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外から気持ちのいい風が吹き込んできて鳥がチュンチュンと声をそろえて鳴いている。
―んー、眠いが起きるとしよう。
―――
さぁ、おはようございます。
今私はメイドさんに服を変えてもらっています。
寝間着から普通の服に。普通の服といっても、令嬢さんたちが着る煌びやかなものじゃなくて、もうほんとに普通に動きやすい服である。
またしても、カノンさんに着替えさせてもらっていますが、この人が基本にわたしの周りの世話をするそうです。
多分、周りの人から押し付けられたんだと思います。クウーバメイド長はそんなことしないと思うから。
でも、最近変わったと思ったことはこのカノンさん、最近無意味に震えたり、怯えなくなってきました。
「お嬢様、お召し替えが終わりました。わたくしは下がった方がよろしいでしょうか?」
と、ここで声がかかった。
ここに居てもすることはないだろうと思ったので素直に下がらせる。
そして小さく会釈したカノンさんは部屋から出ていった。
―――よし、今日はあれをしようと思います。
―――――
さぁやってまいりました、ここはベランダ。
三階建ての家のその二階にミッシェルの自室がある。その部屋にはベランダが付いているのです。そしてその規模はとてもデカい。
このベランダには、なんとかかんとかほにゃらら的なキザっぽい感じの名前がついていた気がする、がもうそれは忘れてしまった。
私はここを魔法の練習場所にしようと思った。
もし誰か来ても仕切りになって見えないし、ミッシェルが植物に興味がないから邪魔なものもないしな。
ってことで本題に入りたい。
今日、私が最初に練習する魔法は…じゃじゃん!
〈無属性魔法〉の〈テレポート〉~!!!
なんでかと問われるとなんだが、ここは一応部屋の中だから、もし火の魔法の練習とかして家燃やしちゃった☆とか嫌だしな、水魔法でも水浸しにしちゃった☆とか、そんなん親にばれたら元も子もない。
しかし、それは建前に過ぎない。
本当に理由は、この魔法にロマンを感じたからだ。
異世界転移したらやっぱり外の世界見たいっしょ、ぶっちゃけ。
成功したらテンション上がるし、モチベーションがぶち上げである。行った場所とかでそこの地形とかに合った練習をすればよいのではないかと考えた次第である。
―――よし、てことで頑張ります!!
――まず、テレポートを使うには無属性魔法のことをきちんと理解しなければいけない。
ということで、持ってきました無属性魔法専用の本~!
実はカノンさんにお願いして持ってきてもらってました。
持ってきてもらったお礼と口止め料に甘いお菓子をプレゼント、闇の取引のようにこそっとポケットに忍ばせ、悪い顔で分かってるね?という顔で圧力をかけました。
本を開いて手順が書いてあるところを読み解いていく。
―無属性魔魔法について。
『まず無属性魔法とは絶対的物事を持って居らず虚無である、故に無論と呼ばれておりこの魔法を使う人物は少ない。物理でも精神でもないそれは真空、または空間と定義されている。』
『そして、無から魔法を行使して空間の粒子を利用することで魔法を発動させている。』
『また、それらによってできる魔法はいくつかある。例を挙げると、他者の記憶を操作したり、そこにあるはずのものを消せたりと。しかしこれはまだ誰も成功してはいない。簡潔にまとめると、属性を持たない武器、どの力にも属さない魔法である』
ふむふむ、なんとなく分かるぞ。
雑学というか、そこら辺の話は好きなので読んでで飽きない。
そして、そのあとには無属性魔法で行える魔法が記されていた。
私は目次でテレポートの文字を見つけ、そのページをめくる。
『テレポート』
テレポートとは一瞬にして別の所へ移動できる優れた魔法です。発動の際にあまり魔力を使わず、自身にだけ魔法を施しことができます。
発動した際は自身が瞬時にその場から消え、別の場所に移動しています。
一見便利に思うかもしれない魔法ですが、危険もあります。
テレポートを使う際には行先の情景をはっきりと思い浮かべなければいけません。もしあやふやなまま魔法を発動させてしまうと、発動に失敗したり、別の所に飛ばされ最悪死に至ったりします、また土の中に入ってしまったり、壁に挟まったりしてしまうことも考えられます。
そして最も警戒するべきものは、テレポートを使うために使用する魔力量です。
魔力量が多すぎると空高くにテレポートしたり、足を地面につけれず転んでしまうことがあります。そこらは自身で要検討です。
―――――――っだそうだ。
つまりは少量の魔力を使って行きたい所を具体的にイメージさえすれば使えると。
んっと、問題発生。
―私、魔法使ったことない。ミッシェルも、だ。
待て待て待て、焦るな焦るな。
私は魔法入門編の本を引っ張り出す。
―魔力の使い方について
魔法を行使するには、体内を流れている魔力を感じ取る必要がある。
方法は三つある。
一つ目は、意識を自身の体に向ける、すると体内に温かいものが流れているのが分かるだろう。
二つ目は、一つ目の方法で分からなかったら、魔法が使える人に助けてもらうという手だ。
相手とどこかの肌と肌を合わせる、そして相手から自分に魔力を少量流してもらい魔力とはどんなものかを体に覚えさせるというものだ。
三つ目は、上記の二つで分からなかった時として神官様に教えを説いてもらうというものがある、お値段は1800ネル。
うん、もうこれは二番目の選択肢しかないね。
三番目は論外すぎる。




