落ちた先は
ご訪問いただきありがとうございます!
今日はとても蒸し暑い。
梅雨明けの夏の始まりは、気温・湿度共に不快指数高め。
でも、まあせっかくの一人旅だし、あちこち気の向くままにまわってみよう。
就職してから4年間で数回しか有給休暇を取っていなかったこともあり、会社からも有給消化率が悪いと怒られてしまうので、今回3日間連続で有給を取らせてもらった。
土日含めて5日間のお休みなので、一人で田舎町へ小旅行をすることにした。
道路から見える田んぼや、緑が濃い山、都心とは違う空気のにおいなんかを感じながら、少し先の右側を見ると、きらっと何かが光った気がしたのでそこまで歩いていくと、鳥居と石段がありこの上に神社があるのがわかったので、おみくじでも引いてみようかと軽い気持ちで石段を上がった。
石段を登り切った先には小さな神社があったが、おみくじやお守りを売っているようなところはなかった。
(キラッ)あ、また光った。
光の正体を確かめようと神社の右手から何となく裏側へ行こうとした瞬間、グラッと大きく揺れた。
地震!!大きい!立っていられなくなり、しゃがみこもうとした瞬間、足元が陥没してその中へ落ちて行った。
背中に衝撃を受けてむせながら目を開けると、真っ暗で埃っぽく、よく周りの状況がわからない。
私はさっきの地震で空いた穴から落ちたってことは、神社のどこかにいるんだよねきっと。
あれだけ揺れたんだし、消防車や救急車やサイレンの音がしても良さそうだが、何も聞こえないことに 少し不安を覚えた。
「誰かー、誰かいませんか!助けてください」
と大声で叫ぶと、ざわざわとした人の声がだんだん近づいてくるのがわかった。
「おーい、大丈夫か!そこにじっとしてろ、今助けてやるからな!」という声がして、
たすかった・・・と安心したと同時に、左足首に強烈な痛みが走った。落下時に骨折でもしたのかもしれない。左手で痛む足首をそっと触ると、キーンという小さな音と共に手から光が出た、というか手が光っているというか?あっけにとられているうちに、折れているであろう左足首の痛みが消え、恐る恐る足をうごかしてみるも、痛みもなにも噓のようになくなっていた。
え?なに今の?と固まっていると、ガラガラという音と共に光が差し込み、頭上の瓦礫が取り除かれた。
「あんた、怪我ないか?立てるか?ほれつかまれ」
と、男性の声と手が差し伸べられその手をつかんだところで、引っ張り上げてもらうことができた。
「ありがとうございます。助かりました。」
「おう、それより怪我してねえか?」と助けてくれた数人の男の人達が心配そうにこちらを見ている。
「はい、大丈夫みたいです。って、え??」
なにここ?!どこ?!神社に居たのになんで石畳でレンガ造りの壁の街に居るの?
頭の中が処理しきれない情報にフリーズしていると、助けてくれた男の人達が怪訝な顔をして私を見ていた。
周りにいる人たちが、私が老朽化した排水溝が崩れて中に落ちたと言っている。
それはわかったけど、さっきまでとは全然違う周囲の景色に考えが追い付かず、ボーっとしている私に、助けてくれた男の人が言った。
「この辺りは、古くなった排水路が多くて崩れやすいから、地元のやつはこんな端は歩かないんだが。」
「あんた、よその国の人かい?ずいぶん変わった格好してんな。」
変わった格好と言えば、私は普通にサマーニットとフレアスカートだが、目の前にいる男の人はベージュのチュニックの様な服を着て、ズボンを穿いている。中世ヨーロッパの庶民的な感じと言えばいいのだろうか。
周りを見渡すと、遠巻きに数人の女性もこちらを見ていた。その女性達もまた昔テレビで見た山岳地帯の民族衣装のようなワンピースに花柄のベストの様なものを着ていた。
いや、ほんとここどこ・・・?
「あ、助けていただいてありがとうございます。堂上未来と言います。」
と名乗ると、手を引っ張ってくれた男の人が名前を名乗った。
「俺はアルバンだ。すぐそこで宿屋をやってる。ずいぶん汚れてるみたいだし、よかったら休んでいくか?」
と親切に言ってくれた。服は泥だらけで、あちこち擦り傷があるし、なんといってもこの不思議状況がわからない中でうろうろしていても仕方がないので、情報収集と現状把握をするために、アルバンさんの宿へお邪魔させてもらうことにした。
最後までご覧いただきありがとうございました。
仕事の合間に少しずつ、書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。