ雄太!コースレコードでポールポジションだ!!」

「ポールポジション!?」

突然伝えられた監督からの祝福(?)にそのまま鸚鵡(おうむ)返ししてしまう。更に衝撃的な知らせが追加される。

「ちなみにNTTは2番手で1,2だ!」

「えええええええ!!」

あまりの衝撃に思わず運転を忘れる。

なんとかコースアウトすることなくコースを一周するとすでに楽天がピットに戻っていた。確か、Q2担当は桜だったはずだが…そう思いながらベルトを外し、コックピットから出ると、そこにはレーシングスーツにヘルメット姿の桜がいた。

「予選ではコンマ2負けたけど、決勝では負けないよ」

「やってみろよ。絶対この座は渡さねえ」

互いに不敵な笑みを浮かべているのが見えずともわかる。一瞬の沈黙をおいて俺らは拳を軽く打ち付けあった。チーム厚大が1,2を飾った一方、3番手にはマザー空力、4番手になんとKONが食い込んだ。


(続く)

投稿が遅れてすいません…普段学校で投稿しているのですが、ここ数日家に置きっぱなしだったんです…

今回も読んでいただきありがとうございました。もし本作品を高く評価してくださるなら次回以降も読んでいただけたらと思います。それでは!

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