表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/18

18【最終話】

 エディオたちの心配を他所に、事態は好転していった。


 ロンゼ公爵が好機到来と積極的に動いたのだ。


 一週間後にはエディオは再びロンゼ公爵邸へ呼ばれる。今回はダミーの友人なし。


 庭園の四阿に用意されたお茶会の席でフィリナージェは早々に本題に入った。


「エディオ様はルーチェ様とのご婚約でご苦労なさいましたのね」


「え!?」


「父がレグレント侯爵家の執事長様からお聞きしたそうですわ」


「あ……そうでしたか……お恥ずかしいです。

僕の容姿が普通なのもセンスがないのも本当のことですから」


「センスなど、周りの話に耳を傾ければ済むことですわ。このケーキもとても可愛らしくて素敵なプレゼントです」


 ケーキはエディオが土産に持ってきたものだ。


「メイドに聞いたのです。三日前に予約をして今日こちらへ伺う前に菓子店に寄ってきたんです。

そこは中で飲食もできるそうですよ」


「まあ! 素敵!」


「………………」


 エディオは思考を巡らせた後、真っ赤になって俯く。


「ももももももし、よろしかったら、その、あの、ここここ今度一緒に、その」


「まあ! 嬉しいですわ」


 エディオが勢いよく顔を上げるとフィリナージェは笑顔を向けてくれていた。


「わたくしは、センスの良し悪しより他者の話を聞けることの方が大切だと思いますわ」


「っ」


 エディオはフィリナージェの優しい眼差しに絶句する。


「フィリナージェ嬢は第三王子殿下をお好きだったのですか?」


 フィリナージェの笑顔に甘えついつい気になっていたことを口にしてしまった。慌てて否定する。


「す、すみません! 何でもないです! 忘れてくださいっ!」


「ふふふ。エディオ様がロンゼ公爵家ではなく、わたくしにご興味を向けてくださって嬉しいですわ」


「僕は…」


 以前からフィリナージェに好意を持っていたとは言えなかった。


「わたくしはなかなかに傲慢な女ですのよ」


 なぜか嬉しそうに笑うフィリナージェに戸惑うエディオ。


「はい?」


「手紙を書けば『こんなものは面倒だ。直に話せ』と言われ、お声をかければ『鬱陶しい』と睨まれ、プレゼントはこちらからの一方通行。そんな方に好意を持つなどできませんわ」


「そ、それは、フィリナージェ嬢も婚約者殿にご苦労なさったのですね」


「うふふふ。ですから、エディオ様。お互いに苦労しないようにいたしましょうね」


「そうしたいですね」


「では、お話は進めてよろしいですわね?」


「は?」


「え?」


「あの、何のお話ですか?」


「ですから、わたくしたちの婚約のお話ですわ」


「えーーー!!!!」


 エディオは立ち上がって叫んだ。


「な、な、なんで??」


「あら? お互いに苦労しないように婚約者らしく過ごしましょうと申しましたら、エディオ様は頷いてくださったではありませんの?」


 エディオは力が抜けたように座る。


「それは、その、新しい婚約者はいい人が見つかるといいですねというお話かと思い……」


「わたくしは、エディオ様にとっていい人にはなりえませんか?」


「まさかっ! 最高ですっ!」


「フフ。まだ何も始まってはおりませんのに」


 和やかなお茶会はゆったりと時間が流れた。


 二人が一週間後に婚約しそれからたった三ヶ月後に婚姻した時には、結婚披露宴に慎ましやかな生活をする王家から二人の門出に相応しく王家領特産のワインが荷馬車いっぱいに届いた。


 そして、とある子爵家からは特産の新鮮なフルーツが幌馬車いっぱいに届けられた。


『爵位の後継は弟に任せ、私は彼女と小さな領地の管理人をしております。

私と彼女が作ったフルーツです。是非召し上がってください』


 手紙を読んだエディオとフィリナージェは目を合わせて微笑みあった。


「エディ。わたくし、貴方の優しい笑顔が大好きですわ」


 エディオは容姿など気にしなくなっている。


「フィル。僕は君の甘えた笑顔が大好きだよ」


 エディオが耳元で囁くとフィリナージェの扇で隠した顔は真っ赤になっていた。


〜 fin 〜



〰️ 〰️ 〰️

〰️ 〰️ 〰️


これにて完結です。

ここまでお付き合いいただきましてありがとうございました!

今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます! 前作と違い許されなかった婚約者達のお話も面白かったです。 継承者選びの改革など、着眼点も珍しくて楽しかったです。 [気になる点] 王子、周りから見れば十分な罰…
[良い点] はじめまして なろうでは溢れている「婚約破棄もの」と言いますか… この作品はその中でも現実的だな、と思いました(生意気な発言ですが、申し訳ありません) 騒動後の各王侯貴族の状況や、パワーバ…
[一言] フィリナージュは後継者試験に受かる前に第一王子がパートナーとして欲しかったのだろうなぁ…。残念でしたが。 彼女によい相手が見つかって良かったですね。 第一王子と第二王子は結婚して後継者をもう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ