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恋敵!?

(やっぱり美味しい…!)

気まずい空気の中、華は集中した。

集中せずとも、口に含んだ瞬間から甘く幸せな味だったが。


「美味しそうに食べるわねぇ。私も同じのかミルクセーキにすれば良かったわ」

と溜息をつく。


悪いことを言われたわけではないが、華は食べるのをやめて桂子を伺い見た。


「気にしないで。どうぞ続けてちょうだい」


桂子はどうぞと手で合図し、気怠げに横を見る。


(続けてちょうだいと言われましても…)

と思ったが、華から視線を逸らしてくれていたので、とりあえず食べてしまうことにした。


そして、ちょうど食べ終えた時だった。


「最近貴人様とはどう?」

と桂子が聞く。一応、気を使って食べるのを待っていてくれたようだ。


「…どう…….」

華は小声で繰り返す。


(やっぱりきたか…そうよね)

これが本題だと、華は姿勢をぴっと正した。

どこに恋敵、たぶんだが、相手にパフェを差し出してそのまま帰る人がいるのか…

桂子はたまたま会った華に絶好の機会とばかり状況の確認をしたかったのだ。

そうでなければ、連れてきた意味がわからない。

だから、遅かれ早かれこうなると予感はしていた。

そして掴まれた腕の力強さに振り解けないまま、仕方ないと、ここまで引っ張られてきていたのだ。


「特に何もありませんわ」


桂子が考えていることは何も、と華は付け加えようとしたがやめた。

桂子の考えている心配な事であろうこと、つまり貴人と自分が上手くいっている事実…は本当になかったし、破棄のこともいとこであっても言うべきではないと思ったのだ。


だからといって、貴人とのことを上手くいっているだのいないだのを話せば、嘘になる。

嘘はいつか綻びが出るだろう。


余計な事は言わないのが賢明だと判断した。

その結果の回答が、特に何もないだ。


華は背筋を正して真っ直ぐ桂子を見据え、出方をみる。


そうすると桂子が下を向きわなわなと震えだしていた。

怒るのか…泣くのか…


「ふふふ、ははは!」


あろうことか桂子は笑い出した。

その美人の顔をくしゃくしゃにしながら。


(え!?笑ってる…)


「はー、おかしい」

といいながら、桂子は目に溜まった涙を拭っている。


「朽木のおひいさんは…ああ、そうね。華ちゃんにしましょうか」

「まぁ合格ね。取って食いやしないっていったでしょう、そう緊張しなさんな」


「?」


(合格?)

さっきから何がなんだかさっぱりだ。


「あ、あのー」

と訝しみながら華が言いかけたが、桂子は一人突っ走って話をしている。


貴人と桂子の話ではなかったのか。

そして華が婚約者であるから、その調査では…?


「そうね、まだ少女の面影はあるけど磨けば光るでしょう。受け答えも聡いし、貴人様も気にかけるわけね…」


「あのっ!一体どういうことでしょうか?全く何がなんだか…」

華は少しだけ鼻息荒く、話を遮った。

このままじゃまた桂子に違う展開に持っていかれてしまう。


「あぁ、ごめんなさいね。華ちゃん、貴人様から婚約破棄するって言われているんでしょう?」


「!!」

でもよくよく考えれば、深い仲なら知っていても不思議ではない。


「そりゃあ私達長い付き合いですもの。でもね、今回はいつもと少し違うの。これは直感なんだけど。貴人様も変わらないって言ってはいるけど…ねぇ」

「だから少しお話してみたかったのよ!あなたは私から見ても十分魅力的だと思うわ。ああそうそう、華ちゃんと出会ったのは全くの偶然よ」


すらすらと口から言葉が出て、そして桂子は勝手にこの会を締めくくった。

呆然とまだ状況を飲み込めていない華を残すだけ残して。


「今日はありがとう。十分な収穫だったわ。それとこれ、私の家の住所。仕事でいないことが多いのだけど、しばらくはこっちにいるから、何かあったら相談に来て」


さらさらと紙に住所を書く。


「………ありがとうございます…?」

とりあえず華はお礼を言った。よくわからないが、一応褒められて、一応何かもらったことに。


つまりはこういうことか。

貴人が桂子曰くいつもと少し違うらしいから、気になっていたが、華の返答で何も進んでいないと確認できた。

婚約破棄も知っていたから、これで時間の問題、桂子に戻ってくると踏んだのか。

だから楽しそうにしている、のかも。


合格と言ったことと、住所をくれたことは

…さっぱりわからない。


裏表がそんなある人のようには見えないが、人は見かけによらない。

桂子が話している表目上の言葉はわかったが、意図は???だ。


だが華はもう会うこともないだろうということで割り切るように、無理矢理頭の片隅に追いやった。


こういう時は触らぬ神に祟りなしだったか、臭いものには蓋をするだったか。


そして、そのまま明福堂パーラーの前で別れて、華はそそくさと家に帰った。


(パフェ、美味しかった…)



---


「桂子、こんな所に呼び出してどうした」

貴人は帝都内ホテルの一室にいた。


「あら、たまにはいいじゃない?」


「……」


「もう!無言になるのはおよしになって」

桂子がむっつりする。

ここまでは大体いつものやり取りだ。


「今日、あの子に会ったわよ」


「ああ、聞いてる」

貴人が怪訝な顔をしながら答えた。


「可愛いわねぇ。つい笑っちゃったけど…私と貴人様が本気で良い仲だと思ってるみたいよ」

桂子が言いながら、窓際の椅子に腰掛ける。

そして鞄から何やら書類を漁っていた。


「おい、ちょっかいを出すな。華には佐助をつけてあるから、心配はいらない」

貴人も向かいの椅子に座る。


「はいはい。けれど、皆で見たほうが良いかと思うのよね〜。あ、あった!」


そこまで桂子が言い貴人を見上げたところ、深く眉間に皺を寄せているのを発見した。

桂子が関わるのがよっぽど嫌らしい。


(ここで話は終わりね)


「それだけの為に呼んだのか」

「そんな訳ないじゃない。これ見て、西では…」

そして桂子が話しだし、ホテルの一室で夜は更けていったー

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