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ずっとあなたのそばに  作者: しょうの
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9.加護適性(2)

連続で投稿します。

 デーン先生は、でーんとした体躯に白いおひげが印象的な老齢な魔術師だ。

 いや、ダジャレじゃないですよ。本当に。

 人のよさそうな、いわゆる好々爺の顔でありながら、時折見せる鋭い目つき。

 さすが、こんな長きにわたり、王国魔術師をされている方だと納得させられる。


 デーン先生から、加護適性の説明が続く。


 「加護適性でご自身の加護を見極めること、これが、皆様の魔術師としての第一歩となります。そして、その加護から魔術の適性を特出させてゆくことで、自ずと強化すべき魔術を認識していくのです。」


 ぐぅ。第一歩が踏み出せなかったら、1回休みでしょうか。それとも、始めに戻るなのでしょうか。始めに戻ってもよくなる気は一向にしませんが。

 そして、一歩を踏み出せない私が、適性を特出させるなんて、虹をつかむみたいなものだ。


 う?虹をつかむ?

 そういえば、虹はつかんだことあるから、もしかしたら、意外といけるかもしれない?とか。



 私が虹をつかんだのは、4,5歳の頃。まだ、私も魔力発現する!と信じていた頃だ。

 青空がきれいな昼下がり、お庭でお母様とお姉様とティータイムをしていた。突然、霧雨のような雨が降ったかと思うと、さっと止んだ。すると、お庭にとても大きくて、きれいな虹がかかった。あまりにもきれいで私は、虹に向かって駆け出した。


 「お母様、虹さんがどこかに行かないように足をつかまえてくる!

お父様とお兄様達にも見せてあげるの!」


 意気揚々と駆け出した私は、お母様の止める声も聞こえていなかった。

 そして、案の定というか、走っても、走っても、虹との距離は短くならなかった。

 息が切れてきた私は、その場にぺたりと座り込み、じわりと涙が浮かんできた。


 「お嬢様、虹というのは、水の粒に光が・・・。」


 まったく息も切らせず、後をついてきたアドルフが虹の何たるかを説明しようとして、私の涙に気が付いた。


 「お泣きになっていたのですか?」


 「泣いてない・・・もん。あぁ、虹さんもういなくなっちゃいそう。足をつかまえておけば、ここにずっといてくれて、みんなに見せてあげられたのに。」


 話すにつれ、更に悲しくなってきて、涙がぽたりと手の甲に落ちた。


 その後、ぽたりぽたりと涙を流す私をアドルフが抱き上げて、お母様のところまで連れて行ってくれた。その後のことはよく覚えていない。


 そして、翌日の朝。

 眠い目をこしこしこすりながら、ベッドから起き上がったちょうどその時、バターンと部屋の扉が開け放たれ、シャルルお兄様が突撃してきた。


 「エリュナ、こい!」


 朝早くから、心臓止めるようなことはしないで欲しい。あぁ、今でもバクバクいっている。

 そんな私をものともせず、シャルルお兄様が私の腕をガシッとつかみ、そのまま、部屋の外へと駆け出した。

 起きぬけは体にしっかり力が入らず、足がもつれるから、そんなに引っ張らないで。


 はひはひしながら、たどり着いたのは、昨日のお庭。

 すると、なんと、虹が真上にかかっていた。近くの木の近くに虹の足もしっかりと。

 シャルルお兄様がなぜかどや顔で私を見ていた。

 私は、一人で、木の近くまで行き、ギュッと虹の足をつかんだ。

 握った手の中で虹はとっても冷たかった。


 「虹さん・・・。つかまえた。」


 「私たちのために、エリュナが虹をつかまえてくれていたのだな。」


 振り返ると、そこには、お父様がいた。私はお父様の方へと歩いていき、ぎゅぅと抱き着いた。お父様は、私を抱き上げると、目線を合わせた。


 「おとうさまぁ。虹さんね、とってもきれいなのよ。だから、みんなにも見てほしくて。」


 「ありがとう。」


 ここで終われば、とっても素敵な出来事になるはずだった。シャルルお兄様やアドルフ、リュディガーの声さえ聞こえなければ。


 「いや、父さん、何一人だけさわやかなわけ。さっきまで必死すぎて笑えるくらいだったのに。」


 「シャルル様。それは言わぬが花というものですよ。まさか、お嬢様の虹の話をお耳に入れたとたん、このようなことになるとは、さすがの私も思いもよりませんでした。」


 「何をおっしゃっているのですが、アドルフさん。侯爵様を侮ってはいけません。討伐時にも見られないほどの、繊細な魔力操作で微小な氷の粒を数限りなく生み出し、更に、それをプリズムにして虹を作り出すなど、ふつうは誰もやろうとも思わず、やることもできないことをやってしまうのが、侯爵様です。・・・まぁ、エリュナ様が関係しなければ、こんな常識はずれなことしないでしょうがね。・・・あぁ、こう見えて、奥様にもわしづかみにされていますからね。奥様のことでもやりかねませんね。」


 「でもさぁ、父さん一人の手柄みたいになってない?リュイなんて、母さんごまかし係なんて言う、地味な役割だしさぁ。」


 「日頃の行いというか。シャルル様にはできない役割なので、仕方ありませんよ。」


 うん、うんと頷くアドルフに、ちぇぇっと言いながら、土をけるシャルルお兄様。リュディガーは、素早い!すでに、私たちの視界から消えていた。


 そう、二人とも、そろそろ気が付いたほうがよいと思います。

 お父様の眉間にくっきり深いしわが刻まれ、冷気が漂っていることに。



 虹の出来事を思い出してみたものの、うーん、私の実力じゃなかったな、これ。

 しかし、やっぱり、うちの家族は規格外だよな。お父様なんて、きっと加護を見極めるどころか裏側どころか隅の隅までしっかり自分のものにして、適正を特出させまくっている。じゃなきゃ、氷で虹なんて作れないよ。

 はぁ、加護を見極め、特出した適性なんて贅沢は言わない。特出しなくてもいい、適性があるだけでもいいのになぁ。

 考えれば、考えるほど、何度となくため息が出てしまう。


 「それでは、先日お話ししました通り、それぞれの部屋へと移動ください。」


 加護適性は、あまり大っぴらに人前で見せることではないので、それぞれ個別で担当の先生と行っていく。そして、数日間にわたって、何人かの教師が確認していくので、かなり長期間にわたる。基本的には、風、火、水、土のそれぞれの加護を持つ先生がまず1回ずつ担当し、加護を見極めていく。その後、自分と同じ加護をもつ先生が何度か確認しながら、特出した適正へと導いていくのだ。


 「エリュナ、今日はどこですの?」


 「私は、土の加護だから、西の塔。レティシャは?」


 「私は、東の塔です。」


 「レティシャは風の加護からなんだぁ。私は、火の加護だから、南の塔。みんなバラバラってすごいねぇ。エリュナ、気を付けるんだよぉ。」


 「そうですわ。お気を付けになって。

  今日もこの後、王宮図書館に行かれるのでしょう?この後会えないと思うので、先に言っておきます、また明日。」


 「レティシャ、トリヤ。ありがとう。また明日ね!」


 二人とあいさつを交わした後、小ホールを出て、西の塔に向かった。


加護適性の話は、まだ続きます。

途中で虹の話を入れてしまったので、2回で終わりませんでした。


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